パナマ共和国における
「ノベ・ブグレ先住民自治区の資源保護に関する法律(2012年第11号法)」 及び「鉱物資源法改正法(2012年第13号法)」について < メキシコ事務所 高木博康 報告 >
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1. 鉱物資源法改正法等の改正の道筋(1) 2011年1月13日、商工省が国会に鉱物資源法の改正案を提出。 (2) その後、Cerro Colorado銅プロジェクトが所在する地域の先住民ノベ・ブグレ族、環境保護団体等が主要国道を封鎖する等の抗議活動を展開。 (3) 2月14日、「鉱物資源法改正法(2011年第8号法)」が成立。抗議活動が行われている中で強引に法律が制定されたことで、抗議活動が一層激化。 (4) 2月14日、マルティネリ大統領は、政令第30号によって、大統領任期中の2014年6月までCerro Colorado銅プロジェクトを凍結するとともに、ノベ・ブグレ自治区での鉱業開発を行わない旨の公約を提示。 (5) ノベ・ブグレ族による反対運動は収まりを見せず、大統領は第8号法を廃止する旨約束し、国会の審議を経て、第8号法を廃止する旨を規定した第12号法が3月18日に成立。 (6) その後、国会議員とノベ・ブグレ族との対話が度々の中断や抗議活動等を経ながら継続。 (7) 7月、野党のロサス議員がノベ・ブグレ自治区での鉱業開発を制限する法案を国会に提出。 (8) 10月、パナマ国会商業委員会において、与党のエルナンデス議員提出の鉱物資源法改正案の審議が開始。この法案の審議の中で、野党のロサス議員は、この法案に外国政府が鉱山開発に関与することが可能な規定が盛り込まれていることを批判。また、商工省のバレラ鉱物資源局長は、「この法案の目的は、違法活動を禁止する効果的な措置として罰金を引き上げること、ロイヤルティ等を引き上げ、周辺住民の生活改善に寄与することにある。」と法案を擁護。 (9) 10月28日、商業委員会において、ノベ・ブグレ族代表が、同自治区での鉱山や水力発電に関連した一切の活動を禁止する法律の制定を要求。その後、政府と先住民代表との話し合いで鉱物資源法改正案とは別の法案を作成することで合意。 (10) 2012年1月25日、商業委員会において、「ノベ・ブグレ先住民自治区の資源保護に関する法律」が承認。しかし、当初法案に記述のあった同自治区内での既存の鉱業コンセッションを取り消す旨の規定が削除されていたことから、「Cerro Colorado鉱山開発公社法(1975年第41号法)」に基づき、Cerro Colorado銅プロジェクトの開発が行われる可能性が残るとして、2月にかけてノベ・ブグレ族が抗議活動を再開。 (11) 2月5日、インターアメリカンハイウェーを封鎖しようとしたノベ・ブグレ族、環境保護団体等と警察が衝突し、市民に死者1名(警察側にも6名の負傷者)が出たこと、警察が携帯電話の電波を中断させたこと等に反発が強まり、道路封鎖による抗議活動が激化。このため、パナマ国内の物流が停滞し、生鮮食料品の不足等、パナマ経済に影響するような事態へと展開。 (12) 2月10日、商業委員会、政府及び先住民代表との間で、ノベ・ブグレ自治区内の既に許可を受けている鉱山の探鉱・採掘コンセッションを全て取り消すこと及びCerro Colorado鉱山開発公社法を廃止することで合意。一方、ノベ・ブグレ自治区内にその一部が掛かっている水力発電プロジェクトの取扱いは引き続き協議事項となった。 (13) 3月5日、ノベ・ブグレ自治区に一部位置する水力発電所の計画を一時中断し、水力発電所計画の実施には自治区等での住民投票を必要とすることで合意。その後、内務大臣が水力発電所計画を予定通り実施する旨発言する等の混乱はあったが、この合意に基づき法案は修正。 (14) 3月26日、「ノベ・ブグレ先住民自治区の資源保護に関する法律(2012年第11号法)」が成立。 (15) 4月3日、「鉱物資源法改正法(2012年第13号法)」が成立。 2. 「ノベ・ブグレ先住民自治区の資源保護に関する法律(2012年第11号法)」の概要
この法律は、17条から成り、その各条の概要は以下のとおりとなっている。 3. 「鉱物資源法改正法(2012年第13号法)」の概要について
今回の主な改正点は、(1)外国政府又は公的機関等が間接的に鉱業権を取得することを可能としたこと、(2)ロイヤルティ及び地表税の引上げ、(3)罰則の大幅な引上げ及び(4)地元自治体への利益の配分の増額である。 表1. 2012年第13号法による外国政府、公的機関等に対する鉱業権の扱いに係る改正点
Cobre Panamá銅プロジェクトに参加する韓国鉱物資源公社(KORES)は、LS-Nikko社とともにパナマ法人Korea Panamá Mining Corp.(KPMC)に出資し、加Inmet Mining Corp.80%出資、KPMC 20%出資のパナマ法人Minera Panamá社が権益を取る間接的な形態であるため、1963年鉱物資源法には抵触するものの、2012年第13号法には抵触せず、韓国政府も今回の改正で満足しているとのことである。
表2. 探鉱コンセッションに適用される面積(ha)当たりの地表税(第210条)
(注1)1B(バルボア)=1US$ 表3. 採掘コンセッションに適用される面積(ha)当たりの地表税及びロイヤルティ (第211条)(クラスU(貴金属を除く金属鉱物(注2))の場合)
(注2)銅、鉛、亜鉛等の鉱山の場合 表4. 採掘コンセッションに適用される面積(ha)当たりの地表税及びロイヤルティ (第211条)(クラスV(漂砂型貴金属鉱物(注3))の場合)
(注3)砂金等の場合 表5. 採掘コンセッションに適用される面積(ha)当たりの地表税及びロイヤルティ (第211条)(クラスW(非漂砂型貴金属鉱物(注4))の場合)
(注4)金鉱山、銀鉱山等
(3) 罰則の大幅な引上げ(第12条、第21条、1963年法第318条、第318条-A条を追加) 1 本法律の規定に従って認可を受けていないにもかかわらず、鉱区の探鉱を行った場合、1,000 Bから10,000 Bまでの罰金 2 該当する鉱業権を保有せずに採掘、移送又は選鉱を行った場合、10,000 Bから250,000 Bまでの罰金及び採掘、移送又は選鉱を行った鉱物の没収
第21条 違法に採掘された金属鉱物又は非金属鉱物を購入又は移送した者は、1,000 Bから10,000 Bまでの罰金及び購入又は移送した鉱物の没収により処罰される。 @ 監査料の導入及びそれを用いた鉱物資源総局の機能強化 A 閉山計画 B 環境規制への適合 C 先住民自治区内での広報、自治区法規の遵守等 D 先住民への社会的影響を考慮した環境影響評価 E 労働安全衛生 F 環境被害の予防と修復 G 環境庁への環境監査の実施の依頼 H 環境庁による処分の際の鉱業権の停止等 I 閉山時に要した費用の支払い J 採掘コンセッションの契約期間の短縮 K 各種申請手数料、保証金の引上げ 4. CAMIPAの見解と今後の見通し2012年5月2日、CAMIPAモラレス事務局長に対し以下のとおりインタビューを行った。 (質問1)鉱業への反対派の中にはパナマ全体で鉱業を中止すべきだと主張している者も存在している旨報道されているが、Cobre Panamá銅プロジェクト等のCerro Colorado銅プロジェクト以外のプロジェクトへの影響如何。 (回答)影響は無い。反対派も一連の抗議活動に疲れている。3月上旬に政府と合意が得られて以来、抗議活動はすっかり収まった。特に、Cobre Panamá銅プロジェクトは、先行するPetaquilla金鉱山により、鉱山が地域に利益をもたらすことを地元コミュニティが理解しており、問題無く進むであろう。 (質問2)今回の「鉱物資源法改正法(2012年第13号法)」の評価如何。 (回答)パナマの鉱業が如何にあるべきかとの議論無しに、政治的に作られた法律であり評価し難い。ロイヤルティ、罰金等の値上げが中心であり、2011年第8号法にあったような政府が監査を行う仕組みや閉山対策、環境対策も入っていない。また、価格の高い金よりも銅の方がロイヤルティが高いといったおかしな点もある。 (質問3)CAMIPAが「ノベ・ブグレ先住民自治区の資源保護に関する法律(2012年第11号法)」は憲法違反だと主張している旨報道されているが、事実関係如何。 (回答)私自身がマスコミに対し主張している。また、弁護士の中にも同様の主張を行う者がいる。憲法で天然資源は国民のものとされているのに、その利用の判断を一部の地域の者だけが行うのはおかしいというのが主張の根拠である。 (質問4)ノベ・ブグレの先住民が鉱業開発に反対する理由如何。 (回答)政府への不信感であろう。パナマの経済が発展する中で、先住民はその恩恵を得ていないと感じている。特に、マルティネリ大統領は、昨年来の鉱物資源法を巡る混乱もあり、話をすると「判った、判った。」と言うが、実際には何もしてくれないと信頼を失っている。なお、同大統領は全国民の支持を失っており、政権発足当時80%あった支持率は、政権の汚職の問題もあり20%台となっている。 (質問5)Cerro Colorado銅プロジェクトの今後の見通し如何。 (回答)マルティネリ大統領の任期中(2014年6月までであるが、支持率が低くそこまで持つかといった意見もある)は、何ら進展しないであろう。今後、Cobre Panamá銅プロジェクトの開発が進展するので、同プロジェクトの周辺のコミュニティが恩恵を受けるのを見て、ノベ・ブグレ族の中の世論が変わることに期待する。現在でも鉱業開発に賛成する者も相当数存在しており、そうした者が過半を超えれば、Cerro Colorado銅プロジェクトも動くようになるのではないかと思う。 おわりにパナマ共和国は、銅の大規模プロジェクトがCobre PanamáとCerro Coloradoの2件存在しており、メキシコ事務所にも同国の鉱物資源法改正等に関する問合せが多い。残念ながら、本レポートで紹介したとおり、Cerro Colorado銅プロジェクトは当面進展しそうに無いが、引き続き、両プロジェクトに関連する情報を収集、提供していきたい。 |
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