社説:民主党代表選 再編より政策を論じよ
毎日新聞 2015年01月08日 02時35分
民主党代表選が告示され3氏が立候補を届け出た。海江田万里代表の辞任に伴う選挙で、18日の投開票に向け低迷が続く党の再建策を競う。
政権担当能力が疑問視され、衆院選で伸び悩んだ民主党が優先すべきは理念と基本政策を確立し、安倍内閣との論戦にたえる態勢を整えることだ。野党再編をめぐる政策不在の路線争いなど本末転倒である。
届け出後の共同記者会見で長妻昭元厚生労働相(54)は安倍政権との対決姿勢、細野豪志元幹事長(43)は党刷新による過去との決別、岡田克也代表代行(61)は党の原点回帰をそれぞれ強調した。代表経験者の岡田氏と他の2候補の世代間競争の要素もある。
党員・サポーターの投票が認められたため、地方議員票と合わせて地方票が約3分の2を占める。国会議員だけで党首選びをせず、党員らの前で問題点をきちんと議論する選出方法にしたことは理解できる。
3氏に求められるのは、党の存在意義が問われるという危機感の共有である。野党転落以来、民主党は有権者の信頼を回復する努力を怠ってきた。衆院選で投票率が52.66%という低水準に落ち込んだのも政権批判票が行き場を失っている反映だけに、野党第1党の責任は大きい。
だからこそ、いまだにあいまいな理念や基本政策をまとめていく場として代表選を位置づけるべきだ。さきの衆院選で民主党は「格差」に絞り経済政策批判を試みたが消費増税先送りには同調し、有権者の納得できる対案を示せなかった。
集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の撤回要求にしても行使そのものへの見解があいまいなままでは、通常国会でも安全保障法制をめぐる論戦は深められないだろう。安倍晋三首相が悲願とする憲法改正にどう対応するのか。「リベラル」「中道」などの言葉に逃げこまず、具体的に議論すべきだ。
不可解なのは維新の党との距離や野党再編への姿勢を争点とする見方があることだ。3氏とも記者会見では自主再建を優先し、比較的再編に柔軟と目される細野氏も維新との合流は現実的には困難との認識を示した。
民主党のイメージ回復の難しさや、自民党の1強状態に立ち向かうためには野党が力をそぎ合うべきではないとの発想が、再編論の背景にはあるのだろう。だが、政策抜きでいたずらに野党の大きさばかりを論じることは不毛である。
労組票などへの配慮から政策をあいまいにしたまま党内融和をアピールするようでは現状の無責任な追認に等しい。基本政策を正面から論じ意見集約に力を尽くすことこそ、再建への第一歩だと心得てほしい。