年年末年始の期間、1年を振り返る特集を配信していますが、ここでは去年Fashionsnap.com内で話題になった今後の活躍が期待される国内ブランドを紹介。ネットで流行している「打線を組んでみた」形式でまとめてみました。
2015年に注目したい期待の若手国内ブランドベスト9
1番・センター:「ミーンズワイル(meanswhile)」
若手離れした圧倒的なクオリティー。次世代メンズブランドの旗手となれるか
「身体に最も近い道具」「デザインは目的ではなく手段」をブランドコンセプトに掲げるミーンズワイルは、服は衣装ではなく道具であると言い切り、実用的でタウンユースなアイテムを展開。「メンズデザインを追求するとアウトドアプロダクトに行き着く」と言われたりしますが、デザイナー藤崎尚大氏が「ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)」で経験を積んだということもあってか、アウトドアウェアのような機能性を追求した服作りを得意としています。次世代メンズを牽引するブランドになってほしいという思いも込め、打って走って守れる1番・センターに抜擢。
2番・セカンド:「マラミュート(malamute)」
ジャーナリストや批評家が注目、森栄喜が撮影したムービーでも話題に
「装苑」で副編集長を務めた西谷真理子氏(2015東コレ日誌「女子の強気」なお一層。)、批評家の蘆田裕史氏(ゆるふわ東コレ日記1日目──メディアの特性)が取り上げるなど、2015年春夏シーズンに業界で注目集めたマラミュートは、ニットに特化したウィメンズブランド。編みで柄を表現することが得意のブランドで、デザイナーの小高真理氏は「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」や「ジェニーファックス(Jenny Fax)」のニットも手がけています。自身のブランドを展開しながら他ブランドも手がける器用さと小高氏自身が小柄な女性で俊敏そうだなというところから2番セカンドというポジションにしました。
3番・ショート:「フィースト バイ ゴミハヤカワ(feast by GOMI HAYAKAWA)」
「シンデレラバスト」というフレーズで一躍時の人に。デザイナーの仕事を再定義?
AAAからAサイズの"シンデレラバスト女子"に向けた商品を展開、ハヤカワ五味が手がける「feast by GOMI HAYAKAWA」の2ndコレクション公開の記事ツイートが16,072リツイートを記録した大学生デザイナーハヤカワ五味氏が手がけるフィースト バイ ゴミハヤカワを3番に抜擢しました。フィースト バイ ゴミハヤカワは、胸の小さい女性に向けたランジェリーを展開しているブランドで、ハヤカワ五味氏は多摩美術大学の1年生というので驚き。「品乳」「シンデレラバスト」の名づけ親として知られており、「ピーチ・ ジョン(PEACH JOHN)」創業者の野口美佳氏に注目されるなど話題を集めました。「デザインは出尽くしてしまった」という言葉は業界にいれば誰もが一度は耳にしますが、そういった状況を鑑み、キャッチャーな言葉とネット(SNS)を使うなどしてデザインの領域を拡張させた同氏の既存の概念に因われない柔軟な発想力=柔らかいグラブさばきや社会にインパクトを与えた=打撃力などを理由に今回の選出になりました。
4番・ファースト:「ハトラ(hatra)」
着用できるこたつの記事が18,000リツイート突破。めざましテレビに紹介されるなど注目の的に
「着用できるこたつ」の記事がFashionsnap.comの年間リツイートランキングでベスト5に入ったことで4番打者に選出。ハトラは、長見佳祐氏が2010年に立ち上げたファッションブランドで、今年注目された記事のような話題性のあるアイテム製作を主戦場にしているのではなく、実は「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」や「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」のコレクションピースが展示された「Future Beauty 日本ファッションの未来性」展に出展するなど、ハイファッションの文脈で語られ評価されているブランドです。「部屋の居心地を持ち歩きたい」という理念のもと、人と社会の境界線について考え、ひきこもり生活をしている人がその居心地の良い空間を外にも持ち出せるような心地良く安心できる服をデザインしているということで、運動量が少ないポジションのファーストに抜擢しました。ちなみ1月放送の嵐の番組に着用できるこたつ「kotatsu parka」が登場するとのことです。
5番・キャッチャー:「ディウカ(divka)」
堅実さを武器に好調をキープ。着実に海外展開も進める
モード服が売れないと言われる中、着実に売り上げを伸ばしているディウカ。デザイナー田中崇順氏とパタンナー松本志行氏が2011年に立ち上げたウィメンズブランドで、スペインの大手アパレル「マンゴ(Mango)」が主催するコンテスト「Mango Fashion Awards 4th Edition」の10人のファイナリストに選出されたキャリアを持つ実力派です。立ち上げから毎年200%の成長率をキープしており、パリでや香港でも展示会を行うなど精力的に活動しています。得点力=売り上げ好調ということと、デザイナーの田中氏の体型が良いことから5番・キャッチャーにしました。
6番・ライト:「タマキ フジエ(TAMAKI FUJIE)」
初のショー開催、アレキサンダー・マックイーンの下で経験を積んだ実力者
立教大学卒業後、アントワープ王立芸術アカデミーを経て、セントラルセントマーティンズ美術大学ファッションプリント科に入学したデザイナーの藤江珠希氏。在学中にアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)の下で研修し、2013年春夏からタマキ フジエを展開しています。色の置き方や異素材を組み合わせた服作りに定評があり、今年は同大賞のアマチュア部門最終審査会とプロ部門のジョイントショーで初めてランウェイショーを経験。ショー後には「ショーはもういいかなと思いましたね(笑)」と語った藤江氏。そんな同氏の控えめなところから6番・ライトにしました。
7番・レフト:「トキコ ムラカミ(TOKIKO MURAKAMI)」
モード界の有識者から高評価、将来性は随一
2014−15年秋冬コレクションがデビューとなるトキコ ムラカミは、村上登希子が手がけるウィメンズブランドで、村上氏は文化服装学院卒業後、セントラルセントマーティンズ美術大学に入学。卒業後フセイン・ チャラヤン(Hussein Chalayan)のデザインチームでアシスタントを務めました。デビューから間もないということでまだまだアイテムの型数は少ないですが、国内モード界の将来を担う逸材と評価する業界人もいます。その将来性から、メジャーでも活躍した松井秀喜氏が読売ジャイアンツで一軍デビューを果たした7番・レフトという打順・ポジションに抜擢しました。
8番・サード:「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」
東コレで堂々デビュー。ユナイテッドアローズの栗野宏文氏も注目?
ロンドンのセントラルセントマーティンズ美術大学出身で、ミキオサカベで経験を積んだ青木明子が手がける超新星ブランドのアキコアオキは、ミキオサカベの坂部三樹郎、「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」を手がける山縣良和がプロデュースする「東京ニューエイジ」でデビューを飾り、渋谷109横でファッションショーも行いました。「ファッションを生きる行為そのものと捉え、それを纏うひとの生き方や姿勢が感じられる衣服を提案」するブランドで、今シーズンは抑圧された女子校をイメージして制作しています。4番ファーストを目指して欲しいという思いから8番・サードにしたのですが、ブランドを拡大していくため同氏は「生産背景などをしっかり整えていきたい」としっかりビジネスの側面も見据えており、今後の動向に注目が集まります。
9番・ピッチャー:「ストフ(STOF)」
安定感抜群の独立系の雄、来年はいよいよ本格的に海外進出?
今年10周年を迎えるため若手の括りに入れにくいストフですが、インディペンデントブランドの雄ということで抜擢。安定した売り上げとそれが可能にするデザイナー谷田浩氏の幅広い活動にも注目。ストフに加え、谷田氏は「ベッドサイドドラマ(bedsidedrama)」と「ストラマ(STORAMA)」というファッションレーベル、「THOUSAND LEAVES」というプロダクトレーベル、「ポエトリーブックス」という出版レーベルも手がけており、「たぶん、この国で一番楽しいファッションの展示会」と謳った新進気鋭ブランドが集まる「SITE OF INCIDENCE」の主催もしています。幅広い活動=多彩な球種と安定感抜群なところから、技巧派エースピッチャーをイメージしました。
いかがでしたでしょうか?国内には多くのクリエイティブなデザイナーがいて、今回紹介したブランドもその一部に過ぎません。主観的な内容になった部分もありますが、この記事をきっかけに紹介したブランドの服を手に取り、袖を通して頂ければ幸いです。