2014年は狂ったように読み物を求める時期とKindleなんてもう知らない見たくないってなる時期と交互にきて、平均するとそこそこ活字は読んだ気がする。でも途中で投げ出したのも多いかもしれない(電書は投げ出すのが簡単で、しかも他のを読み始めてしまうとあんまり残してることに気付かない)。
とはいえ、おすすめの何冊!とあげられるほども読んでないので、感想書いておきたかったけど結局どうもしなかった本をいくつか書き記しておくことにする。人間は案外すぐに忘れちゃうので、未来の自分のために。
- 文化系のためのヒップホップ入門
- 作者: 長谷川町蔵,大和田俊之
- 出版社/メーカー: アルテスパブリッシング
- 発売日: 2011/10/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「文章に喩えるならロックは純文学の単行本でヒップホップはTwitter」「個々の表現の優劣というよりTLでやりとり重ねてくおもしろさ」「セックスとかドラッグとかのハッシュタグで気の利いたこと言ってフォロワー増やすゲーム」「なるほどRTでディスりあうわけね」ってくだり最高だな~
— もぐもぐ (@mgmgnet) March 4, 2014
気に入った曲のイケてるビートをまるっとサンプリングで二次創作、いかにイケてるリリック載せられるか勝負、スラング使ってディスりあい、妙に強い出身地意識、ガンガンミックステープをタダで配ってフリーミアム、で超いんたーねっと
— もぐもぐ (@mgmgnet) March 4, 2014
例えるなら「万葉集」なんだよ、イケてるビートとかリリックを“本歌取り”するデータベース使った遊びなの、「ヒップホップはあくまでみんなが万全と考えていることを気の利いた言い回しでラップできれば勝ちってゲームなんですよ」、なんてキャッチーな切り口をはさみつつ、白人文化黒人文化がどう影響しあってるの?結局過激なディスりあいは何が目的なの?テクノやハウスとどうつながったの?ヤンキーのものなの、エリートのものなの?女性ラッパーはどういう扱いなの?ロックとヒップホップが思想的に決定的に違うのはね、日本ではこういう風に捉えられてきてるけどね……などなど発祥のアメリカ本国から日本の話まで、文化的社会的政治的な多種多様なポイントをざざっと洗っていく。
対談を元にしてるから読みやすいし、「ヒップホップは少年ジャンプ」「プロレス」「お笑い」なんて、理解できるワードや概念を散りばめて比較しながら文化としてまるっと解説する。合間にアーティストや曲の名前も山ほど出てくるし章ごとに大量にディスク紹介があるから聞き始めるとキリがない!楽しい!
専門用語が多すぎるんですよ。僕もヒップホップに興味を持つようになて面白かったのは、例えば「レペゼン」て言葉はわりとよく知られているけど、「このトラックはイルでドープだよねえ」とか普通にいいますよね。それ何語だよっていう。そういう独特の言い回しがあって、面白いけど閉鎖的でもある。
これ冒頭の部分なんだけど、そうそうそうってなって一気にテンションが上がった。ヒップホップよく知らないけどなぜか謎のイメージだけが先行してる…って人の視点も含めて拾ってくれる。わたしがヒップホップに興味をもったのはライムベリーとかlyrical schoolとかラップするアイドルを好きになったのが最初で、メインストリームはなんか怖くてとっつきにくそう…と思ってたけどこの本はそういう人にも優しかった。
70年代の終わりにストリートの一角で若者の遊びとして密やかに始まったものがいろんなものを巻き込んでいつのまにかひとり歩きして商業的に成立していく、という過程にぞくぞくする。私はボーカロイド文化のことを考えながら読んだ。一段下に見られているというか、まぁ所詮アマチュアの内輪の音楽でしょ、というところからいろんなものがスタートするんだなと思う。ヒップホップや音楽の話をしているように見えて、もっと広く大きく、自分が好きなものに引きつけて考えられて読んでてとっても楽しかった。超おすすめ。
- 初音ミクはなぜ世界を変えたのか?
- 作者: 柴 那典
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2014/05/15
- メディア: Kindle版
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大学生の春、渋谷のセンター街で「メルト」が流れてびっくりしてたら一緒にいた友達に「知ってるの?誰の曲?」って聞かれたことを思い出す。「え!? ボカロ曲ってこんなに公の場で当たり前のように流れる感じでいいの!?」って思った、ニコニコ動画自体の知名度も今よりずっと低かったあの頃。今はカラオケランキングやらオリコンやらでボカロ曲が上位を占めるのが当たり前だし、才能を生まれる場所として認知されていて、文化は市場はこうやってできていくんだってことを目撃できているってすごい。
「世界を変えた」というのは言い過ぎ――という声もあるしまぁわかるけど、でも世界って、主観だから。世界が変わったと思ってる人はいるから。ボーカロイドはツールでもブームでもなくてカルチャーになってるのが、見ていて聞いていてわくわくする。
やっぱりこのCM、何度見ても好き。「たくさんの点は線になって」。(……でも育てたのはYouTubeじゃないじゃん、とは思ったしこれからも何度だって思うけど!!)
- よろこびの歌
- 作者: 宮下奈都
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2014/03/07
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世界は68億の人数分あって、それと同時に、ひとつしかない。いくら現実逃避したところで、ここで私は生きていくのだ。
うーん、いざ説明しようと思うと困っちゃう。なんだろう、高校生のときってある日突然世界の真理がわかるじゃん。大きな事件とかドラマとかなくたって、本当にどうでもいいタイミングでパッと目の前が開ける瞬間があるじゃん。そういう小説。背筋が伸びる。泣いても笑っても怒っても投げ出したくなっても境遇を呪っても誰かを恨んでも、自分の人生を生きてくれる人は自分しかいないのだ。
- 聖の青春
- 作者: 大崎善生
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/07/18
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29歳で人生を閉じた天才棋士・村山聖の人生の記録。どこまでがフィクション(脚色)でどこからがドキュメンタリなのか分からないけど、そんなのは問題じゃないくらい、生粋のゲームプレイヤーとしての高潔さにやられる。大崎さんのもったいぶっててガラスみたいな水晶みたいな文章がとてもよく似合う。読み進めると止められなくて生活に支障が出た。
しかし、天才の中のほんの一握りの天才しかプロになれなくて、子どもの頃に運命付けられた相手と何度も何度も何度も同じように盤を挟んで向かい合う、って、何その世界漫画でしょ、いやむしろ神話?って感じなわけですよ。わたしの中で将棋は黒子のバスケにめちゃめちゃ近いわけであって……(というとお前は何を言ってるんだと高確率で言われますが本気)。
やっぱり個人的には圧倒的に電王戦に興味があるのでまた3月が楽しみです。
知らないしわからないけど将棋を教えてもらうのが楽しい話 - インターネットもぐもぐ
- 幻の近代アイドル史
幻の近代アイドル史: 明治・大正・昭和の大衆芸能盛衰記 (フィギュール彩)
- 作者: 笹山敬輔
- 出版社/メーカー: 彩流社
- 発売日: 2014/05/15
- メディア: 単行本
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公演を主体にしてる人たち、要するに「ライブアイドル」をピックアップしてるから視点がわかりやすい。アイドルおたくが読んだらくっそwwwwってなると思うし、昨今のアイドルあるいはアイドルブームはクソ、ってdisってる人が読んだら明治時代から一緒かよって絶望できると思う
— もぐもぐ (@mgmgnet) June 23, 2014
宝塚歌劇初期の有名ヲタ、45歳評論家による「東京では1人も好きな女優なし、いま名古屋にいるが、気に入った芸者1人もなし、ただ遠く宝塚にわが瀧川未子あるのみ!」ってお言葉、かなりコピペ力高くてアツい
— もぐもぐ (@mgmgnet) June 29, 2014
戦前のマジ恋“アイドルヲタク”の生態に迫る「幻の近代アイドル史」 - インターネットもぐもぐ
骨の髄まで超ミーハーなのでみんなが熱狂してるものになんでも首を突っ込みたいと思ってまた1年生きてた。それぞれの熱源を絶対に否定はしたくない、できれば一緒になってお祭に参加したい、と思ってそういう意味では真剣でいるつもりだから、金や情熱を注ぐ対象がくだらないって思われてもわたしは好きだし、同じように好きな人たちのことも好き。ヒップホップもアイドルもそうだけど、メインストリームからはある意味軽んじられがちな、下に見られがちな「くだらない」文化をきちんと見つめて解説して読みといてくれるものに元気出るし好んでるんだなってことが書きながらわかった。
2015年も「信仰の現場」をたくさん見たいし行きたい知りたいよ~~!というかここ数ヶ月新しいものを学んでいないのでフラストレーション。2013年は毎月1つ新しい何かに手を出すことを目標にしていたのでした。
今興味がある世界はゲーム実況(女の子たちの熱狂の根源をもっとちゃんと理解したい)、ディズニー(パークヲタにもいろんな視点があってすごいと聞いて)、Wikipedia(主なき戦争の世界)、ロードバイク(沼に落ちていく様をもっと仔細に聞きたい)、フォント(ハマるとどうなるの!?フェチズムにぞくぞくしたい)、アメコミ(作品としての魅力も二次創作の話もものすごく興味ある)……あたりなので教えてくれる人いたらお声かけください。それ以外でももちろんいいです。布教されたい欲。超前のめりに話を聞くのでぜひお茶してください。
- 作者: ナンシー関
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1997/06
- メディア: 文庫
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2014年の振り返りはまた改めて。今年も元気です。