海外から観光客が押し寄せている。政府が東南アジア諸国に対してビザ発給要件を緩和したことや円安を追い風に、平成26年の訪日外国人数は2年連続で1000万人の大台を突破、過去最高の1300万人前後に達したとみられる。同年10月からの消費税免税品目の対象拡大で、買い物目的の訪日客の増加に弾みがつき、今年は「ショッピング・ツーリズム」の本格的な盛り上がりが期待される。
「大きい店だし、駅にも近いので便利です」
東京都渋谷区にある高島屋新宿店。2階にある免税手続きのカウンターに、レシートとパスポートを持って妻(31)と訪れた香港の会社員、陳家雄さん(33)は、日本で買い物と観光を楽しむ典型的なショッピング・ツーリズム客だ。ブランドの洋服やバッグなどを購入した陳さんは今回で5回目の来店。約1週間滞在し「群馬県の草津温泉などにも足を伸ばす」という。
円安による割安感もあり、買い物が主目的の訪日客は着実に増えている。高島屋新宿店では26年、売り上げ全体に占める訪日外国人客の割合が約1割(25年は4%程度)に達する月もあった。免税カウンターの拡充や海外8通貨を円に両替できる機械の設置などで外国人客への対応を強化しており、堀口建治店長は「日本一のホスピタリティー(おもてなし)の心で、海外のお客さまをお迎えしたい」と意気込む。
東京五輪の開催をにらみ2020(平成32)年に訪日客2000万人とした政府目標の達成に向け、国内経済の活性化にもつながるショッピング・ツーリズム拡大への期待は大きい。昨秋には、旅行大手のJTBや大手百貨店をはじめとする多くの観光関連企業が参加する一般社団法人「ジャパンショッピングツーリズム協会」が発足した。
観光庁とも連携し、訪日外国人向けショッピングイベントを開催するなど、日本のショッピングツーリズムの魅力の発信活動に乗り出している。
一方、ピーチ・アビエーションが2月、日本の航空会社として12年ぶりとなる那覇〜香港路線開設を予定するなど、日本とアジアを結ぶ格安航空会社(LCC)の路線網の拡充も訪日客の拡大を後押しする。
東京五輪は、観光資源に恵まれた日本の魅力を世界に発信する「またとない機会」(観光庁幹部)。それまでに官民の連携で、地方を含めてショッピング・ツーリズム環境を充実させることが、政府が目指す「観光立国」実現の大きな課題になる。(山口暢彦)
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