1.スタジオジブリがアニメ制作を休止
【大きい画像を見る】宮崎駿監督は日本人2人目の米国アカデミー賞名誉賞を受賞Photo by Kevin Winter/Getty Images
2014年は、スタジオジブリイヤーであった。2014年11月にはスタジオを代表する宮崎駿監督が日本人として2人目の米国アカデミー賞名誉賞を、高畑勲監督は6月にアヌシー国際アニメーション映画祭で名誉賞を受賞している。プロデューサーの鈴木敏夫氏は、文化庁の芸術選奨に選ばれた。スタジオジブリの創業メンバーが、それぞれ大きな栄誉に輝いた。
一方でこれはスタジオジブリの創業者3人が、それぞれの長年の目標を達成したことでもある。となれば、スタジオジブリの次の目標は何になるのか?そうしたなかで、明らかになったのが、スタジオのアニメ制作の休止だ。2013年の宮崎駿監督の長編アニメ引退に続く衝撃を業界に与えた。
スタジオジブリはアニメーターなどとの契約を終了し、制作スタッフの多くがスタジオジブリの仕事を離れた。休止としているが、現状で明らかになっている新作長編映画はなく、次回の長編を期待されていた宮崎吾朗監督の新作はテレビシリーズで、アニメ制作はポリゴン・ピクチュアズである。
次回作がいつどんなかたちで作られるかは明らかでない。新しい世代が新たな目標、制作の在り方を見つけることも含めてのアニメ制作休止だろう。
2.「アナと雪の女王」大ヒットでディズニー絶好調
国内では2014年3月14日に公開されたディズニー・アニメーション・スタジオの『アナと雪の女王』がメガヒットになり日本を席巻した。興収は2014年に公開された映画のトップで260億円を超える。Blu‐ray販売、DVDレンタル、音楽販売も好調と一大ビジネスを築きあげた。
勢いに乗るディズニーは、おとぎ話を新たな視点で描き直した『マレフィセント』でも大ヒット。さらに日本マーケットに注力する。日本のカルチャーを大胆に取り入れたアニメーション映画『ベイマックス』のワールドプレミアを、ディズニー・アニメーションでは初の海外、東京で行った。
近年、ハリウッドメジャーは日本で苦戦することが多かった。しかしディズニーは、『アナ雪』ヒットをきっかけに、アニメーションを中心に今後も日本市場の攻略を積極的に進めそうだ。当面は強力なライバルだったスタジオジブリ作品がない。スタジオジブリの鑑賞客であった子どもから大人まで楽しめるエンタテインメント映画の受け皿ともなりえる。
3. CGアニメーション大躍進
CGアニメは過去数年、着実な成長を続けてきた。2011年の『friends もののけ島のナキ』はCGアニメ映画のビジネスの可能性を生み出したし、2012年公開の『009 RE:CYBORG』や2013年の『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』はセルルックCGアニメの発展に大きな貢献をした。
それでも2014年のCGアニメーションの同時多発的なビジネスの成功は、特筆すべきものだ。『楽園追放-Expelled from Paradise-』『シドニアの騎士』などヒット作が相次いでいる。一般層からコアファンまで、鑑賞者がセルアニメとCGをあまり区別しなくなった。
なかでも興収80億円の『STAND BY ME ドラえもん』は、これまでの2Dセルアニメの同作のシリーズの興収を大きく超えた。CGになることで、子どもたちだけでない大人の観客を惹きつけた。
4. アサツーディ・ケイ d-rightを子会社化
アニメを得意とするアサツーディ・ケイ(ADK)は、三菱商事の子会社であるディーライツの株式の51%を取得した。海外へのアニメやキャラクターの販売ネットワークを持つディーライツの強みに目をつけた。同社の豊富なコンテンツの海外展開に取り組む。
5. 妖怪ウォッチが一大ブーム
レベルファイブが開発発売した『妖怪ウォッチ』が、2014年に一大ブームを巻き起こした。ゲームの発売は2013年7月だが、2014年1月からのテレビ放送開始で火がついた。
バンダイの発売する関連商品「妖怪メダル」は品薄となり、12月に公開された劇場映画は邦画史上最高のスタート切る。ゲーム、アニメ、玩具、マンガなどを同時展開するメディアミックス戦略の強さを発揮した。
6. フジテレビ デイヴィッドプロダクション子会社化/日本テレビ タツノコプロ子会社化
2014年は大手テレビ局とアニメの新たな関わりが見えてき。フジテレビは『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメ制作で知られるデイヴィッドプロダクションを買収し、アニメ制作子会社を持つことになった。さらにテレビアニメシリーズ『信長協奏曲』の社内制作、“ノイタミナ”ブランドを通じたコアファン向けの劇場アニメに乗り出す。
一方日本テレビはアニメ制作子会社マッドハウスに加えて、2014年に新たにタツノコプロを子会社とした。タツノコプロの持つ豊富な原作の活用を視野に置く。
さらに動画配信の大手Huluも買収、子会社化している。テレビ局が自ら大手の動画配信プラットフォームを運営する。
多チャンネル化、視聴率低下で今後厳しい局面を迎える放送局は、収益の多角化の一環として、さらにアニメの可能性に投資する。
7. KADOKAWAとドワンゴが経営統合、KADOKAWA・DWANGO誕生
動画配信では、アニメファンにも人気の高いniconicoを運営するドワンゴと出版・映像の大手KADOKAWAの経営統合も大きなニュースだ。10月1日に持株会社KADOKAWA・DWANGOが設立された。
アニメ、映画、小説、ライトノベル、マンガ、雑誌、ゲームなど豊富なコンテンツを持つKADOKAWAがコンテンツ配信の大手プラットフォームとつながる。持株会社の会長である川上量生氏は、スタジオジブリに所属、「エヴァンゲリオン」シリーズのカラーの取締役でもあり、アニメ分野にもつながりが深い。今後の展開も含めてアニメ関係者にも無関心でいられない。
8. DAISUKI アニメコンソーシアムジャパンにクールジャパン機構新会社に統合
2012年にアサツーディ・ケイ(ADK)をはじめとする日本アニメ関連会社の共同出資で設立した日本アニメの海外向け動画配信サイトDAISUKIが2014年に新たな体制となった。バンダイナムコホールディングス、ADK、アニプレックスが株式会社アニメコンソーシアムジャパンを設立、これと事業統合する。さらに統合会社にクールジャパン機構が10億円を出資する。
動画配信では正規版の配信が進む一方で、依然、ネット上の日本アニメ・マンガの海賊版被害が深刻だ。2014年には、2013年に設立されたマンガ・アニメ海賊版対策協議会が本格的に動き出した。7月以降、業界で団結した集中的な海賊版削除を実施した。
9. ポニーキャニオン、ドラえもん、グッドスマイルカンパニー進出 再び注目される北米市場
2014年は、日本アニメ関連企業の新たな海外展開が相次いで発表された。とりわけ世界最大のエンタテイメント市場である北米が注目を浴びた。近年、特に不振が伝えられてきた市場だが、ビジネスの潮目を感じさせる。
日本の映像ソフトメーカーの大手ポニーキャニオンがアニメで北米直接進出することを明らかにした。映像ソフトメーカーの北米進出は、2010年のアニプレックスUSA以来である。
一方、作品ではテレビ朝日が『ドラえもん』、バンダイナムコゲームスが『パックワールド』を米国の大手テレビ局で放送し、関連ビジネスを展開する。アニメ制作ではマーザ・アニメーションプラネットが現地子会社MARZA USAを設立、グッドスマイルカンパニーはホビー商品の流通・プロモーション会社ULTRA TOKYO CONNECTIONを設立した。
実現しなかったが、ソフトバンクによるドリームワークス・アニメーションの買収交渉も大きなニュースとなった。その後、ソフトバンクはハリウッド版『ゴジラ』の制作会社レジェンダリー・ピクチャーズに出資を行った。日本企業がハリウッドビジネスで久々に存在感を示した。
10. アニメ制作会社で新社長就任が相次ぐ
2014年は、アニメ関連企業のトップ交代が重なる年となった。アニメ制作会社では、サンライズの新社長に宮河恭夫氏が就任した。またトムス・エンタテイメントでは岡村秀樹氏がセガ社長に就任し、新社長に鈴木義治氏が就任した。
またタツノコプロは日本テレビ放送網出身の桑原勇蔵氏が代表取締役に就任、マッドハウスではやはり日本テレビ出身の高橋正弘氏が社長についている。
また業界団体の日本動画協会でも、ぴえろの布川 郁司氏に代わりサンライズの内田健二氏が理事長を引き継いだ。
映像ソフトメーカーではアニプレックスの代表取締役社長に子会社A-1 Pictures社長の植田益朗氏が就任した。植田益朗氏はA-1 Pictures社長も兼任する。
4月にはエイベックスがアニメ映像事業を集約するエイベックス・ピクチャーズを設立した。こちらは社長にエイベックスGH代表取締役CFOの竹内成和氏、アニメ制作取締役本部長に勝股英夫氏が就任した。
[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.biz より転載記事]【ほかの画像を見る】宮崎駿監督は日本人2人目の米国アカデミー賞名誉賞を受賞Photo by Kevin Winter/Getty Images