ほら昔、ユースケ・サンタマリアがでてくるロボット映画覚えてる?

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冬休みもそろそろ終わるし、ホントは「劇場版アイカツ!」を見るはずだったのに残念だ。みんなが「ベイマックス最高最高」と狂ったように言っていて何かムカついたので真意を確かめるつもりで某ベイマックス見てきた。

最初に断っておくと「ベイマックス」は特にメッセージ性のあるテーマや2014年の映画界を激震させる何かがあったわけではなく、全てのものが「あーどこかで見たことあるな」的な好きなものを再構築して凝縮したような映画でありました。特に2014年度掌返しベスト映画賞だった「インターステラー」のようなどんでん返しもなく、上映が終わり席を立ち上がった瞬間、他の観客から「あれ、むかしユースケ・サンタマリアと香取慎吾が出てくるロボット映画あったじゃん」みたいな会話が聞こえてきて「ああ!!」みたいな感じになってしまった…

海外映画のいい加減な日本描写は死んだ

ベイマックス。ありとあらゆるオブジェクトがシャッキリポンと立っていることにただ感動を覚えた。ベイマックスはサンフランシスコと東京を融合した架空都市“サンフランソウキョウ”の街並みが舞台になり物語が進行していく。スクリーンに映しだされたのは多少脚色もありながらも我々の見た東京である。新橋・上野・御徒町、信号機やマンホールの模様や看板の文字ひとつにしても違和感を全く感じない。前にNHKでやってたベイマックスのメイキング番組で監督が「いい加減な日本テイストを持ち込みたくない」と決め、ディズニー・アニメーション・スタジオの日本人クリエイター・マット鈴木氏らとともに東京の街並みをこだわり抜いて再現したーみたいなことを言っていたけど、まさにそれが如実に現れている。

大体アメリカ人が映画に描く日本のイメージはリドリー・スコットよろしくブレードランナーとか、イーオン・フラックスであったりTOKYO DRIFTやバイオハザードにウルヴァリンであったり、寿司!天ぷら!切腹!のような我々日本人が「?」が頭に浮かぶような日本を舞台にしたり模倣キャッチメイクした映画は少なくないが、今作では全くと言っていいほどそれは無かったと言っていい。アメリカの都市では存在しない電信柱の電線のディティールも非常に忠実だ。高架の上に電車が走り、高架下には店舗らしきものが連なり、人々が行き交う。通りの店の中ではまた人がモノを食べたり会話をしていたり働いていたりして非常に綿密だ。製作陣のあるメンバーがAKIRAのビデオテープを夜通し擦り切れるまで鑑賞してそれをフィードバックしているというエピソードも頷ける。

観るなら字幕より吹き替えが良い

今回どうしても3DMAXで見たかったので「吹き替え」しかなかった。一般向けアニメ映画、吹き替えと聞くと大体が芸能人だったり舞台役者だとか「また話題作りのキャスティングで棒読み吹き替えかー」みたいな感じになってしまうので倦厭していた。が、実際はそんなことは杞憂でありそこはディズニー映画らしくちゃんとやってくれる。特に日本人特有な会話のテンポや間の置き方がビリビリくる。序盤に警察署へ迎えに行ったおばさんが車を降りてから兄弟二人に説教をしながら店のカギを開ける弾丸のようなべしゃりが日本のアニメにある「アレ」だ。それに対して完璧といえるレベルでリップシンクさせキャラクターに演技をさせる作画が凄すぎて笑ってしまった。ベイマックスがバッテリー切れでヒロに引きずられて家に帰ってくる描写もさることながら、英語の発音数だったらここまで正確な表現はできなかったかもしれないので観るなら吹き替え版をオススメしたい。

ベイマックス普通に震えるんですけど

海外とプロモーションの仕方が違うという触れ込みに心配し、なぜか主題歌をJUJUが歌い、家族愛だとか涙活だとかよくわからないワードが跋扈し非常に不安になった。しかし映画は作ってみるまで当たるかコケるか分からないビジネスである。しかも、毎回手を変え品を変え、異なるテーマの作品を作り続けなければならない。3Dの革新的技術を導入したとか、雪の女王でミュージカルにしてみるとか、車とか飛行機を主人公にしたり前作とは違う何かが求められ、マーケティングはケツから血が噴き出すまで考えつくされて隙間をほじくり返さなければならない。

特に悪役に関しては最近のディズニー映画はかなり苦慮しているように思う。生まれながらの悪ではなく、どんな人でも悪に転じてしまうことがあると言うことを描いている。それは最近のディズニー映画に共通するテーマなのかもしれない。そういうところもあってか「展開が見えた」とか言ってるレビューが多いけどそういうことではない気がする。「あーどこかで見たことあるな」的な好きなものをみんなくっつけて、絶対外さねえってレベルで上手いこと形にするとこういう映画が出来上がるのである。この時点でアニメ映画業界TKO負け確定である。勝てるわけ無いじゃんこんな映画。恐怖すら覚える。アナ雪とか見てなくて「皆何言ってんだバカじゃねーの」ってずっと言ってたけど怖い。もうだめだ。

ベイマックス(1)特装版 (プレミアムKC 週刊少年マガジン)

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