医療保険改革案:国保を都道府県に移管、負担増も 厚労省
毎日新聞 2015年01月08日 18時56分(最終更新 01月08日 21時25分)
厚生労働省は8日、自民党の社会保障関係の合同部会に医療保険制度改革の骨子案を示し、大筋了承された。赤字体質の市町村の国民健康保険を2018年度に都道府県へ移管する財政基盤強化策とともに、負担増も盛り込まれた。入院食の自己負担(現在1食260円)を16年度から段階的に200円引き上げて1食460円とすることや、75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料を最大9割軽減している特例措置について、17年度から段階的に廃止することなどを挙げている。
同省は骨子案を法案化し、26日召集予定の通常国会に提出する。
入院患者の食費は1食640円(65歳未満)で、このうち380円は保険で賄われている。しかし、通院患者との公平性を考慮し、自己負担を200円増の460円に引き上げる。1カ月入院すれば、1日3食で計1万8000円の負担増となる。また、大病院(ベッド数500床以上)への外来患者の集中を防ぐため、開業医の紹介状なく大病院を訪れた患者には定額負担を求める。5000円を軸に調整する。
保険料負担も増す。後期高齢者医療制度には約865万人を対象に保険料を最大9割軽減する特例措置がある。この特例を一部の低所得者を除いて17年度から段階的に廃止し、本来の「最大7割減」に戻す。「早ければ16年度から廃止」としていた当初方針を、与党の反発で修正した。夫婦世帯(年間の妻の年金収入80万円以下)の場合、夫の年金が80万円なら月の負担(現在740円)は3倍の2240円にアップする。
このほか、16年度から企業の健康保険組合が設定できる保険料率の上限を、今の12%から13%に引き上げる。社員の標準報酬月額(保険料を計算する際の平均月収)も上限をアップする。現在は同月額が121万円以上ならいくら高給でも同じ保険料だが、この上限を139万円に上げ高収入の人の負担を増やす。
国保の再編では、都道府県を財政運営の責任主体とする。再編に先立ち15年度には新規に約1700億円の税金を投入し、17年度には約3400億円に増やす。財源の半分は、給与の高い企業の健保や公務員共済の負担を増やす「総報酬割り」によって工面する。大企業中心の健康保険組合は全体で約1500億円の負担増となるため、高齢者医療費の負担が重い健保を補助する仕組みを新設する。これらの費用に約700億円を充てる。【中島和哉】