経済産業省の有識者会議が原子力政策の課題について中間報告をまとめた。原子力発電所の廃炉をしやすくする会計制度の見直しや、原発を解体する際に出る放射性廃棄物を処理する基準を早期につくることなどを求めている。
電力会社は新しい規制基準の下でどの原発を残し、どれを廃炉にするのか決めなければならない。役割を終えた原発を円滑に廃炉にする環境を整えることが重要だ。有識者会議が洗い出した課題について対処を急いでほしい。
政府は2012年の原子炉等規制法の改正で、原発の運転期間を原則40年と定めた。条件を満たせば1度に限り20年間延長できる。改修工事で安全性を高め延長を申請するか、廃炉を選ぶかは電力会社の経営判断だ。だが、廃炉を後押しする環境が整っていない。
国の規制変更などにより、予定していた時期より前に廃炉せざるをえなくなった場合、電力会社は多額の損失を計上しなければならない。財務上の理由で廃炉にすべき原発の判断が先送りされることがあってはならない。
報告は電力会社の財務への影響を和らげるために、損失を一括ではなく、何年かに分けて分割処理できるよう会計制度の変更を求めた。見直しは必要だろう。
電力小売りが16年に全面自由化される。電力会社は現在、廃炉に備えた積立金を電気料金に上乗せして回収している。多様な事業者との競争が見込まれる自由化後も、廃炉費用を確実に確保する仕組みをつくらねばならない。
原発の解体で出る廃棄物のうち、原子炉の中心部分などは国の規制基準に従って地中への埋設が必要とされているが、現状では基準がない。原子力規制委員会が策定に着手したところだ。作業を確実に進めてほしい。
報告は廃炉で出る廃棄物の処分地確保も求めた。廃炉に伴って発生する使用済み燃料の貯蔵場所も課題だ。対処には電力会社と国の連携が欠かせない。報告が廃炉の技術開発や人材育成、廃炉後の原発立地地域への支援策などの必要性を指摘するのももっともだ。
16年7月時点で運転期間が40年超の原発は7基ある。電力各社は延長か、廃炉かの判断を今年7月までに下す必要がある。老朽化し、安全面で課題のある原発を着実に廃炉にすることが電力会社の信頼を高め、ひいては再稼働への理解を得る助けにもなるはずだ。
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