日銀の佐藤健裕審議委員は4日午前、高知市で開いた金融経済懇談会で講演し、10月31日に日銀が決めた「量的・質的金融緩和の拡大」の効果について「限界的な効果の逓減に留意する必要がある」との考えを示した。追加の金融緩和によって、先行きの金利の一段の低下が見込まれるとしながらも「名目金利はすでに歴史的な低水準にあり、実質金利も大幅なマイナスとなっていることを踏まえると、経済・物価に対する限界的な押し上げ圧力は大きくない」と語った。加えて、金融緩和の効果は資産買い入れが進むとともに累積的に強まるものであると説明。効果は長短金利水準に表れているとして、追加金融緩和の必要性は「コストとベネフィットを勘案すると乏しい」と指摘した。
短期金融市場で続いているマイナス領域での金利形成についても言及した。「実体経済面に何らかのゆがみをもたらしたり、金融不均衡の蓄積につながったりしないか、注意深く見守っていく必要がある」とした。預金金利やMMF(マネー・マーケット・ファンド)やMRF(マネー・リザーブ・ファンド)など広義の決済システムへの影響にも注視する考えを示した。
金融緩和の継続期間についてはかねての主張を展開した。「『物価安定の目標』はもともと柔軟、かつ上下にアローアンス(許容幅)のある概念と考えている」と従来の考えを強調した。「物価は経済の体温であり、中銀が直接に操作可能な変数ではない」と指摘し、「特定の期間内に特定の物価上昇率を目指すという硬直的な考え方には違和感がある」と主張した。そのうえで「仮にそれが実現できない場合、中銀の信認は低下のリスクにさらされる」との見方を示した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
佐藤健裕、日銀