ホンダはどうだろう? S660の排気量アップモデルだとすれば、駆動方式はミッドシップである。ミッドシップには物理的に二つの問題点がある。一つは駆動輪の直前というボディ剛性のキーとなる場所に、エンジンを搭載するための大穴を開けなくてはならないので、剛性を上げるのが難しい。しかもこちらも素材や構造に凝ってコストアップすることは許容できないだろう。ボディ剛性不足はサスペンションの動きを阻害するので、高次元の走りは難しい。
もう一つは前輪荷重の不足だ。タイヤは一定の限度内において、重量がかかる程グリップが上がる。つまりフロントに重量物がないミッドシップは前輪を十分に働かせる条件が限られているのだ。その条件とはブレーキで前輪に十分に荷重をのせていることだ。サーキットの様な前方の様子がよく解っているケースは良い。予めブレーキングでフロントの荷重を上げておけば、FRより鋭いコーナリングが可能になる。
それはF-1の世界では1957年のクーパーが起こした革命によって明らかなのだが、ロードカーで同様の革命に発展しなかったのは前輪荷重依存性による柔軟性の低さが問題となるからだ。先がどうなっているかわからない公道でスポーツドライブをするには、いつでも前輪が働ける状況にあるFRのスイートスポットの広さに太刀打ちできない。
正直な感想を言えば、今のマツダ・ロードスターはスポーツカーとしてあまりにも正しい。真っ向勝負したくてもすでにロードスター・ブランドは世界的に確立しているし、ズラせば前回と同じ轍になる。ロードスター越えは極めて難しいのだ。
新時代の戦いはどうなるのか?
しかしながら、当のマツダ自身も次なるロードスターを作らなければならない。そしてそれもまたND越えを義務付けられる。大変な戦いになるだろう。
次世代のキー技術は、おそらく摩擦撹拌接合と呼ばれる新接合(溶接)技術だ。コマの軸の様なものを金属面に押しつけながら高速回転させる摩擦熱で、金属を柔らかい固体状態にして、グルグルに混ぜ合わせて接合する技術だ。融点まで上げて液状化させないため、熱による素材の特性変化が起きにくく、また素材同士が混じり合うことによって、高強度が実現できる。従来のスポット溶接の様に裏表両側から電極を当てる必要がないので片側からだけでも接合が可能で、接合部位の自由度が高い。