ドイツ:東独由来の州政権に波紋 メルケル首相ら不快感

毎日新聞 2014年12月16日 13時22分(最終更新 12月16日 13時40分)

独テューリンゲン州のボド・ラメロウ首相=ロイター
独テューリンゲン州のボド・ラメロウ首相=ロイター
ドイツ・テューリンゲン州
ドイツ・テューリンゲン州

 【ベルリン篠田航一】ドイツ東部テューリンゲン州で今月誕生した「左派政権」が波紋を呼んでいる。旧東ドイツ政権与党の流れをくむ左派党から、1990年のドイツ統一後、全国16州で初となる州首相が選出されたためで、メルケル首相や中立的立場のガウク大統領が不快感を表明するなど懸念が広がっている。

 ベルリンの壁崩壊から25年が経過した現在も旧東独地域は失業率が旧西独より高く、低所得者層の支持を集める左派党が一定の勢力を維持している。9月のテューリンゲン州議会選で第2党となった左派党は、11月に社会民主党、緑の党との左派連立で合意し、12月5日には左派党のボド・ラメロウ州議員団長(58)が州首相に選出された。第1党はメルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主同盟だったが、他党が連立を拒否した。

 左派党の州首相誕生に中央政界は敏感に反応した。メルケル首相は「左派党政権は悪いニュースだ」などと左派党を攻撃。かつて東独で反体制運動を主導した元牧師のガウク大統領も「東独で生きてきた私の世代にとって、受け入れるのは困難だ」と述べ、中立な立場の国家元首としては異例の特定政党批判を繰り広げた。

 メルケル首相が左派党に神経をとがらせる背景には、国政への影響を懸念する党内事情もある。首相率いる民主同盟は、国政で姉妹政党・キリスト教社会同盟、中道左派の社会民主党と3党で「保革大連立」を組んでいる。テューリンゲン州で実現した「左派連立構想」は総選挙の度に浮上するが、国政では一度も実現していない。仮に国政でも実現すれば、民主同盟は野党に転落する可能性があるため、懸念を強めている。

 一方、ラメロウ氏は州首相選出後、東独時代に弾圧された民主活動家らに謝罪し、懸念払拭(ふっしょく)に努めている。左派党は旧東独与党・社会主義統一党の後継政党と社会民主党最左派が合流して2005年に統一会派を組み、07年に正式結党した。

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