迫る2025ショック

 【及川綾子】 朝日新聞横浜総局と横浜内科学会が共同で実施した「在宅医療と看取(みと)り」に関するアンケート。調査に回答した55カ所の病院・診療所のうち、訪問診療を行っているのは6割にあたる33カ所だった。

 訪問診療とは、緊急時に患者の求めで行く「往診」とは異なり、通院が難しい患者の自宅や施設に、医師が定期的に出向くことを指す。今後、高齢者がさらに増加していくと、訪問診療の重要性も増していく。

 訪問診療の対象としている患者数は、1人だけの医療機関が4カ所ある一方、50人以上も5カ所。「今は取り組んでいないが、今後取り組みたい」と回答した医療機関も4カ所あった。

 訪問診療をしている診療所が近くにないと、在宅医療を希望していても、施設や入院に選択肢が限られてしまう。訪問診療をしている診療所に、困っている点を複数回答で尋ねてみた。

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 「24時間対応しなければならない」が21カ所で最多。「医師の肉体的・精神的負担」が17カ所で続いた。病院に比べて小規模な診療所は、医師や看護師の負担増を課題に挙げた。

 国は入院医療費の抑制などを目的に、在宅医療の充実を目指しているが、現場からは「今の制度では、1人の医師では対応不可能。かといって複数の医師がいる診療所は現実的には少ない」(横浜市保土ケ谷区の診療所)、「在宅医療は家族の介護がないとできない」(同旭区の診療所)などと、現実とのミスマッチを指摘する声が相次いだ。

 訪問診療を実施している医療機関のうち、「在宅療養支援診療所」を届け出ているのは半数以上の18カ所。届け出を出すと、一般の診療所に比べて、診療報酬が高くなる。だが、原則として24時間体制の往診や、急変時の入院先の確保などの厳しい基準が求められる。

 届け出ていない医療機関にその理由(複数回答)を尋ねたところ、やはり「24時間の往診が難しい」(16カ所)が最多だった。うち13カ所が在宅医療にかかわる医師が1人のみで、夜間や休日の負担が重くなることが、二の足を踏む理由のようだ。

 次いで「患者の費用負担が増えるから」が6カ所。診療報酬が高くなると、患者の自己負担が上がるためだ。届け出をするには後方支援をしてくれる病院との連携が必要なため、「受け入れ病院の確保が難しい」との回答も4カ所あった。

 ■アンケートで寄せられた意見

<家族との関係>

 【緑区】重症者の家族は、病院と同様の手厚いケアを望んでいるが、それは難しい

 【泉区】外来で通院していた患者が在宅となった場合は、信頼関係で往診をして、看取りまで行える。だが、急に往診した場合は、患者の様子や家族関係も分からないから無理だ

<介護の課題>

 【栄区】現状の2~3倍の介護従事者(訪問ヘルパーなど)の確保が必要

 【港南区】介護している家族の疲労を軽減するため、ショートステイのような施設の充実が必要

<在宅医の課題>

 【南区】支え合う態勢が必要だが、患者・家族、かかりつけ医、サポート医のコミュニケーションをどうとるかが課題

 【保土ケ谷区】在宅専門医と称する中に、良心的なレベルを超す患者数を診療する医師がいたり、施設を中心に診療し地域に散在する患者に目を向けない医師がいたりすることが問題だ

 ※【】内は回答した医療機関の場所

(朝日新聞 2014年1月15日掲載)

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