稼げるライターは文章が下手?
私はこれまで雑誌や書籍、さらに広告、ウェブコンテンツなどでライター、編集者として活動してきましたが、今回の話は特に雑誌の編集者時代に感じた「稼げるライター」と「稼げないライター」の違いについてです。
編集者としてたくさんのフリーライターたちと仕事をしていくと、次第に「この人はそうとう稼いでるな」とか、「この人はダメだろうな」というのがわかってくるのですが、そこにはいくつかの共通点があります。
単刀直入に言うと、「稼げるライターは文章が下手」で「稼げないライターは“やたら”上手い」ということ。
「はっ? めっちゃ稼いでる有名ライターの○○さんの文章、すんげー上手いじゃん!」
というような声もありそうですが、その通り! なのですが、雑誌で活躍するライターさんに限ってランク付けするとこんな感じなのです。
- 名前で売れる有名ライター(もはやタレント)
- 文章が面白くて稼げるライター
- 文章が下手だけど稼げるライター
- 文章が“やたら”上手くて稼げないライター
- なぜかわからないけど使われるライター
1に関しては、もはやライターというよりも作家であり、タレント(才能があるという意味でも)だったりします。2に関しても、そりゃ面白いことを書いてくれるのだから、編集者は常に仕事をお願いしたい=稼げるライターと言えるでしょう。
このあたりの人については、もはやセンスだったり、才能による面が大きいので、あえて私が言及する必要もないと思います。(さらにいうと1、2には、その人じゃないと頼めないような取材先だったり、専門分野を持っているもの)。
ただ、今回取り上げたいのは3と4に該当するライター。ここの差については、自身の心持ちだったり、取り組み方によるもので、しかも、雑誌で活動してるライターの多くが、この3か4に該当するのです。
文章がテキトーなほうが編集者は使ってくれる
稼げるライターに共通する「文章が下手」というのは、もっと的確に言うなら「文章がテキトー」なのです。
例えば、あなたが雑誌の編集者だとします。ライターに記事を頼み、送られて来た原稿を読んでみると、要点は抑えてあって言いたいことはわかるのだけど、とにかく文章がテキトー。「てにをは」さえ、きちんと使えていない。そんな場合、どう感じるでしょうか?
「なんだよ、これでもライターかよ。使えねぇな」
とは多くの編集者の場合、思いません。答えは
「仕方ねーなぁ。いっちょ直すか」
なのです。
ほとんどの編集者は自分の世界を持っています。そして、その世界を自分で作りたいと思っています。なので、この下手な原稿を直す作業について、そこまで苦を感じません。むしろ快感さえ覚える人もいます。そして、そもそもライターからあがってきた原稿を直すのも、編集者の仕事です。
もちろん、文章が上手いにこしたことはないですし、もらった原稿が自分の世界をはるかに超えるすばらしい文章だった場合は感動することもあります。しかし、あがってきた原稿がテキトーであっても、それが締め切りの前にきちんと送られてきて、ライターから、
「急いで書いたんで、ちょっと乱文ですけど、あとは編集者さんの好きに変えていただいてかまわないんで」
という一言があれば、それほど悪い気はしない編集者は多いのです。そして、不思議と毎回、使いたくなるのです。(あと、だいたい文章が下手なライターにかぎって、取材はしっかりしていたりする)
稼げないライターの多くが「原稿を自分の“作品”だと勘違いしている」
一方で、4にあたる「文章が“やたら”上手いライター」は、編集者にとって真逆の存在で、彼ら彼女らに共通するのは、とにかく原稿が遅いということ。
とにかくこちらに原稿を送るまでに、推敲に推敲を重ね、締め切りギリギリまで送ってきません。挙げ句の果てに、送られて来た原稿を読んでみると、「う~ん、まぁ原稿はしっかりしてはいるけど、なんか物足りない…」。で、締め切りギリギリにもらった原稿について、「この部分をもう少しわかりやすくしたいから変えていい?」と連絡すると、
「じゃあ、自分で直しますんで、もう少し待ってください」
…いやいや、朝までに入稿しないとヤバいからこちらで直しちゃうと言っても「しっかり責任をもって書きますんで(←間に合わせるとは言わない)」。そして、気づくと締め切りはとっくにすぎて2時間後…。
編集者がもっとも嫌うことは、締め切りに間に合わないことです。しかし、やたら文章が上手いライターに限って、こうした概念がありません。彼ら彼女らの中にあるのは、「自分のペンですばらしい作品を生み出したい」ということなのです。
ただ、ライターというのは作家ではありません。特に雑誌のライターが書く文章なんて、消費されていくもの。最大の目的は読者に「面白い!」と思わせることなのです。上手いと思わせることではありません。
以上の話をふまえて、もう一度あなたが編集者だとして、3と4、どちらのライターを使うでしょうか。私を含め、編集者の多くは、締め切りを守ってくれないライターを使いたくありません。そして、どんどん仕事は減っていきます。
だから、雑誌のライターは文章は上手くなくていいのです。下手クソでいいのです。要点さえしっかりしていれば、テキトーに書いて、さっさと次の仕事に取りかかるべきなのです。私自身もこうしてテキトーな文章で、ブログのタイトルにあるように年収800万だった時期もありますし、知人のライターには今でも、文章は下手なのに、それ以上稼いでいる人が何人もいます。(稼いでいる理由は他にもあるのですが、それはまた別の機会に書きたいと思います)
ちなみに、5に該当する「なぜかわからないけど使われるライター」というのも存在していて、こちらは文章も下手で、締め切りも守ってくれない、でも、なぜか温情だったりこれまでの付き合いで使ってしまう、そんなライターがいるものまた事実です。(この人たちに共通するのは、やたら人柄がいい。しょっちゅう飲みに誘ってくる。年賀状をいつまでも送ってくれること)
ライター側から見た編集者への対応の仕方
と、ここまでは私の編集者としての経験から書きましたが、一方でライターとしての経験からも補足しておきます。
すべてが私のような4のライターを好む編集者というわけではもちろんなく、しっかりと原稿を書かないと、鬼のように何度でも修正させる編集者もいます。
なので、稼げるライターになるためには、編集者に合わせるフレキシブルなスタイルを持つことも重要です。「こいつはやたら直したがるからテキトーでもいいや」だったり「この人はちゃんと書かないとうるさいけど、締め切りには厳しくないからギリギリまでしっかり書こう」など、担当する編集者に合わせることで、それが編集者に愛される=仕事をつなげる=稼げるという流れに繋がっていきます。
どうしてもライターという肩書きを名乗ると、「文筆家」だったり「作家」になったような錯覚になりがちで完璧なものを作りたくなりますが、それは編集者からも読者からも求められているものと違います。「上手い」ものではなく「面白いもの」を「時間をかけず」に作ることが、雑誌のライターに求められるものなのです。
というわけで、今回は雑誌のライターを中心に書きましたが、これらは私個人の経験からのお話で、すべてが正しい訳ではありません。さまざまな場所から情報を集めることがライターにとっては大切なことです。こうした書籍などにも目を通してみることをおすすめします。
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今後は書籍や広告、ウェブでの稼げるライターについても、書いていきたいと思います。