パソコン:使用制限で新発想…情報、ネットより同僚に聞け

毎日新聞 2015年01月05日 15時01分(最終更新 01月05日 16時30分)

 パソコンやスマートフォンの社内での使用をあえて制限する企業がある。パソコンもスマホも仕事の効率アップや情報収集には有用だが、会話や考える機会を奪う弊害もあると考えての取り組みだ。社内外のコミュニケーションの活性化や、豊かな発想力を磨くことを狙っており、新製品開発につながるなど効果も出ているという。【古屋敷尚子】

 ◇「会話増え、新製品生まれた」

 大阪市北区のサントリーホールディングス本社では毎週水曜の正午から午後3時まで原則、パソコン利用が禁止される。インターネット情報やパソコンメールに頼りすぎることで、取引先や同僚と話す機会や、考える時間が減っているのでは、との懸念から2012年12月に始めた。

 入社3年目の山中亜希子さん(25)は社員の給与を計算する部署に所属。普段は全員が一日中パソコンに向かうが、水曜午後は課題を決めて議論したり、グループ会社の店舗へ出かけたりする。当初、山中さんは「パソコンが使えないと、メールの返事が遅れて迷惑をかけたり、仕事が遅れるのでは」と不安だったが、実際には問題はなく「以前より会話が増え、上司や先輩に意見を言いやすくなった」と実感している。

 生活用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市青葉区)は08年から個人へのパソコン支給をやめ、社内にパソコン専用の一角を設けた。使用時は自分の席から移動し、1回45分まで使えるルールだ。「パソコン作業ばかりしていると、周りの同僚の顔さえ見ず会話も減り、新しい発想が生まれない」(広報)との判断からだ。取り組みの効果か、13年度の売上高は07年度の約1.5倍の1112億円。売上高に占める新製品の割合は38%から56%に伸びた。「ダラダラとパソコンを使わなくなって残業が減り、会話が増えて多くの新製品が生まれた」(同)という。

 急速に普及したスマホに危機感を覚える会社もある。京都市のIT関連会社は14年10月から実験的に休憩室でのスマホ利用を禁止。スマホに熱中する社員が増え、以前は会話でにぎやかだった休憩室が静かになったためだ。同社社長は「スマホは便利だが、アイデアが生まれる会話を奪ってしまう悪影響もあるようだ」と話す。

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