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【スポーツ】

青学大が復路も制す 史上初の10時間50分未満で完全初V

2015年1月4日 紙面から

第91回箱根駅伝で総合優勝を果たし、胴上げされる青学大アンカーの安藤悠哉=東京・大手町で(代表撮影)

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◇第91回 箱根駅伝<復路>

 ▽3日▽箱根・芦ノ湖〜東京・大手町の5区間109・6キロ▽出場21チーム▽晴れ 気温マイナス5・6度 湿度84% 南東の風0・3メートル

 青学大が10時間49分27秒で初の総合優勝を飾った。優勝は史上16校目で、2012年に東洋大がマークした10時間51分36秒(コース変更で参考記録)を上回り、初めて10時間50分を切る大記録を打ち立てた。往路4位の駒大が11時間0分17秒で2位。昨年総合優勝の東洋大は11時間1分22秒で3位。4位が明大、早大が5位になった。

 青学大・原晋監督(47)の目に涙はなかった。笑顔だけがあった。大学は関東ではない愛知県の中京大、社会人時代も「箱根駅伝を見たこともなかった」。夢舞台と無縁だった男は「脱サラ」し、監督就任から11年で青学大を初優勝に導いた。しかも、2012年の東洋大が記録した10時間51分36秒の記録を大幅に上回る10時間49分27秒の快記録を打ち立てた。

 往路、復路、総合で新記録を樹立。パーフェクトな優勝に「想像以上」とうなった。そして、胸を熱くしたのは監督就任時を思い起こした時だった。会見では「いろいろなことがあった」とつぶやいた。中国電力に入社するも競技生活はけがにも泣かされ、5年間で終わった。しかし、悔しさをバネにして、省エネ空調機の売り上げトップの自称「伝説の営業マン」になった。

 サラリーマンとして輝いた時、強化を図る青学大から監督就任の要請を受けた。胸の奥にしまっていた陸上への熱い思いが再びわき出した。だが、安定した職を捨てることに誰もが反対した。ただ1人、母の房子さん(78)だけが「やるんだったら日本一になりなさい」とそっと背中を押した。この日、母の言葉を達成した原監督は「ずっと心に秘めていた」と吐露した。しかし、船出は困難の連続だった。

 「10年で優勝争いをするチームをつくる」と大学側にプレゼンしたという。だが、1年目の現実は部員が街で泥酔して警察から連絡が入るなど走る以前の問題だった。成績が残せず、解任危機にも廃部の危機にも直面した。「自分と選手がお互いに傷をつくりながら改革した」。正面からぶつかり、寮、トラックなど環境を整備。選手にはサラリーマン時代に培ったノウハウを伝授。自ら課題に立ち向かい、改善する力を養わせた。

 11年の積み重ねが、5区間での区間賞、独走Vとして実った。胴上げに備え、86キロから81キロに減量したが、高々とは舞えず「準備不足だったかな」と笑った。脱サラから11年。「箱根を走っていないド素人監督」と自らを評す新進気鋭の指揮官は、歴史に名を残す名将への扉を開いた。 (占部哲也)

 

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