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○○高校生の日常と憂鬱

早朝高校生の朝食と憂鬱

作者:みーこ
今回の話までがプロローグです。
短編タグは、正直違うかなと思いますが、次回からちゃんと短編になると思います。
朝日がまだ柔らかく、薄靄が立ち込める住宅街のなかを駆け抜け街を外れ、神社の隣の武道館へ向かう。

「へい兄貴お帰りー!」
「へい翠ちゃんただいまー!」

明石と書かれた表札の前で待つ髪の長い双子の妹、明石 (すい)は、右手を高々と掲げた。それを見た双子の兄の明石 (ほたる)は同じ様に右手を突き上げて翠とパシンとハイタッチをする。

「お疲れ様ー。汗だくだからシャワー浴びるんだよ? 今日は入学式なんだから。汗臭い兄貴はやだよ?」
「わかってるって。俺だってこんな状態で真新しい制服なんて着たくねーよ」

家の扉が閉まったと同時に着ていた紺色のジャージと、中に着た汗でぐっしょり濡れたTシャツを脱いで風呂場へ向かった。それを見送り、翠は廊下をてっこてっこ歩き居間へ向かう。

「兄貴もよく走るよなー。しゅぎょーとか気取っちゃってさー。やーいやーい体力バーカ」

言葉とは裏腹に羨ましそうに笑った。居間へ続く扉をがらりと開け、台所で朝食の用意をする母親の方を向く。

「おかーさーん。兄貴帰ってきたよー。」
「うん。ありがとう。それじゃあ先にご飯食べちゃいなさい。そろそろ出てくるはずだし」
「はーい」

翠は綺麗な正座をして、卓袱台の上に並べられた和食に手を合わせる。

「いただきます」
「召し上がれ」

丁度皿洗い等が終わったのか、腰までのエプロンで手を拭きながら翠の隣に腰を下ろす。
 そして、翠と同じ様に料理に向かって丁寧に手を合わせる。

「いただきます」
「はよー。今日のご飯は……っしゃー卵焼き!!」

風呂上がりで半裸の蛍は、肩にタオルを掛け、卓袱台の上で一際輝く焦げ目のない黄色に喜ぶ。

「蛍が食べたいって言ってたもんね。だし巻き玉子」

穏和そのものといった笑顔を蛍に向ける。彼女は何でもないように言っているが、料理番組を見ていた蛍の小さな独り言だったのだ。

「あー、ありがとな」

翠の隣にどさりと座り、母親から目をそらしポツリと照れる様にして言った。
 その彼から久しく聞いていなかった感謝の言葉に、一瞬笑顔を崩し、驚きを顔に浮かべるも、すぐに喜びを顔いっぱいに広げる。

「うん。どういたしまして」
「あれー? 兄貴反抗期やめたのー?」
「う、うるせー!」

蛍は顔を隠す様に朝食をかっこんでごちそうさまとすぐ席を立ってしまった。翠はくすくす笑ってたくあんに箸を伸ばす。

「あんまりからかわないであげてね」
「大丈夫。私兄貴のこと超好きだもーん」

たくあんをぽりぽり口へ運びながら答える。実際蛍と翠は近所でも仲がいいことで有名だ。
 母親はふふっっと笑い、席を立つ。

「それなら大丈夫ね。早く食べちゃいなさい」

にこやかに笑いながら洗濯物を出しに行く。翠は一人でぱくぱくご飯を食べながら、高校の入学式をどきどきしながら想像する。

「早くご飯終えろよー? じゃないと遅刻になんぞー。一応言っとくが、入学早々遅刻とかやだかんな」

既に真新しい学ランに身を包んだ蛍が、不満げな声をあげる。彼も彼なりに楽しみなようだ。

「はーい」

「最初で最後の高校生活、おもいっきり楽しもうぜ」

彼は八重歯を見せて笑った。



時も場所も変わり



「ごちそうさまでした」

一人分の食器をキッチンの流しに片付け、洗い桶に水を張る。水道から響く水音が、がらんどうな部屋に響き渡る。

「高校、かぁ……」

学校、というところにいい印象を持つ学生は少ないと思うが、彼女も勿論学校を嫌う学生の一人だ。
他人と違って当たり前、という綺麗事が横行しながら、他人とは違いすぎる容姿のせいで他人とある程度の距離を保った関係しか結べない。

「……せめて金髪だったら……よかったのに」

いつのまにか水が洗い桶から溢れていた。はっと我に帰ったニナは慌てて水道の詮を締める。
水面に生まれ持った真っ赤な瞳が不気味に反射した。

「目のせいも、あるかな。やっぱり」

悲しそうに呟いて、朝の支度を始める。白い髪が、さらりと揺れた。

ニナは幼い頃から白い髪と赤い瞳で避けられ続けていた。何てことはない、世界中に何人かいる、先天性色素欠乏症……あるいはアルビノ。
それだけのせいにするつもりはないが、少なくともアルビノのせいで色眼鏡で見られることは多々ある。染髪だのブリーチだのカラコンだの、そんなありもしないことを日々疑われる。

(あまり好きじゃあない。髪も、目も。それでも、一緒に生きてきた髪と目だ。死にたくなるほど嫌いでも)

「わっ。寝癖酷い。絡まりまくってる」

スタンドタイプの手鏡を見ながら絡まっている髪を少しずつ手櫛で梳かしドライヤーを当て、どうにか寝癖を取っていく。
髪を切ろうかと悩んではいるものの、特に理由もなく伸ばした髪を、今すぐ切る理由も見当たらずなんとなく伸ばし続けている。

「入学をきっかけに切れば良かったかな」

というか、独り言多すぎだよ、と笑った。どうにか最後の絡まりをほどき、ブラシを通す。少し引っ掛かるけれど何度もかけ直し通りをよくする。

「セーラー服、早く着たいな」

斜間ヶ丘高校の制服はセーラー服と学ランだ。この制服を求めて入学してくる生徒も少なくないらしい。彼女はまだ出会っていないが、神羽奏良がそれに値する。

「よし」

梳かし終えた髪がしゃらりと髪の毛が音をたてる。
鬱陶しげにその髪を撫でてから、なにかに納得して頷く。

「友達と一緒に卒業するときに、髪を切ろう」

切るつもりは、毛頭ないけれど。
貴重なお時間ありがとうございました。
お目汚し、失礼いたしました。

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