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【AIBO】
製造元に捨てられたロボット犬「AIBO」…飼い主たちの思い受け止め、徒手空拳で“治療”にあたる元エンジニア集団の「使命感」
「おなかがすいたよぉ。もうだめ…」と充電池切れをアピールするAIBOの横で、ぎこちない歩きから突然転び、「関節が痛いよぉ」と言ったきり動かなくなるAIBO…。茨城県笠間市の民家の一室に初代から5代目まで、AIBOが十数台。「これでも他のエンジニアが修理できるようになったから減ったけれど…」とア・ファン社長の乗松伸幸さん(59)は話す。
乗松さんは元ソニー社員。エンジニアとして入社したが海外営業が長く、2010年末に早期退職した。「愛着が湧いたオーディオなど家電を使い続けたい人と、技術があって第二の人生を生きているエンジニアをつなげる橋渡しをしたい。一種の社会貢献です」と、主に黒物家電を想定した修理会社を11年に起業した。現在、エンジニアは全国に15人おり、得意ジャンルに応じて依頼品を修理する。もちろん、乗松さんもエンジニアとして修理を行う。
ア・ファンが初めてAIBOの修理を請け負ったのは2年前、すでにメーカー修理が終了していた初代AIBOだ。「AIBOを連れて介護施設に行きたい。修理してほしい」という人からの依頼だった。
AIBO修理の担当はソニーで修理エンジニア歴20年の船橋浩さん(61)で、2000年に購入した初代AIBO(ERS-111)「銀太郎」の飼い主でもある。「うちのも壊れて“飾り”になっていた。直してあげたかったが、構造が分からないから分解しようがなかった」(船橋さん)