[PR]

 全国の新聞社や通信社の幹部らが集い、新潟市で15日に開かれた第67回新聞大会(日本新聞協会主催)。新聞5社の社長が登壇した研究座談会では、新聞の信頼回復をめぐって活発な議論が交わされた。

 座談会の冒頭、朝日新聞社の木村伊量(ただかず)社長が「吉田調書の報道の取り消しをはじめ、一連の混乱を招いた。新聞業界全体に対する信頼を大きく損ねる結果になり、深くおわび申し上げたい」と陳謝した。

 日本新聞協会会長の白石興二郎・読売新聞グループ本社社長は、2年前の座談会で、iPS細胞移植に関する自社の誤報について謝罪した経験を振り返り、「朝日の今回の事例も含めて非難できる立場ではない」と述べた。一方で、現在の自紙を含めた新聞が朝日を批判する状況は「きわめて異例」としながら、「慰安婦問題は国際的な影響が大きいことから、我々も紙面を通じて発信しようと考えている」と話した。

 新聞の相互批判について、新潟日報社の小田敏三社長は「メディアの全否定につながるような攻撃、誹謗(ひぼう)中傷も起きている。新聞界が混乱しては、なおさら信頼を失う」と懸念を示した。神戸新聞社の高士薫社長も「新聞界の信頼回復に逆行することが行われている。悲しい。堪忍してほしい」と訴えた。

 この指摘に対し、毎日新聞社の朝比奈豊社長が「販売の現場でもかみしめる必要がある。この大会の出席者は共通認識としてもったほうがいい」と発言。これを受けて、読売・白石社長は、読売の販売現場の一部で、朝日の慰安婦報道の特集直後、「千載一遇の好機」と檄(げき)を飛ばしていたとし、「報告を受け、即刻とりやめさせた」と明かした。

 信頼回復の取り組みについても多くの意見が出た。

 毎日・朝比奈社長は「(朝日の問題は)他山の石にしなければならない」と指摘。報道の内容に外部から批判があった場合に対応する第三者機能の強化、率直に意見が言い合える職場環境づくりなど、「各社で対策をとることが信頼をこれまで以上に高め、回復する道だ」と話した。

 神戸新聞・高士社長は、記事を書く際に都合が悪い話を遠ざけ、結果偏った記事になることが「我々にも身に覚えがある」と明かした。「記者は正義感に燃えたときほど、バイアスの落とし穴にはまる。バイアスをどう排除しながら公正な報道をするか。新聞記者全員に課せられているテーマだ」と述べた。

 新潟日報・小田社長は「信頼は記者の不断の努力、一行一行の積み重ねでしか得られない」と、記者の日々のふるまいの重要さを説き、「朝日の問題を契機に、もう一度自分たちのジャーナリズム活動の原点を見つめ直したい」と語った。

 また、産経新聞社の熊坂隆光社長は会場から挙手して発言。冒頭の朝日・木村社長の発言で慰安婦問題について触れていないと指摘し、「新聞の信頼を回復するという朝日の姿勢に、疑問を禁じざるを得ない」と述べた。

 朝日・木村社長は「第三者委員会の結果を尊重したい」と応じた。