ロボット:進化する体と頭脳 開発の最先端、人間に近づく
毎日新聞 2015年01月03日 18時32分(最終更新 01月04日 02時02分)
接客などのサービスや医療・介護の手伝い、古くなったインフラの点検−−。ロボットの活躍の場が、広がっている。インターネットとつながったり、センサー機能が向上したりしたことで、知能や動作が飛躍的に進化しているからだ。日本では、労働力不足を補い、老老介護など深刻な社会問題の解決に役立つとの期待が高まっている。一方で、軍事利用や失業を引き起こすのではとの懸念も。人間とロボットの共存する社会はできるのか。試行錯誤を続ける開発現場を取材した。
◇星新一さん目指す人工知能 歴史が得意、図形は苦手
「ネコは魔物というから、やりきれない」「宝物を当てた、といった感想を抱く人も多い」−−。これらの文章は、ショートショート(掌編小説)で知られるSF作家・星新一さんの作品1000本をデータベースとして搭載した人工知能(AI)「作家ですのよ」が生み出した。「作家ですのよ」は2012年9月から、小説の勉強をスタート。まだストーリーになっていないが、最近では、星さんのシュールな世界をほうふつとさせる言葉選びをするようになった。
生みの親は、公立はこだて未来大教授で人工知能学会会長の松原仁さんら11人の研究者。松原さんは「人間の知能は感じて、考えて、行動する。小説を書くことで人工知能も感性が扱えることを示したい」と意義を語る。今年は新人作家として文学賞に応募することを目指している。
人工知能の研究は1950年ごろ、コンピューターの誕生とともにスタート。コンピューターの処理能力や記憶容量の向上、インターネットによる情報伝達の高速化を受け、2010年ごろから、飛躍的に進んでいる。
国立情報学研究所などによる人工知能「東ロボくん」は、21年度の東京大合格を目指している。高度な言語、統計処理能力や検索システムを駆使して、問題と教科書などのデータを照合、解答を探し出す。世界史、日本史や漢字が得意な一方、図形の問題が苦手だったり、一般常識に欠けたりといった課題があり、14年秋に受けた予備校主催のセンター模試の偏差値は平均より下の47.3。まずは16年度の大学入試センター試験で高得点を取るべく猛勉強中だ。
◇工場のアーム、部品よりわけ 生産量大幅アップ
ロボットの目がどんどん良くなっている。物の形や位置を、複数のカメラで立体的に把握する3Dセンサーの高性能化、低価格化がここ数年で急速に進んでいるからだ。