政治・行政

安倍政治を問う〈13〉海外メディアはどう見ているか

 自民党の圧勝に終わった総選挙の結果は海外メディアにどう映るのか。安倍晋三政権の2年間と先行きについて、日本を拠点に取材を続ける米国とドイツの日刊紙の記者2人に聞いた。

◇米ニューヨーク・タイムズ ジョナサン・ソーブル記者

 安倍晋三首相は私の大学時代の日本人の友人によく似ている。その友人は「世界で活躍したい」という気持ちが強く、英語が堪能なこともあって外資系企業に入社した。日本人の中には「日本のいろいろなところが嫌いで、外国の方が解放感があっていい」という人もいるが、彼は違った。「日本の素晴らしさを世界にみせたい」という思いに鼓舞され、そうすることが国際貢献になると信じていた。

 安倍首相の政策や言動からは国際社会で日本の存在感を高めたいという思いが感じられる。

 今はあるべき姿になっていないという思いの裏返しでもあろう。つまりコンプレックスだ。自信があれば自らを誇示する必要はないからだ。日米安全保障条約を改定し、対等な日米関係を目指した祖父の岸信介元首相の影響もあるかもしれない。安倍首相には劣等感が残っているのだろう。

 国際社会で日本が評価されないのは宣伝が下手だからだ、という人がいる。正しいことを言っているのに国際社会に理解されないのは、うまく説明ができていないからだ、と。それは錯覚だ。

 米ニュージャージー州で韓国系米国人が設置した慰安婦像をめぐり、日本人から「主張が受け入れられなかったのは、われわれの広報活動がうまくいかなかったからだ」という声を聞いた。だが、慰安婦問題が日韓関係をこじらせているということは米国でも知られている。米国人は韓国に肩入れしているわけではなく、両者の論争から一定の距離を置き、客観的にみている。

 外務省は広報活動予算を増やす方針だというが、そうした小手先の話ではない。問題は戦後処理について日本国内で議論がまとまっていないところにある。国内での意見がまとめられない限り、歴史問題は永遠に続くだろう。

 アベノミクスには世界が注目している。以前勤めていた英フィナンシャル・タイムズでは社説で日本の経済政策を取り上げ、ロンドンやニューヨークの証券市場でも話題になるようになった。世界的に不況が続く中、アベノミクスが機能するかどうか、一つの新しいモデルになり得るかどうか、興味があるからだ。

 来年は戦後70年を迎える。安倍首相が個人の信条として歴史認識にこだわり中国や韓国との関係が悪化するようなら、国際社会は日本に失望し、安倍首相のいう「誇り高き日本」は遠くかすむばかりだろう。

○02年来日。英フィナンシャル・タイムズ東京支局長などを務め米ニューヨーク・タイムズ特派員。カナダ生まれ。

◇独日刊紙 カーステン・ゲアミス記者

 日本外国特派員協会はこの2年間、毎月、安倍晋三首相に取材を申し込んできたが一度も実現していない。日程が合わないという理由だが、こちらはいくらでも調整すると申し出てきた。北朝鮮でさえ、外国人メディアの質問には答える。情報統制が激しい中国にいる同僚だって共産党幹部に取材する機会は与えられている。政府には説明責任というものがあるが、安倍首相は放棄している。

 外国特派員協会は厳しい質問や批判で知られる。だが、批判には意味がある。海外メディアから批判されるということは、その国の政策が全く理解されていないという裏返しだ。

 そもそも日本政府は非常に内向き。来日して5年間、閣僚にインタビューを申し込み続けた。40回を超えるが、返答があったのは3回だけで、それも取材を断るという回答だった。

 過去の歴史をもみ消し、日本が被害者であるかのように振る舞う安倍首相の言動も国際社会での日本の立場を孤立させている。

 従軍慰安婦をめぐる問題で日本政府は二枚舌を使っている。旧日本軍の強制性を認めた1993年の河野洋平官房長官談話を継承するとした一方、外務省のホームページから強制性に触れた文章を削除した。国内外で説明を使い分けている国を一体、どこの国が信頼するだろうか。

 日本のメディアも内向的で、権力に同化しているように映る。日本の国債の格付けが下がったニュースをメディアはどう報じたか。日本経済が危険な状況に陥っているにもかかわらず、扱いは小さいと感じた。

 同様に格下げとなったイタリアでは主要紙は1面で大々的に報じた。政策が機能していないことの表れで、国民に知らせる必要があると判断したからだ。

 ジャーナリズムは独立した機関として権力を監視する役割を担っている。日本のメディアはその意識に欠ける。最多の部数を誇る読売新聞は安倍政権をほとんど批判しない。もはや政府の広報紙だ。

 選挙の投票率は戦後最低だった。これでは安倍政権が信任を得たとはいえない。安倍首相は選挙後、憲法改正の意欲をあらためて示したが、日本人がいま最も関心があるのは歴史修正や憲法改正ではなく、経済の安定だ。

 政治家家系の安倍首相や麻生副総理は自らの家柄や祖先に誇りを持っているのかもしれないが、国民のために仕事をすることに誇りを持つべきだ。

○ドイツ日刊新聞「フランクフルター・アルゲマイネ」東アジア特派員。政治、経済を中心に執筆している。

【神奈川新聞】