自分の人生史上、万年筆が記号的存在から変わったのって勤め始めてからです。
入学祝いで親戚から贈られたし、サークルの送別会でもいただいたんですが、使い勝手でいえばボールペンが良いし、一度インクを入れると使い切らないといけないイメージから学生時代は使うことがなかった。インクも挿さずにしまってました。
文具系の雑誌で特集されるくらい「嵌る人の多い筆記具」という知識はありつつも、文具の中でも万年筆って価格の桁が違うので、何かきっかけでもないと手を出せない、高嶺の花的存在だったんです。選び方もわからないですしね。
そんなある頃、偉い人のかばん持ちで海外の企業との契約合意に立会う機会に恵まれまして。
詰めの調整も終わり書面が整ったところで、先方と上司が万年筆をそれぞれ取り出して、署名を始めたのです。
結構シビアな契約で空気自体が張ってたのもあるんですが、万年筆の書く音がとても印象的で。ペンの圧が、契約書の紙を越えてテーブルに低く響いて、それがすごく素敵だなぁと思ったんです。
万年筆が自分にとって意味を持ち始めたの、このタイミングです。
実はお恥ずかしながらそれまで印鑑文化が日本特有って知りませんでした。それもあって「万年筆による署名」が特別で厳かなものに映った。イニシャルサインもサインページへの署名も思わずまじまじと見てしまったぐらいです。
なんていう話を上司にしたら覚えていたらしく、異動が決まった時餞別として万年筆をいただいたのですー。上司と同じ銘柄、シェーファー(SHEAFFER)。
真っ白なノートの1ページ目に万年筆を滑らせたときの快感はほんとたまらなかったです。すべらかな書き心地はほんとうっとりで。落とすと怖いので内ポケットに入れる勇気はないですが今も愛用してます。
と言う思い出話の後に最近の話。
万年筆のカクノ(kakuno)あるじゃないですか。ここ数年、万年筆の魅力にとらわれた人の8割はカクノからはじめると言われるぐらい(三森調べ)初心者に優しく、価格、使い勝手、とっつきやすい見た目の三拍子揃った優等生。
「はじめての万年筆が、愛着のあるペンになる。シンプルで使いやすい万年筆、カクノ。」とか、見たら衝動買いする位素敵なコピーですよね。自分、衝動買いしました。
ついでにその時試し書きした色味があまりに素敵で、色彩雫(iroshizuku)の露草(tsuyu-kusa)インクも購入してしまったんですが、カクノって最初からカートリッジがついていて、当然カートリッジの方が楽なので色彩雫を持て余す結果に…。
色彩雫どうしようかな、と思いつつ、カクノとは別の色(黒入れてます)で万年筆持ちたいなー。普段使いっぽいのがほしいなー。どうせならスケルトン持ってみたいなーというのを呟いたら、フォロワーの方が背中を押してくださいまして!
思い立ったが吉日と、購入してしまいました、本日。