光触媒:宇宙船内を脱臭 「フジコー」JAXAと共同研究

毎日新聞 2015年01月05日 08時00分(最終更新 01月05日 09時04分)

 北九州市の複合金属製品メーカー「フジコー」と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、光触媒を使って宇宙船内を脱臭、殺菌する技術を共同研究している。宇宙に滞在する飛行士が快適な空間で過ごせるようにする狙い。将来の有人火星探査などで力を発揮することが期待されている。

 ◇消すぞ「体育会系の部室のにおい」

 国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士と地上との交信映像で決して伝わらないのが「におい」だ。JAXAによると、個人差はあるが「体育会系の部室のにおい」と表現した飛行士もいるという。

 原因は人が発する汗に含まれる有機物などだ。ISS内には空気再生システムが搭載され、物資補給時に空気も入れ替えられるため、現状では衛生面に問題はない。しかし、においのもととなる物質や細菌類の除去までは考慮されていない。世界が協力して目指している火星有人探査となれば、往復だけで約3年間かかり、「閉鎖環境」にある宇宙船内を清潔に保つことは重要な課題となる。JAXAが数年前から注目してきたのが、日本が世界をけん引する光触媒技術だ。

 光触媒は、光に反応して電子を放出し、空気中の酸素や水分と反応して有害物質を無害化する。フジコーは光触媒に独自開発した酸化チタンを採用。タイルなどの対象物に吹き付け、高密度で耐久性に優れた皮膜を作る技術がある。JAXAは、フジコーの技術であれば対象物へのダメージがなく、ISSの部品にも対応可能な点を評価。宇宙船内の壁にシート状に貼り付ける方法なども検討している。

 両者は昨年9月、共同研究の契約を結び、実験を通じたデータ取得や機能性評価などに取り組んでいる。基準を満たせば、次回打ち上げで日本の実験棟「きぼう」に持ち込み、エアコン吸入口に設置して効果を確認する。

 JAXA有人宇宙技術センターの伊藤剛・技術領域リーダーは「宇宙での居住環境はより重要になる。日本の光触媒技術で国際貢献できるよう期待している」と語る。【石田宗久】

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