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農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組 Q2. 農薬による蜜蜂の被害を防ぐため、日本ではどのような対策がとられているのでしょうか。 Q3. 日本では、農薬による蜜蜂の被害はどの程度発生しているのですか。 Q4. 2008年の日本における蜜蜂不足の原因は何だと考えていますか。 Q5. 農薬の蜜蜂への影響について、我が国では、どのような試験研究を実施しているのでしょうか。 Q6. EUにおいて、ネオニコチノイド系農薬の使用が制限されることとなったとのことですが、その内容はどのようなものですか。 Q7. これら3種類のネオニコチノイド系農薬は、日本でどのように使われているのですか。 Q8. 我が国でもEUと同様に3種類のネオニコチノイド系農薬の使用を制限しなくてもいいのですか。
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更新日:2014年9月18日 担当:消費・安全局農産安全管理課農薬対策室 農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組(Q&A)(2014.9月改訂)
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農薬は、品質の良い農産物を安定的に国民に供給するために必要なものです。ただし、多くの場合、農薬は野外で使用されるので、使用する際には蜜蜂などの有用生物やその他の周辺環境に悪影響を及ぼさないよう十分な配慮が必要です。農薬の使用が蜜蜂に悪影響を及ぼさないよう、我が国ではさまざまな取組を行っています。 |
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A1. 登録された農薬しか使えません。 農薬は、農作物を病気、害虫、雑草などから守る目的で使用するものです。それ以外に、農作物の発芽、発根、伸長、着果、結実などを促進又は抑制する目的で使用されるいわゆる植物成長調整剤も農薬に含まれています。このように農薬は品質の良い農産物の安定供給に欠かせないものではありますが、その使用が人や環境に悪影響を及ぼす可能性がないわけではありません。例えば、殺虫剤は、害虫を駆除するために使用されるものですが、その使用によって害虫以外の虫も死んでしまう可能性があります。このため、効果や安全性に関するデータを審査して問題がないと判断した農薬のみを、農林水産省が登録し、登録された農薬のみを使用できることになっています。また、登録の際に、使用できる作物と使用方法(希釈倍数、使用量、使用時期、回数など)を合わせて定めており、農薬を使用するときにはこれらを守らなければなりません。 さまざまな試験成績に基づき、効果・安全性を確認した農薬だけを登録します。農薬登録の際には、農薬の開発者に以下の試験成績の提出を求めています。
農林水産省は、食品安全委員会、厚生労働省及び環境省と協力して、農薬を使用する農業者の健康への影響、水質や水生生物などへの影響、周辺の農作物や蜜蜂などの有用生物への影響、農薬が残留した農産物を食べた消費者の健康への影響、病害虫防除の効果などを、これらの試験成績に基づいて評価し、登録の可否を判断しています。
農薬は、ラベルに表示された使用方法を守って使用しなければなりません。農薬登録の際に効果及び安全性が確認された使用方法をラベルに記載することが定められています。農薬が、必要な効果を発揮しつつ、人の健康や環境に悪影響を与えないようにするためには、ラベルに表示された使用方法を守ることが不可欠です。農林水産省は、都道府県、農協、販売業者を通じて、使用方法を守るよう農薬使用者に指導しています。 |
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A2. 蜜蜂に対する影響試験の結果に基づき、農薬を使用する際に注意すべき事項をラベルに記載することが定められています。農林水産省は、農薬登録の前に、農薬の成分を蜜蜂の体に塗布したり、砂糖水に混ぜて蜜蜂に与えたりして、蜜蜂に対する影響を試験して、その結果を登録申請の際に提出するよう、農薬の開発者に求めています。 試験の結果、その農薬成分の蜜蜂に対する毒性が比較的強い(例えばその成分を20%含む薬剤を1000倍に薄めた散布液が1匹あたり1滴分(約0.05 ml)付着しただけでも試験に供した蜜蜂の半数が死んでしまう程度)ことが判明すれば、
などの注意事項を、その農薬のラベルに表示しなければなりません。 現在我が国で農作物に広く使用されている有機リン系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系などの殺虫剤の場合、散布液が0.001~0.0001 ml(1滴の数十分の1~数百分の1)付着しただけでも蜜蜂が死ぬ可能性があるので、上記の注意事項を守って使用するよう、都道府県を通じて農家を指導しています。
蜜蜂に農薬がかかるのを防ぐため、農家と養蜂家との間の連絡を密にするように指導しています。養蜂家の方が季節によって花のある地域へと巣箱を移動させることがあるので、農家が農薬を使用するときに、蜜蜂の巣箱が近くにある場合もない場合もあります。そこで、農林水産省は、都道府県を通じて、農薬を使用する農家と養蜂家との間で、巣箱の位置・設置時期や、農薬の散布時期などの情報を交換し、巣箱を退避するなどの対策を講じるよう指導しています。 この指導に基づき、養蜂の盛んな地域を中心に、各地で以下のような取組が行われています。
2013年度に養蜂の被害があったと農林水産省に報告された事例の中には、現場レベルでの指導が徹底しておらず、農家と養蜂家との間で巣箱の設置場所や農薬の使用時期などの情報共有がなされていないものも少なからずありました。 このため、まずは都道府県の養蜂担当部局が養蜂組合の協力を得て、巣箱の設置される可能性のある場所の情報を農薬使用指導部局・農業団体に伝えていただき、養蜂家と水稲農家の情報の共有が徹底されるよう、あらためて都道府県に指導しました。
蜜蜂の被害を減らすための対策を、今後も引き続き検討していきます。蜜蜂の被害があったときには、養蜂家から都道府県に届け出てもらい、まず都道府県の養蜂を担当する部局が被害の状況、ダニ、ウイルスへの感染の有無などを調査しています。その結果、農薬が原因である可能性がある場合は、都道府県の農薬使用の指導を担当する部局が周辺農地の農薬の使用状況を調査し、調査結果を農林水産省に報告します。また、農地の周辺で蜜蜂が農薬を浴びたり取り込んだりしているのかを明らかにする試験研究を農林水産省が実施しています。 2013年度に農林水産省に報告された被害事例を解析した結果、蜜蜂の被害は水稲の開花期に多く、水田に飛来した蜜蜂がカメムシ防除に使用したいろいろな殺虫剤を浴びたことが原因である可能性が高いことがわかりました。また、試験研究機関が行った現地調査では、水田周辺に設置した蜜蜂の巣箱からイネの花粉が収集され、蜜蜂が水稲の開花期に水田に飛来することが裏付けられています。 被害調査は2014年以降も引き続き実施し、収集された事例を詳細に解析していく予定です。試験研究では、蜜蜂が水田で殺虫剤の散布液を直接浴びる以外に、殺虫剤にどの程度触れたり摂取したりする可能性があるかを知るため、イネ花粉や水田の田面水中の殺虫剤の濃度などを調べます。 これらの調査や試験研究から、農薬の使用によって蜜蜂に被害が発生すること及びその仕組みについて新しい知見が得られれば、直ちに被害を減らすためのより効果的な対策を検討し、実施します。 なお、ダニや病気も群内の蜜蜂の数が減少する原因となることが知られています。これらによる悪影響を防ぐため、2011年3月に養蜂家向けに刊行された「養蜂マニュアル」(注)は、蜜蜂の衛生管理対策をとるように勧めています。 (注) 平成22年度の農林水産省の補助事業として、(独)農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所の蜜蜂の研究者、大学の研究者や各地の養蜂家が共同で取りまとめたものです。 |
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A3. 2013年度から、蜜蜂の被害事例について、それ以前よりも詳細な調査を行い農林水産省に報告してもらうことにしました。蜜蜂の被害を減らす対策を考えるためには、被害の発生状況をより正しく知り、被害の発生要因を明らかにする必要があります。具体的には、蜜蜂の被害の程度や発生時期、病気の有無、周辺での作物の栽培状況、農薬の使用状況などの情報が必須です。 農林水産省は、養蜂家の方から被害の報告があった場合の調査手順や調査項目をまとめました。2013年度から、都道府県に対し、この手順に基づいて、養蜂を担当する部局と農薬使用の指導を担当する部局が連携して調査を実施し、農林水産省に報告してもらうよう、協力をお願いしています。具体的には、まず、養蜂を担当する部局や家畜保健衛生所などが、被害の状況、ダニ、ウイルスへの感染の有無などを調査します。その結果、農薬が原因である可能性がある場合は、農薬の使用の指導を担当する部局が、周辺農地の農薬の使用状況を調査します。 この調査結果は毎年取りまとめます。また、ある程度以上の事例が集まれば、農薬による蜜蜂の被害の発生要因について詳細な解析を行い、被害を低減する対策の検討に活用します。
2013年度には69件の被害の報告がありました。2013年度(2013年5月30日~2014年3月31日)に、蜜蜂の被害について都道府県から69件の報告がありました。都道府県に被害を報告した蜂場(養蜂家が巣箱を置いた場所)に被害発生当時に置かれていた巣箱数は約3,000箱で2013年8~9月の全国の巣箱の数(おおよそ41万個)の約0.7%にあたります。 2012年度までの10年間では毎年数件、多い年でも10件程度の報告でした。(注)農林水産省は2013年5月に、蜜蜂の被害をより正確に知るために、行政に連絡してもらう蜜蜂の異常の状況を明確にするとともに、養蜂家に対して異常を報告してもらうよう呼びかけを強化しました。その結果、養蜂家の協力が得られたため、これまでより多くの事例が報告されたものと考えています。 専門家によれば、農薬による蜜蜂の被害の特徴は、巣箱の入り口(巣門)の前に死虫が観察されることであり、2013年度の報告では、約6割の事例において、一般に巣箱1箱当たり数万匹の蜜蜂がいる中で、最も多い死虫数は1,000~2,000匹でした。 また、被害は水稲の開花期に多く、カメムシ防除に散布されたいろいろな殺虫剤を水田に飛来していた蜜蜂が直接浴びたことが原因であると考えます。 2013年度からは、被害の報告とともに、瀕死または腐敗の有無等から判断して死後間もないと考えられる蜜蜂が入手できる場合には、農薬を浴びたかどうかを知るための分析試料として採取し、分析機関に送付してもらうよう依頼しています。2013年度は、提供された蜜蜂の死虫のサンプル数が十分でなく、カメムシ防除に用いられる殺虫剤のうち、どの殺虫剤が蜜蜂の被害を生じやすいかどうかを推定することはできませんでした。また、水稲開花期以外の事例については、報告された被害事例数が少なく解析できませんでした。 被害事例調査は2014年も引き続き実施していきますが、サンプル数を集められるよう、養蜂家の方々には試料提供の重要性を理解いただくとともに、死虫の採取が可能なよう被害に気がつき次第速やかに都道府県に連絡すること、都道府県には被害発生の連絡を受けた後できるだけ早く現地調査を実施し死虫を採取することをお願いしました。 (注)農林水産省が、農薬の使用に伴う事故及び被害の実態を把握するため、農薬によるヒトの中毒事故、農作物、家畜、水産動物の被害などを対象に都道府県から毎年報告を受けているものから、蜜蜂の事故事例を集計したものであり、蜜蜂の被害の把握を目的として行った調査ではありません。(「農薬の被害に伴う事故及び被害の実態調査」) <詳細は以下をごらんください> |
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A4. 我が国では、2008年、一部の地域で花粉交配に使用する蜜蜂が不足しましたが、これは「蜂群崩壊症候群」(CCD)によるものではありません。我が国では、2008年から2009年にかけて蜜蜂の蜂群数が減少し、一部地域において花粉交配用蜜蜂の不足が生じました。その原因として、天候不順や寄生ダニの被害等により蜜蜂が十分に繁殖できなかったことや、2007年11月から女王蜂の主要供給国であるオーストラリアからの蜂の輸入が見合わされていたこと(注)などが考えられました。養蜂家などには、農薬の影響ではないかとする声もありました。 一方、欧米では、働き蜂のほとんどが女王蜂や幼虫などを残したまま突然いなくなり、蜜蜂の群れが維持できなくなってしまう「蜂群崩壊症候群」(CCD)が2000年代から問題になっています。米国では、問題が明らかとなった2006年以降、5年連続で蜜蜂の群れの3割以上が越冬できずに消失し、2011年の冬にも22%の群れが越冬できなかったと報告されています。日本ではこのような現象は見られていません。 (注)オーストラリアの一部の州で蜜蜂の病気届出制度が変更され、同国から蜜蜂を輸出する時に病気がないことを保証するための方法などに関する日本とオーストラリアの間の取り決めの内容が見直されるまで、オーストラリア政府が自主的に女王蜂の輸出を見合わせていたものです。
農林水産省は、蜜蜂の研究者、養蜂家、花粉交配用蜜蜂の利用者、都道府県の担当者などの意見を参考に、原因究明のための研究を実施し、蜜蜂の需給調整を強化しました。農林水産省は、蜜蜂不足の実態把握や当面の対応策等を検討するため、2009年夏に、蜜蜂の研究者、養蜂家、花粉交配用蜜蜂の利用者、都道府県の担当者などから成る「みつばちの不足問題に関する有識者会議」を2回開催しました。この会議での意見に基づいて、農林水産省は、次の対策を講じました。
2008年から2009年にかけて国内で蜜蜂が十分に繁殖できなかったため、2009年度中に、ダニ、病気、ストレス、農薬など幅広い視点から調査する研究を農林水産省が実施しましたが、その原因は特定できませんでした。巣箱の周辺で死んでいた虫からネオニコチノイド系農薬が検出された事例もありましたが、ダニや病原菌の影響が示唆された事例もありました。また、花粉交配の目的で高温になる温室の中で使用されることがストレスとなっていることも示されました。この研究の報告書は、(独)農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所のホームページからダウンロードできます。 また、2009年から花粉交配用蜜蜂の需給を都道府県間で調整するようにした結果、2010年以降花粉交配用蜜蜂の不足は見られなくなりました。 |
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A5. 国際的には、蜜蜂の群れが維持できなくなってしまう原因としては、ダニ、病気、ストレス、農薬などが考えられています。我が国では、2009年度以降、農薬の蜜蜂への影響について、農林水産省の所管する試験研究機関が次のような試験研究を実施してきました。 2008 ~ 2009年に蜜蜂が十分に繁殖しなかった原因について、幅広く検討しました。(2009年度)2008年から2009年にかけて我が国で花粉交配用蜜蜂の不足が発生した際に、蜜蜂が十分に繁殖できなかった原因について研究を実施しましたが、原因を特定できませんでした。 <詳細は以下をごらんください>
水田地帯で発生する蜜蜂被害の原因解明に取り組みました。(2010~2012年度)我が国では、夏に水稲のカメムシ防除を目的として殺虫剤を使用する時期に、蜜蜂の被害が多く報告されています。そこで、カメムシ防除のための殺虫剤を浴びたことが疑われる蜜蜂の被害が生じている水田周辺地域の蜂場を選定して、水稲のカメムシ防除の時期に蜜蜂が受ける影響や蜜蜂が浴びた殺虫剤の量等を調査しました。その結果、このような蜂場での巣門前の死虫の発生などの蜜蜂被害は、水田で斑点米カメムシ防除に使用される殺虫剤を浴びたことが原因である可能性が高いことが明らかになりました。 また、蜜蜂は水田のイネの花粉を収集していたことから、蜜蜂は水田を訪れることが裏付けられました。 殺虫剤による蜜蜂群への長期的影響を知るために、秋季の巣重量の変化や越冬できた群数について、夏季の水田周辺(水田からの距離が約100m)に巣箱が設置され殺虫剤を浴びたと考えられる蜜蜂群と、殺虫剤を浴びなかった蜜蜂群とを比較しましたが、今回の研究では、両群の間に違いはみられませんでした。 <詳細は以下をごらんください>
蜜蜂が殺虫剤を浴びたり、花粉などを通じて体内に取り込む経路を推定するための研究を実施中です。2013年度から、イネ花粉への農薬の移行量を把握するための研究や蜜蜂を水田に訪れさせないための研究を実施中です。 なお、国際的には、ダニ、ストレス、農薬など、またはこれらの組み合わせによる影響など様々な観点から蜜蜂の減少の要因に関する研究が行われています。
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3種類のネオニコチノイド系農薬で使用の一部が制限された種子処理(前のページ参照)に使用するフェニルピラゾ-ル系農薬のフィプロニル(農林水産省注:フィプロニルは他の多くの農薬と比較して蜜蜂のみならず、ヒト、水産動植物への毒性が高いことが知られています(Q7の表を参照))についても、蜜蜂に被害が出る可能性があると、欧州食品安全機関(EFSA)は、2013年3月に公表した評価結果で述べています。これを受けて、EUは、2013年8月14日に、施設内で播種される種子や、開花前に収穫する野菜の種子以外の種子へのフィプロニルの使用を制限することを決めました。これらの措置は、2014年3月1日より実施されています。また、遅くとも2年以内に、農薬製造者から提出される追加データなどを参考に、措置を見直すこととなっています。
なお、我が国では、フィプロニルについては、野菜や花きへの散布剤としての使用が認められていますが、使用する際には蜜蜂の被害を防止するため「蜜蜂を放飼している地域では使用はさける」旨の注意事項が付されています。また、水産動植物への影響が懸念されるため、水稲では育苗箱に施用する方法でしか使用することができませんし、葉面に散布することもできません。
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A7. イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムのいずれも、稲、果樹、野菜などに幅広く使用されています。これら3種類のネオニコチノイド系農薬は、カメムシ、ウンカ、アブラムシ、コナジラミ、ハモグリガなど、主要な害虫に対して優れた防除効果があります。これらの農薬を使用することができる作物も、稲、果樹、野菜など幅広く、農家による害虫の防除に欠かせません。 我が国では、農薬を表面に付着させた種子をまくという使い方は害虫対策として一般的ではありません。粒剤の土壌処理、水で希釈した散布液の茎葉散布、動力散布機につないだホースからの粉剤の散布などの方法で使用されています。
水稲のカメムシ防除に重要な農薬です。稲の花が開花して受粉し、乳液状のデンプンが籾にたまり始めると、カメムシがこれを好んで吸いに来ます。カメムシに吸われた米粒は、成熟が止まってしまったり、吸われた痕が黒くしみになったりします(右の写真)。このような米が混じると、米の商品価値が著しく下がってしまうので、カメムシを確実に防除する必要があります。 これらのネオニコチノイド系農薬は、カメムシのような吸汁害虫に対して優れた防除効果を持つ殺虫剤です。カメムシの防除に使われる他の殺虫剤に比べて、人に対する毒性が弱いので、水田で働く人が自分の健康や米を食べる人の健康を考慮にいれた場合に使いやすいのです。水生生物に対する毒性も弱く、水田の下流に位置する河川や養魚池などへの影響を心配する必要もありません。また、他の殺虫剤の中には、油に溶けやすく、 稲に使用すると稲わらを餌とする家畜の肉などに残りやすいため、使用時に注意が必要なものもあります。しかし、ネオニコチノイド系農薬は、油に溶けにくく畜産物に残りにくいものがほとんどです。 ネオニコチノイド系農薬はこのような特性を持っているため、水稲のカメムシ防除の場面で広く利用されています。
我が国では、このほかにも、4種類のネオニコチノイド系農薬が登録されています。我が国では、このほか、ジノテフラン、ニテンピラム、アセタミプリド及びチアクロプリドが農薬登録されています。これらの殺虫剤も、さまざまな農作物に使用されています。
<ネオニコチノイド系農薬等の蜜蜂、人、水生生物への毒性> 数値が小さいほど毒性は強い。
出典: 食品安全委員会による食品健康影響評価、諸外国及びFAO/WHO合同残留農薬専門家会合(JMPR)による評価結果、農薬抄録等 |
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A8. これらの農薬は水稲のカメムシ防除に重要です。稲の花が開花して受粉し、乳液状のデンプンが籾にたまり始めると、カメムシがこれを好んで吸いに来ます。カメムシに吸われた米粒は、成熟が止まってしまったり、吸われた痕が黒くしみになったりし、いわゆる斑点米ができてしまいます。斑点米は、米の商品価値を著しく下げるため、カメムシの防除は米の生産において重要です。これらの3種類のネオニコチノイド系農薬は、カメムシのような吸汁害虫に対して優れた防除効果を持つ殺虫剤です。
これらの農薬はカメムシ防除に用いられる他の殺虫剤に比べて、人や水生生物に対する毒性が弱いです。これらの3種類のネオニコチノイド系農薬は、カメムシの防除に使われる他の殺虫剤に比べて、人に対する毒性が弱いので、水田で働く人が自分の健康や米を食べる人の健康を考慮にいれた場合使いやすいのです。水生生物に対する毒性も弱く、水田の下流に位置する河川や養魚池などへの影響を心配する必要もありません。他の殺虫剤の中には、油脂に溶けやすく、稲に使用すると稲わらを餌とする家畜の肉などに残りやすいため、使用時に注意が必要なものもあります。しかし、ネオニコチノイド系農薬は、油脂に溶けにくく畜産物にはあまり残留しません。 ネオニコチノイド系農薬はこのような特性を持っているため、水稲のカメムシ防除の場面で広く利用されています。
我が国では、水稲のカメムシ防除で殺虫剤を使用する時期に蜜蜂の被害が多く報告されています。我が国では、夏に水稲のカメムシ防除を目的として殺虫剤を使用する時期に、蜜蜂の被害が多く報告されています。これは、夏には、蜜蜂が利用できる花が少なく、稲の花粉を求めて蜜蜂が水田を訪れることと関連しているのではないかといわれてきました。 2013年度に農林水産省に報告があった被害事例のうち、大半が水稲のカメムシ防除の時期に水田の周辺で発生していました。また、試験研究でも、水田周辺に設置した巣箱の蜜蜂がイネの花粉を集めることが裏付けられました。 農林水産省は今回の調査結果にもとづき、都道府県に対して以下の指導を行いました。
カメムシ防除の効果、蜜蜂への悪影響の程度、人や水生生物への影響などのバランスを考慮し、カメムシ防除に使用する殺虫剤の使用方法の変更が必要か検討します。ネオニコチノイド系農薬は、カメムシに優れた防除効果を持ち、また人や水生生物に対する毒性が弱い特性があることから多くの都道府県で使用されています。現在のところ、カメムシなどの害虫だけにネオニコチノイド系農薬と同程度の防除効果を持ちながら、蜜蜂への悪影響が全くない殺虫剤は開発されていません。蜜蜂の被害を防止する観点を含めカメムシ防除に使用する殺虫剤やその適切な使用方法を検討するため、農林水産省は次のような情報の収集と解析を行っています。
これらの情報をもとに、ネオニコチノイド系農薬やそれに代わる殺虫剤を用いることによる、防除効果への影響、蜜蜂への悪影響の程度、人や水生生物への影響などのバランスを考慮し、農薬の使用方法の変更が必要かどうかを検討し、必要であれば変更します。 |
消費・安全局農産安全管理課農薬対策室
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