円の価値:11月、42年ぶりの低水準 変動相場制移行後
毎日新聞 2014年12月18日 21時04分(最終更新 12月19日 01時19分)
日銀が18日に発表した、円の総合的な実力を測る11月の「実質実効為替レート」は70.25となり、1973年1月の68.88以来、約42年ぶりの低水準となった。73年2月に変動相場制へ移行してからは最低で、円の総合的な価値は、対ドル円相場が1ドル=約300円だった当時と同程度まで弱まっていることになる。
実質実効為替レートは貿易の上での通貨の競争力を見る指標。2010年1月を100として、数値が小さいほど通貨安を示し、輸出に有利に働く。主要な輸出相手国との為替レートを貿易額に比例して調整(加重平均)し、物価の変動も加味して算出する。物価を考慮するのは、物価が安い国の方が安く製品を作れて競争力が高くなるためだ。
円の実質実効為替レートは、日銀による大規模な金融緩和で急激な円安が進むにつれて低下。11月は、日銀が10月末に追加緩和に踏み切ったことを受け、対ドル円相場が1カ月で8円程度も下落し、実質実効為替レートも一段と低下した。
過去40年で最も輸出に有利な状況のはずだが、「生産拠点の海外移転や新興国企業の技術力向上」(エコノミスト)などを背景に、輸出数量の伸びは緩やかにとどまっている。一方、海外旅行や輸入には逆風で、原材料を輸入する企業などの負担感は対ドル円相場で見るより増している可能性がある。
日本損害保険協会の桜田謙悟会長(損保ジャパン日本興亜会長)は18日の記者会見で「実質実効為替レートは(85年の)プラザ合意以前の非常に安い状態になっている。これ以上安くなると日本全体にとってマイナス面が出てくるかもしれない」と述べた。【柳原美砂子、朝日弘行】