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海潮鏡 作者:田村 虎之亮

1 伊丹の拒絶

日々の生活の中で「あの時こうすればよかった」や「あれはよかった」
といった感情が現れることが多々あった。それを胸の内にしまっておくことに限界を感じたのだ。「これを文章にしてみたい」と思い立ち「海潮鏡」という題名で、毎日 あるいは週に一度 と不定期で連載していこうと思う。
伊丹という人から先日twitter上で拒否なるものを受けて衝撃を受けた。と、同時に動揺も少しあった。一年余り、それなりに親しく交流していただけあって驚きを隠せなかった。
 私は彼女のことを苗字は知らないが「伊丹」と密かに呼んでいた。理由としては、言動があるドラマに出てくる「伊丹」と言う男に少し似ていたからだ。ただ、私が彼女の前でそう呼んだことは一度もなかった。
 伊丹はどちらかと言えば長身で、少なくとも私よりは背が高かったような気がする。顔はうまく思い出せないが、声は少し高かった記憶がある。頭脳はすぐれ、私よりも頭は切れていたので一種の天才かもしれない。ただ、病むことが多く、私だけでなく周りの人の手を焼いた。そこで私が年上ということで、世の中のなんとやらを教えてやろうと、何と言ったか忘れたが何か言った。すると、「年下だからと舐めるな」と言われ、それ以後、私は彼女に何も言わないことにした。「さわらぬ神にたたりなし」と自分に言い聞かせた。
 私とは一度顔を合わせたことがあるのだが、私自身、異性と待ち合わせすることが初めてで、何をどうすればいいのかわからないまま時間を無駄に過ごし結局一言も話さないまま終わってしまった。(声は咳で確認をした。)その後また会う約束をしたものの再び会うことは無かった。
 最後に連絡が来たのは去年の3月で、それ以後連絡が途絶えた。twitterをやっていると聞いたのでフォローしたものの放置状態だったが、先日ある友人の呟きを遡っていると彼女のidが出ていた。私はこいつはおかしいと思い、彼女のHPへ行ってみると、私はブロックされていたのだ。私が何かしたのかと思い彼女の呟きを見てみるもののそれらしきものは見つからなかった。ブロックされる心当たりは全くなく、身に覚えがない。一体私が何をしたのだというのだろうか。もっと細かくツイートを遡れば見つかるかもしれない。いや、やめておこう。終わったことだ、いい収穫はない。
 私は少し悲しかった。それは、まだ実際に話していないという未練があったからだろうか。
 いずれにせよ、私は彼女の住んでる地域、自宅からほんの100㎞あまりなのだが、行かないことにした。いや、行ってはいけない。そんな気が、するのだ。決して立ち入ることが許されない。黒い領域だと。
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