仏週刊紙テロ:イスラム教徒への憎悪拡大…欧州各国懸念
毎日新聞 2015年01月08日 20時23分(最終更新 01月08日 22時21分)
【パリ斎藤義彦】7日に発生した仏週刊紙襲撃事件により、欧州で「反イスラム運動」が勢いづき、それを支持する極右政党も増長するとの懸念が高まっている。反イスラム運動側は、事件で運動が正当化されたと主張し、各国政府はイスラム教徒全般への憎悪が高まらないよう苦慮している。さらなる暴力を招きかねず、社会の亀裂が深まる悪循環が生まれるからだ。
フランスで勢いを増している極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首は7日、事件について、一般のイスラム教徒とは区別すべきだとしながらも「イスラム原理主義に関連したテロの脅威が高まっているのは事実だ」と述べた。
移民排斥を唱える国民戦線の幹部は「われわれが正しいことが証明された」と自信を見せた。同党は昨年の欧州議会選挙でフランスの第1党になるなど支持を集めており、今回の襲撃テロでさらに増長する可能性もある。
一方、ドイツ各地で毎週数万人を集めている「反イスラム化デモ」を側面から支持する小政党「ドイツのための選択肢」の副党首は7日、「イスラム主義の危険を無視してきた者(政府や既成政党)は罰せられた」と主張。
事件を受け「反イスラム化デモ」が「現実性と重要性を与えられた」と、正当化されたとの見解を示した。この小政党はユーロ離脱や、移民規制を訴え地方議会で伸長している。
これに対し、ドイツの与党幹部は「卑劣な議論」と激しく反発。デメジエール内相は「イスラム過激派のテロと一般のイスラム教はまったく別で、峻別(しゅんべつ)が求められている」と述べた。ドイツ政府は、イスラム教への嫌悪感が社会の中に広がっていることから、政財界関係者と移民代表との対話など、イスラム教徒との社会統合策に取り組んでいるが、効果は必ずしも出ていない。
一方で、イスラム過激派によるテロ未遂事件は頻繁に摘発されている。別の独与党幹部は「(今回の)テロを利用して憎悪の種をまくことは許されない」と、社会の亀裂の深まりに警告を発した。