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軍事予算は受けない、動物実験もしない---一部科学者が極度に倫理的な研究スタイルを追求

2015年01月08日(木) 小林 雅一
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〔PHOTO〕Thinkstock

加速度的に発達する遺伝子工学や神経科学、そしてAI(人工知能)の暴走などが真顔で論じられるようになった昨今、それらを実際に研究開発する科学者の倫理観が改めて問われている。そうした中、最先端を行く一部の科学者たちがストイックなまでに倫理的な研究スタイルを模索し始めている。

●"Discovery, Guided by Morality" The New York Times, JAN. 5, 2015

上記NYT記事によれば、最近、一部の神経科学者たちが自らの研究成果が軍事転用されるのを恐れ、軍事予算を拒絶し始めたという。彼らは独自に開拓したルートから研究予算をねん出している。また神経科学(脳科学)の研究に不可欠な「動物実験」も非倫理的であるとして拒絶し、元々、癲癇など神経疾患の患者から(恐らくは治療目的で)採取された脳細胞などを使って、基礎研究のための実験を行っているという。

実験データは無条件で公開

こうした新しい世代の科学者たちはまた、研究の透明性にも心を砕いている。たとえば自分たちが実験で発見した現象や関連データなどを無条件で(恐らくはインターネット上で)公開し、必要とあれば最終結果が出るまでの途中経過さえ公開しているという。

彼らがここまでストイックな研究スタイルを追求する理由は、先端科学の悪用や暴走の可能性が今、かつてないほど現実味を帯び始めているからだという。たとえば冒頭の記事では、ある神経科学者夫妻の次のような証言を紹介している。

「今、多くの人たちがSF映画に出て来る悪夢のような世界を心配している。でも科学の現場に身を置いてみると、その実態はSFよりもずっと悪い」

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