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表現の自由へのテロは断じて許されない

2015/1/9付
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 表現の自由に対するもっとも卑劣な形のテロ行為である。パリにある風刺週刊紙「シャルリエブド」の本社に押し入った男らが銃を乱射、記者や漫画家、警察官ら12人を殺害した。

 フランスは8日を服喪の日とした。私たちも犠牲者に哀悼の意を表すとともに、一刻も早い事件の解決を願う。また、表現の自由を破壊する行為はけっして許さないことをあらためて確認する。

 週刊紙はイスラム教の預言者ムハンマドを風刺する漫画を載せていた。事件の詳しい背景ははっきりしないが、イスラム過激派との関係が指摘されている。

 最近、イスラム過激派がかかわった事件はベルギーやカナダなど各国で相次いでいる。テロの脅威は拡散しており、一国の力で封じ込めることはもはや不可能だ。

 捜査の協力だけでなく、「イスラム国」など過激組織に加わる若者の動きをつかみ、資金や武器の流れを断つなど、さまざまな面での粘り強い国際連携が必要だ。

 欧州には多数のイスラム系住民が暮らしている。半面、各国で反イスラム感情や移民排斥の動きが強まっているのが気がかりだ。

 フランスも、旧植民地の北アフリカからの移民を中心にイスラム教徒は人口の8%、約500万人に上るといわれる。一方で反移民を掲げた極右政党「国民戦線」が勢力を伸ばし、経済の低迷も亀裂を深める要因になっている。

 事件がその傾向に拍車をかけ、世界で文化・宗教間の「不寛容」がはびこることを懸念する。

 風刺画に悪意が込められていたとしても、表現の自由は侵すことのできない民主主義の基本的な価値である。ただ、預言者に対する侮辱がイスラム教徒に呼び起こす強い反発も、非イスラムの人々は知る必要がある。多様な文化、宗教が共存するためには対話と相互理解が不可欠だ。

 今回のテロは日本にとっても遠い話ではない。1991年には五十嵐一・筑波大助教授が殺害された。イスラム教を冒とくしたとされた小説の翻訳者だったことから、事件はイスラム過激思想との関連が指摘されたが、時効が成立し未解決のままだ。

 政府は訪日外国人を昨年の1300万人から2020年には2千万人に増やす目標を立てている。テロの脅威に対処しつつ、さまざまな文化、宗教への理解を深めることが日本には求められている。

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