民主党の代表選が始まった。政権の中核を担える政党が自民党しかない1強多弱の政治状況は好ましいことではない。どうすれば非自民の受け皿をつくれるか。それに資する論戦を期待したい。
先月の衆院選で落選した海江田万里代表の後任に名乗りをあげたのは、届け出順に長妻昭元厚生労働相、細野豪志元幹事長、岡田克也元代表の3氏である。
推薦した国会議員の顔ぶれなどから判断すると、岡田氏は党の自主再建、細野氏は野党第2党の維新の党などを巻き込んだ野党再編に軸足があるようだ。
ただ、細野氏も立候補後の共同記者会見では、維新との合流について「現実的には難しい」と後ろ向きだった。党を壊す話が先走ると代表になりにくいとの読みかもしれないが、結果として岡田氏との違いは不鮮明になった。
本当に自主再建路線で、自民党に対抗できる二大政党の一翼という地位に返り咲けるのか。岡田氏も細野氏も「民主党は何をしたいのかがわからないといわれる」と自嘲しつつ、「共生と多様性」など具体性があまりないキャッチフレーズを繰り返すにとどまった。
具体的な施策を一番多く打ち出したのは長妻氏だったが、「農家の戸別所得補償制度の復活」「企業献金の禁止」「原発再稼働反対」など党内左派向けが多かった。これでは支持拡大に限界がある。
衆院選で議席をやや増やしたため、民主党内にはぬるま湯的な雰囲気が漂う。3陣営の出陣式をのぞくと、笑顔の議員に多く出会った。2年前の衆院選に続いて有権者にバツをつけられたという意識はどれほどあるのだろうか。
自民党は近年、保守化路線を歩んでおり、護憲やリベラルを唱える議員が少なくなった。民主党には中道リベラルな有権者に照準を定めるべきだとの議論があるが、保守系議員の離反などを懸念し、腰が定まらない。
民主党がまず正すべきは、路線や政策ではなく、皆で同じ方向に向かう結束力なのかもしれない。
岡田克也、細野豪志、海江田万里、長妻昭、自民党、民主党