▼19. 結婚式(Marriage Ceremony)
ごぉくんとミカさんの記者会見から2ヶ月が経ちミカさんのお腹が目立ち始めた頃、僕ら4人のもとに披露宴の案内状が2通届いた。差出人はもちろんごぉくんとミカさんだった。
一通は親族と学生時代の恩師・友人などが出席するごくごくプライベートなもの、そしてもう一通はTV局のカメラが入る、仕事のつきあいがある人達とマスコミ向けのものだった。
後者だけの出席だろうと思い込んでいた僕らが
(どうして2通?)
戸惑う中ごぉくんは、
「みんなはオレとミカの家族同然だから、神前での挙式にも親族の写真撮影にも入らなくちゃね。」
…と当たり前のようにそう告げると、
「ノープロブレム。ケリーさんともスケジュール調整済みだから。」
とも言ってこの上ないドヤ顔をして微笑んだ。
ごぉくん愛好家の僕=松野慈朗は、「家族同然」と とっくのとうにわかりあってることを敢えてが口にしてくれたことを嬉しく思った。
僕らはごぉくんから、
「両方のの披露宴で、挨拶と余興をしてほしい」
と頼まれた。
TVカメラが入るマスコミ向けの披露宴で僕らは“アイドル エニタイ”として、僕が恋人と出会うきっかけになった連(続)ドラ(マ)の主題歌で、ダンスが最高に上手いごぉくんの同期が振り付けた結婚式の定番曲を歌うことにした。(ちなみに僕は花嫁たっての希望で、姉貴の結婚式でもこの曲を唄った。)
そして、“親族同様の睦しい存在”として出席するプライベートの披露宴でも、やはり歌を唄うことにした。
但し曲はエニタイのものではなく、Atlantic Starrの♪Always♪。
この曲がごぉくんとミカさんの思い出の曲であることを知るのは僕らエニタイだけだったし、だからこそ僕ら自身が唄って僕らだけにわかる暗号めいた祝い方をしたかったのだ。
念のため ごぉくんのご学友たちと余興のお題が被らないかを高校時代からごぉくんの友達である赤坂の局アナに確認すると彼は、
「俺たちはザッキー(=ごぉくん)のバイオグラフィーを収めた手作りDVDを上映して、それをザッキーとご両親に贈ることになってるから。大丈夫、被らないよ。」
…と言ってくれた。
そしてそれは大学卒業後初めて仲間の結婚式に出席したごぉくんが、その類いの映像に涙を流さんばかりに感激する姿を目の当たりにし悪友一同ドン引いたその日から決めていたことなのだと付け加えた。
+++++
僕らは始めはカラオケを使って♪Always♪を唄うつもりだったが、最近銀座のアカペラ・バーに足繁く通っているリーダー(紗夢)の提案でアカペラにチャレンジすることにした。リーダーがそのアカペラバーから借りてきた楽譜と鈴が鳴るような澄んだ歌声が入った音源を使って、僕らはごぉくんに気づかれないよう4人の集合時間を早めては練習を重ねた。
ターゲット(=今回はごぉくん)に隠れてコソコソとサプライズの準備をするのはツアー中のリーダーの誕生祝と同じ要領だったので、らーくんと計と僕は既にお手の物だった。ひとり初体験のリーダーは自分がターゲットだった時のことをを思い出してか、
「ふ~ん。こんな風にしてたんだ…。」
と感心しきりだった。
+++++
そうこうしているうちに瞬く間に1ヶ月が経ち披露宴まで数日を残すところとなった。僕ら4人は仕事合間の空いた時間を調整して、最後の全員練習(…コンサートで言えばリハーサルだよね。)をリーダー行きつけの、件のアカペラ・バーでやることにした。
銀座の片隅にひっそりとあるその店ではママと僕らと同世代であろう女性がバーを貸し切りにして僕らを迎えてくれた。
リーダーと一緒にこの店を見つけたらーくんと、何万回も食事の誘いを断られていたにもかかわらずある日突然この店に連れてこられて以来リーダーに付き合わされ何度も呑みに来ていた計が親しげに二人に挨拶をする後ろで僕は、洋風の造りには不似合いであるはずの肉じゃがやひじき煮が違和感なくカウンターに並べられた様子に実家にいる時のような緩やかな気持ちになり、エニタイブレイク以来急に単独での仕事が増えた(…才能があるから当然なんだけどね。)リーダーがしょっちゅうここに来る理由がわかったような気がした。
僕らと同世代の女性店員はそこの専属シンガーであり且つ僕らが使った音源の澄んだ歌声の主でもあるサキさんだった。
彼女が僕らの初アカペラに神妙に耳を傾けた後、ニッコリ笑って僕らにお墨付きをくれたので、僕は披露宴当日が待ち遠しくなる程の自信がつき、早くごぉくんとミカさんに♪Always♪を聴かせたくてたまらない気持ちになった。
…アカペラを巡っては何故リーダーが銀座のわかりにくい所にあるあの店へ通うようになったのか、はまたまいつもは自分からはしないのにお墨付きをもらえた瞬間自ら進んでサキさんのもとへ行きハイタッチしていたのかなど、僕らのアカペラの出来とは関係のない部分で気になることがあったものの、僕はごぉくんとミカさんがまるで親子…もとい姉弟のようにそっくりに目を細めて嬉しそうに微笑む姿を想像しているうちにどうでも良くなってしまった。
+++++
披露宴当日、僕らは挙式の時間に合わせて会場へ集合した。
今は大阪にいるごぉくんの大親友と、TV局に就職し記者をしているごぉくんの妹さんが受付をする中、祝儀袋を出し、慣れない筆で記帳を済ませた僕らはごぉくんとミカさんの親族に続き神前に進んだ。
神前での挙式は厳かに執り行われ、初めて『三三九度』を間近で見た僕以外の3人はいたく感激していたようだった。僕は姉貴の結婚式以来2度目だったけれど、身近な人が幸せになる姿を近くで見ることはやはり心が温かくなるものだった。
ミカさんの体調を考慮して挙式と披露宴の間が多めに取られていたので、式が終わってから僕らは暫く、親族控室で披露宴の始まりを待つことになった。
控室で僕らは、ごぉくんのご両親、TV局で会うことはあっても擦れ違い様の会釈だけで会話はかなりご無沙汰していた妹さん、今や青春真っ只中の高校生の弟さん(ぼくらが事務所に入った頃は幼稚園児だった)と久々にゆっくり話すことができた。
「大きくなったね~!」
と弟くんに向かって言うリーダーに
「あら、さっくん!すっかり大人になったわね~。」
…と感心している、バラエティ番組中のごぉくんの余計な?発言が原因で僕らの業界では「ファンキーな」と枕詞がつくようになってしまったごぉくんのお母さん。
2世代で感心しあう様子が何だかおかしかった。
そんなこんなしているうちに、花嫁専用控室までミカさんを送り届けたごぉくんが僕らのもとへ戻ってきた。
ごぉくんは撮影係の弟くんに託してあった愛用のビデオカメラを受け取ると、旅行の時の鉄壁ルール同様、自らビデオを回し始めた。
「旅行から帰ってもう一回、お酒を呑みながらみんなで観て楽しみたいんですよねー。」
映画の宣伝のために出演したトーク番組で、ビデオ撮影を欠かさない旅の流儀をそう語っていたごぉくん―。
結婚式も大好きな旅行と同じように何度も観て楽しむのだろう。そして、その酒宴を共にするのは僕らエニタイに違いない…と僕は思った。
ごぉくんが来てから程なく、介添人であるケリーさんの奥さん(元モデルだけあって超キレイ)と主治医のサエさん(ミカさんの従姉でもある)に伴われミカさんもやって来た。
白無垢の打ち掛けで目立たないようにしていたが、ミカさんのお腹は大きくなっていた。数ヶ月後にはごぉくんとミカさんの赤ちゃんに会えるのだ。
「着物、苦しくない?」
ソフトドリンクを渡しながら尋ねる僕に、ミカさんは言った。
「…それがね、カツラの重さを除けばドレスより楽なの。ウエスト調整は自由自在だし、帯が腹帯の役目をしてくれるので多少動いても赤ちゃんも下がらなさそうだから。」
と答えた。そしてそのあとサエさんが付け加えるように言った。
「ミカちゃんは自分で赤ちゃん下げちゃって早産した前科者だからね。産休に入ったことが嬉しくて、臨月間近の身であちこち出掛けた挙句その日の夜丑三つ時に破水してそのまま初産だなんて何ともヤンチャな妊婦でしょう?…それを思えばお腹の赤ちゃんは泳ぎまわれなくて窮屈だろうけど、主治医としては『帯に感謝!』だわ。」
…思いもよらぬミカさんの武勇伝に僕は一瞬びびったが、サエさんもいるし、何よりミカさんが幸せそうだし、万が一のことがあっても大丈夫と頭を振った。
そんなやり取りをしてる中、紋付き袴姿のごぉくんが僕らのもとへやってきた。撫で肩のおかげもあるのか、凄く和装が似合っている。
僕はビデオを構えるごぉくんとその傍らで笑っているミカさんを一眼レフのデジカメに収めた。そのカメラはごぉくん達の結婚会見で僕らを助け、そして真っ先にごぉくんとミカさんを祝福してくれた大御所MCの蔵中さんからクリスマスプレゼントとしてもらったものだった。蔵中さんはかくも高級なこのカメラをなんとメンバー全員に贈ってくれたのだった。
残念なことにカメラを貰ったクリスマスあたりから僕らエニタイは急激に忙しくなってしまい折角のカメラをじっくり使う機会を持てずにいた。ごぉくんとミカさんのおかげで思いもよらずその機会を得た僕は、即席のカメラ小僧よろしく撮影に夢中になった。
写真の撮れ具合を確認していると、メモリーにプライベートで行ったNYと屋久島の写真が入っていた。新品のカメラを持ち忙しい中で短い旅行楽しんでいた頃の僕は、こんなに早くメンバーの結婚式の写真を撮ることになるなんて夢にも思っていなかった。
ぼんやりとそんなことを考えていると僕の後ろのあちこちで
『ピピッ、パシャッ。』
…という音が聞こえてきた。そしてファインダー越しのごぉくんはと言えば、僕の後方を見てげらげらと大笑いしている。
「オレね、学生の頃からずっと旅行やイベントの時『記録係』してきたから手振れ補正無しでもイケてる映像が撮れちゃうんだよねぇ…。」
…とドヤ顔で自慢していたごぉくんだって、
(そんなんビデオ揺らしたらダメなんちゃう?)
…と僕のココロに西の人が降りてきたところでごぉくんの視線の先を振り返ってみるとリーダーとらーくん、そして計までもが蔵中さんから貰ったお揃いのカメラで新郎新婦のみならずカメラ小僧の僕まで写そうと皆おかしな格好をしていた。何だかバラエティ番組で何かやらかしている時のようだった。
ごぉくんの弟はエニタイ5人とミカさんが写せる場所で、ごぉくんが蔵中さんから貰った僕らと同じカメラを構えて、
「『エニタイを撮るエニタイ』なんてウケる~。」
とアニキそっくりに破顔しながら僕らの幸せな時間を写真に残してくれた。
『線香花火の約束』のとき計が言ったようにごぉくんにとっては“一生もん”の大イベントだったにもかかわらず僕らときたら本当に普段どおりだった。いつもと変わらずふざけあっているうちに、いつしか開宴時間になり、ごぉくんとミカさんはウェディングプランナーに促され招待客の出迎えに立った。
お腹の大きなミカさんが花嫁控室まで戻るのは大変だったので、二人は親族控室にあった金屏風の奥で着付と化粧を直した。
エニタイ専属のメイクさんがタイを結んだ正装で白無垢のミカさんの綺麗にし直す姿が僕には新鮮だった。そして彼はミカさんの準備には入念だったが、ごぉくんの準備はさっさと済ませてしまった。仕事では何度も僕らの側に来てパフをはたくのに、ごぉくん用の仕事は完全に『やっつけレベル』だった。
普段とのあまりの落差に計が
「ごぉくんも綺麗にしてあげてよ。」
…と訴えると、メイクさんはどこ吹く風で軽やかに答えた。
「いいのいいの、今のごぉくんは芸能人でも何でもない『ふつー』の花婿なんだから。それに結婚式での『綺麗』はそもそも花嫁のものなんだし。」
説得力のある言葉に僕は妙に納得してしまった。
+++++
仕度を終え、媒酌人のケリーさん夫妻とともに披露宴会場入り口に並んだごぉくんとミカさんが、次々にやって来る招待客に祝福される様子を眺めながら、僕らは社長を待った。
僕らのもとに2通の招待状が届いた頃ごぉくんは、社長宛の招待状を携え社長に『主賓の挨拶』を頼みに行った。しかしながら、元来堅苦しいことが嫌いな社長は、ごぉくんが頼み切る前にその願いを巧みにいなしてしまった。
「挨拶は僕なんかよりずっと前からお世話になってきた学校の先生にお願いしちゃいなよ。僕がDearに会うずっと前から面倒をみてきてくれた人達にね。…言っても、Dearと僕のつきあいはその人達の比べたら微々たるもんなんだから。」
もっともらしく言う社長に二の句が接げなくなったごぉくんは、社長の助言に従い小学校からの恩師に挨拶を頼んだが、どうしても諦められなかったのだろう。ごぉくんは恩師に挨拶を頼んだことを社長に報告し安心させた数日後、ミカさんを社長室へ送り込み、ミカさんの主賓として社長が挨拶をすることにこぎつけた。
「私がこの業界に入るきっかけを作ってくれた上司に是非主賓の挨拶をお願いしたいんです。社長がこういうことがお嫌いなのは存じてます。でも、社長が私を呼んで下さらなかったらごぉくんと私が出会うことも無かったんだ…と思ったら、主賓に相応しい方はいよいよ社長より他にいらっしゃらないと思って…。お願いします。」
娘のように可愛いがっているミカさんに涙目(←これもごぉくんの演出か?)で頼まれた社長はさすがに断れず今日に到った。
日を追うごとにだんだんとミカさんの行動がごぉくんの画策に違いないと確信を深めた社長は、誰彼と無くメンバーをつかまえては愚痴った。
「首謀者はごぉくんに決まってるんだよ。あの子は良きにつけ悪しきにつけNever give upなヤツだから。」
…でも、僕らは社長に対して4人とも同じことを思っていた。
(ふつーの結婚式なんだし、新郎新婦双方の上司を兼ねてたら確実に『主賓』でしょ。)
そして、僕らは『わかっていること』が二つあった。
その一、 文句をいいながらも素晴らしく心のこもった挨拶を社長がすること。
その二、 本当は小さい頃から可愛がってきたごぉくんと娘のようなミカさんを前に挨拶なんてしたら、感極まって泣いてしまうかもしれない自分を、社長自身が至極心配しビビっていたこと。
僕らはそんな社長をよそに、披露宴で社長がどんな挨拶をするのかワクワクしながら今日の日を待っていた。そして、年齢で言えば相当な爺さんなのに、いつもエネルギッシュでパワフルな社長が涙を流す姿を見てみたい気持ちもあった僕たちは、
「負けたヤツが披露宴で一発芸を披露する。」
と約束して、僕とらーくんが『泣く』に、計とリーダーが『泣かない』に賭けた。
即興やアドリブへの瞬発力が皆無な僕松野慈朗は、
(やべえ、絶対泣いてもらわないと…。社長たのむ、泣いてくれ!)
…と真剣に念じた。
+++++
招待客が半数くらい来た頃、オーソドックスな黒の礼服に白いタイを締めた社長がやって来た。他の人と違っていたのは深紅の生バラをコサージュとしてポケットチーフの脇に挿していたことだった。
僕らエニタイも盛装での仕事ではコサージュを欠かさない。何故ならそれは社長の姪っ子で、現在は僕らの所属レコード会社の社長であるユリさんが僕らのスタイリストだった頃に定番化した『お約束』だからだ。
今回の『深紅の薔薇』もユリさんが仕掛人に違いない。
…でも、身内や友達の祝い事など仕事じゃない時にコサージュをつけるなんて若い(…って言うか青い)僕らには気障過ぎて、スタイリスト無しの素の僕ら4人はただ普通に礼服を着ただけだった。
出掛けにユリさんのスタイリングチェックを受け、されるがままにバラを挿される社長の姿は想像にた易く何やら微笑ましかったが、結局はユリさんのスタイリングをモノにしてしまった社長に深紅の薔薇はよく似合っていた。
常々思うことだけど、この人は『いざ』という時には外さず“決める”から本当にカッコイイ。
そんな社長は僕らに手を振ると
(挨拶していくから待ってて)
…と口パクで言い、披露宴会場入口で招待客を出迎えていたごぉくんの肩をとポンポンと叩き、その隣にいたミカさんには流行りのチャラ男芸人のように
「花嫁姿かぅわいいねぇ」
…と嬉しそうに言った。
続いて居並ぶケリーさん夫妻には労いの言葉をかけ、初めて会うミカさんのお母さんとは「お世話になっております。」と初対面の担任教師と保護者のような堅めの挨拶をした。
そして、スタジアムのライブ以来久しぶりに会ったごぉくんのご両親にはひときわ大きな声で
「おめでとうございます!」
…と言い、お父さんの手をがっちり握った。
芸能界では『ごぉくんの親』とも言える社長の言葉にご両親とも嬉しそうに目を細めた。
(線になるまで目を細めるのは佐崎家のDNAなんだなぁ…。)
ごぉくんも、さっき控室で僕らのおふざけを見て笑っていた弟のユウくんもご両親と同じように目を細めて笑っていた事を思い出し僕は確信を深めた。そして僕ら4人は挨拶を終えた社長について会場に入った。
入口付近ではムービーを片手に、首にカメラを携えたユウくんがスタンバイしていた。その姿を見て何故か「家族同然」とごぉくんに言われたことを思い出した僕は彼に言った。
「どっちかやるよ。ごぉくんから“家族同然”のお墨付きをもらってるオレらはユウくん達と同じテーブルに座るんだろうし連携取りやすいから。」
そう言う僕にユウくんは困ったような迷ったような素振りを見せたが、すぐに一眼レフを首から外して僕に渡した。
「じゃあ披露宴が始まるまで写真をお願い。ジロくん、カメラ上手だから。ミカさんなんてジロくんの写真がwebに載る度いちいち「ジロくんの写真好き」って言うんだよ。…オレも好き、ジロくんの写真。」
…と、ユウくんはごぉくん激似の声と話し方で嬉しいことを言ってくれた。特に、
「…オレも好き」
と言った辺りのほっこりした言い方は、ごぉくんが僕らエニタイやミカさんだけでする話し方そのものだった。
僕はごぉくんに誉められている様で嬉しくなった。
僕は側に居たリーダーに
「俺の席に置いといて。」
と自分のカメラを託して、招待客控室から続々とやってくるごぉくんとミカさんの大切な人達に向かってシャッターを切った。その中にはミカさんのアシスタントのあおいちゃんや顔馴染みのごぉくんの悪友たちもいた。
ごぉくんとミカさんがケリーさん夫妻と共に入場までの間どこかへ消え、会場がフォーマルな装いの招待客で彩られたことを確認した僕はユウくんに促され自席に向かったのだが、エニタイが座っているとばかり思っていた親族席にリーダー達がいない。
(3人はどこへ?)
テンパった僕に気付いたユウくんは、そっと耳打ちしてくれた。
「社長さんと一緒に座って兄貴とミカさんを見てあげて。」
…その言葉に新郎新婦席直近の円卓を見れば、社長の両隣にリーダーとらーくんが、計がリーダーの隣に座っていた。僕の席はらーくんの隣らしく、僕の一眼レフが椅子の上にちょこんと置かれていた。
ようやく席についた僕は4人に言った。
「招待状もらった時ごぉくんが俺らのこと『家族同然』なんて言うもんだから、てっきり親族席に座るんだと思ってた。」
「口では言うても、そうはしないところがごぉくんの義理堅いところだよね。」
…と計が言い、そのあとリーダーは(ふふっ)と微笑いながらこう言った。
「…それもそうだとは思うけど、ごぉくんのホントの狙いは別にあるんじゃないのかなあ?ごぉくんて練習出来ない1回こっきりの本番が苦手じゃん。だから俺らを近くにいさせて緊張を薄めようとしてるとかね…。結婚まで連帯責任?―最近何かとごぉくんと一緒に居るらーくんはどう思う?」
らーくんは手の中の♪Always♪の歌詞から顔を上げて言った。
「さすがリーダー、バッチリごぉくんの気持ち読んでんね!実はオレもごぉくんビビってんじゃないかと思ってて。…しっかし俺らもすごいなー。“居る”だけでごぉくんの役に立てちゃうんだから。ほんっと『エニタイ様々(さまさま)』だよ。」
得意気に言うらーくんと、にまにま笑うリーダーを代わる代わる眺めながら社長が言った。
「Guys、ホントに仲がいいねぇ。まるで家族みたい。」
“家族”のところを“カジョク”と有名韓流スターのように発音して茶目っ気を見せ社長は続けた。
「地に足ついた息の長いグルーブをデビューさせてようって話になって『まじめ』だけが共通項だったGuys5人を選んだ時には、まさか今みたいに仲の良さが売りになるなんて誰一人思ってなかったよ。特にサミーと今日主役の花婿は尖ってて、まさに“少年ナイフ”だったから。」
伝説のガールズバンドの名前を混じえて社長は僕ら本人達も知らないデビューの裏話を話し始めた。
社長自ら所属タレントの過去にまつわる話をするなんて珍しい。思いもよらない祝儀話に僕ら4人は耳を澄ました。
デビューするまで5人だけでした仕事はなかったし、2~3才しか年上じゃないのにごぉくんとリーダーはすごく大人に見えたから、他愛ないことにキャッキャする僕と計&らーくんと色が混じるなんて同じグループになっても有り得ないと思っていた。
人当たりは悪くないのに人の懐に入るのには慎重な僕ら5人は、デビュー当時のいい時(=別名:天狗時代)や、その後やって来た不遇の時(=別名:斜陽)を共に過ごし、必死過ぎて隠せなかったたくさんの涙や弱音を共有して今の「仲が良い」エニタイになった。
一体社長はどんな思いでダメな僕らを見ていたんだろう?必死な僕らが気づかぬうちに今日までのレールは敷かれていたんだろうか?
…固唾を飲んで社長の言葉を待っていると突然会場が暗転し、僕らエニタイの♪Unforgettable Days(二人の記念日)♪が流れ始めた。
まだミカさんを知らない頃のごぉくんが書いたラップ部のリリックがマニアの間で
「最高のプロポーズ」
と称賛される、僕ら自慢のラブソングだった。
その曲の謂わばクライマックスにあたる『告白』部分の歌詞とメロディが流れ終わると少しずつボリュームが絞られていき、司会を務めるごぉくんの友人(=例の赤坂局アナです)のナレーションをきっかけに披露宴会場の扉が開けられた。
そこには綺麗な薄桃色 ―なんと表現したらよいのだろう、朝焼けのような朱色やオレンジ色も混ぜたような暖かな色だ― の色打掛に髪を文金高島田からサイドシニョンへ結い直したミカさんと、白い紋付袴に着替えたごぉくんが並んで立っていた。
ケリーさん夫妻に先導され、ミカさんとごぉくんは各テーブルから拍手を贈る馴染みの大切な人達に照れ臭そうにお辞儀をしながら、ゆっくりと花道を歩いた。
僕らの隣のテーブルに座っていた ごぉくんの悪友たちは、
「コングラチュレーション、ザッキー アーンド ミカさん!」
と叫んだかと思いきや、ごぉくんがご両親と3人きりで出掛けた瀬戸内の美術館で「洒落モノみつけたよ。」と僕らに買ってきてくれたものと同じ、桜の紙モチーフが入ったデザインクラッカーを打ち鳴らした。
普通のクラッカーより大きめの爆ぜる音に思わず目を瞑ったあとに見た、ひらひらと宙を舞う紙の桜はとても美しく、何枚かモチーフが載ったごぉくんの白い紋付きはそのピンク色を一層綺麗に見せていた。
わずか5分足らずの間に祝福のシャワーを全身に浴びたごぉくんとミカさんは、曲のエンディングに合わせたように雛壇へ到着すると招待客へ深々と一礼し着席した。
僕は二人の会場入りから雛壇着席までの様子を収めたデジカメのデータを真っ白なテーブルクロスの下でそっとチェックしてみた。ごぉくんもミカさんも、社長もエニタイもケリーさんも、親族のみなさんも他の招待客も、みんなみんないい笑顔だった。
司会の開宴挨拶を皮切りに始まった披露宴は、媒酌人による挨拶と新郎新婦の略歴紹介→主賓祝辞→乾杯を経て、ケーキ入刀まで進んだ。
社長はさすがにスピーチ上手で、とても小柄で、なのにとっても気が強かった出会った頃のごぉくんのことや、ミカさんと初めて電話で話した時のこと、ケリーさんから二人の結婚のことを聞かされた日の驚きをユーモアと心からの祝福を込めて話し壇上を後にした。
涙なんて全く関係のない、僕ら4人が予想した通りの心暖まる祝辞に、(泣く・泣かないの)賭けに負けたと思った僕が罰ゲームの一発芸で何をすればいいんだろうと数少ない引き出しを洗い始めた矢先、リーダーが僕に言った。
「ジロ、ティッシュ持ってる?」
どうしたのかと思い顔を上げるとリーダーの隣にはまるで花嫁の父のように目を赤くして鼻をシュンシュン言わせている社長が目に入った。
僕はリーダーと計にいつ一発芸をやってもらおうか思案しつつ、隣席のらーくんを介してリーダーにティッシュを渡した。
+++++
ケーキ入刀でたくさんのフラッシュを浴びたミカさんとごぉくんはお色直しのため会場を一旦あとにした。次はウェディングドレスとタキシードに着替えてくるに違いない。
二人が戻ってきたらいよいよ僕らのアカペラだ。
(…なーんか緊張してきちゃったなぁ…。)
余興一番手は赤坂の局アナ率いるご学友軍団で、僕らのアカペラは二番手だ。…といっても、余興開始前にキャンドルサービスか何か、新郎新婦が各テーブルを回って挨拶する時間があるはずだから、僕らの出番まではまだ間があるはずだ。
テンパりそうな自分にそう言い聞かせ深呼吸していると隣りから らーくんが僕に言った。
「ね、ね、ジロ。ごぉくんとミカさんが俺らのテーブルに来たらリーダーと計に一芸やってもらおうぜっ!……ジロさぁ、今まさかの緊張モードでしょ。笑っておけばいくらか緊張も解れるだろうし、いつもどおり ごぉくん達も一緒に笑いたいし。」
…そんなやり取りのあと、しばらくしてお約束どおりの洋装でごぉくんとミカさんが戻ってきた。
二人は、ミカさんが今日のために手作りし、皆に見守られる中ごぉくんと一緒にカットしたウェディングケーキを招待客一人ひとりにサーブしつつ各テーブルを回った。…キャンドルサービスならぬケーキサービスだ。ごぉくんイチオシのミカさんレシピのヘルシーティラミス(マスカルポーネチーズの代わりに蛋白質を強化したギリシャヨーグルトを使っている)に色とりどりのフルーツを細かくカットして宝石のようにのせてある、四角い大きなウェディングケーキが列席者人数に切り分けられていた。使われたフルーツの色は僕らエニタイカラーになっていた。ブルーベリーの青、苺の赤、キウイのグリーンとイエロー、巨峰の紫…そしてミカさんが好きなフィグ(いちじく)もふんだんに使われていた。そしていつの間に席を外していたのか、あおいちゃんも仕事の時にかけているワンストラップのエプロンを付け、新郎新婦をサポートしていた。
披露宴用に髪をセットし、フォーマルなドレスで身を包んだあおいちゃんは普段に増して綺麗だった。…あおいちゃんに『恋』をしている らーくんの視線は新郎新婦ではなく彼女に釘付けだった。
まさに食べんとしていた大好物の伊勢海老のテルミドールがフォークから落ちた事にも気づかないくらい ぽぉっとしていた らーくんを不可思議に思ったであろう社長は隣にいる彼の腕をつついて言った。
「ラブちゃん、エビ落としたよ。」
社長に注意されて、やっと我に帰った らーくんに追い討ちをかけるように計が言った。
「それにしても、ほんっとにキレイだよねー。」
…わざと主語は省き、らーくんに目配せしている。
てっきり あおいちゃんの事だと思い込んだ らーくんは、
「…そっかなぁ?いつもと変わらないと思うけど。」
平静を装ってすまし顔で言ったが、言うが最期、リーダーと社長にけちょんけちょんにされる憂き目にあった。
「何言ってんの?ミカちゃんの花嫁姿を見てもなお、“いつもと変わらない”だなんて、いつもの『感動屋ラブちゃん』はどこに行っちゃったの?僕は悲しいよ。」(社長)
「そうだよ!年齢がいったミカさんなのに、すんごくキレイじゃんか!」(←かなり失礼なリーダー)
まんまと計の罠にひっかかった らーくんがテンパった時の口癖である「ゴメン、ゴメン」を言おうと息を吸ったタイミングで、計はすかさず僕に向かって顎をしゃくって、とどめを刺すよう指令を出した。
僕 松野慈朗はお得意の毒舌でらーくん追い込みに入った。
「らーくんさあ、ズバリ聞くけど、一体誰を見てたのさ?俺、ズバリ当てちゃっていいかなあ?」
この構図はあの時…。そう、今まさに結婚したばかりの ごぉくんとミカさんの関係を初めて追求したあの時のようだった。
らーくんはかなりマズイと思ったのか、黙りを決め込むために、かぱかぱとワインを飲んでいる。
「いいよ、白状しないなら俺が言っちゃうからね。社長にもケリーさんにも、あと『彼女』本人にも聞こえるようにでっかい声で。」
ところが啖呵を切る僕を見つめるらーくんの表情がなぜか笑顔になった。
(えっ、何で???)
そう思って振り返るといつの間にかごぉくんとミカさんがそばに来ていた。
らーくんは水を得た魚のように生き生きと二人に向かって言った。
「お二人さん!計とリーダーが見たことのない一芸するから一緒に見てって。
…さあさあ、時間がないよ。負けた二人は究極の瞬間一芸を頼むよ!」
…またしても、メンバーのリアルに進行中な恋バナは煙にまかれてしまった。…俺が絡むとそうなっちゃうのかな。
目の前にいる新郎新婦の『あの時』と同じく納得できない俺を他所に、計とリーダーはざざっと打ち合わせるとまさに初出しの瞬間芸をやってのけた。
…あまりの出来映え(の低さ)に会場が凍った。ひっそりと内輪で盛り上がるつもりが、披露宴会場からざわめきを消すというレアな瞬間を作り出してしまった二人の名誉を守るために敢えて詳しい状況説明はしないが、二人は真顔になった社長に、
「お前ら、エンターテインメントの風上にも置けねえな。」
…と叱責された。
シーンとなった中、披露宴の主役でもありホスト・ホステスでもあるごぉくんとミカさんは、プンプンしている社長に何事もなかったかのように主賓挨拶のお礼を言うと、明らかに他のピースよりフルーツが大盛りになっているティラミスをサーブした。
ミカさんはケーキ皿を社長の側に置きながら心配そうに社長の目を覗き込んだ。
…どうでもいいことだけれど、僕ジロはミカさんが食器を置く時に音が出ないよう指を先にテーブルに着く仕草がとても好きだ。食を生業にするミカさんの謂わば“プロフェッショナル”なこの配慮は、あおいちゃん始めとするMIKA's Kitchen Studioのスタッフ達に確実に受け継がれている。
不安気なミカさんに降参した社長は、もはや計とリーダーに怒り続けることは出来なくなり、ついにはほんわりと笑顔を浮かべ、
「No problem. 'Cause that was also my greatest preasure.」(和意訳:何言っちゃってんの?挨拶は僕の楽しみでもあったんだから、へいちゃらへいちゃら。)
と言ってミカさんに頭を下げた。
あおいちゃんが押すワゴンの上の、社長にサーブされたケーキ皿のあった場所の隣りには、明らかにフルーツが少ない、ぎりぎりエニタイカラーのフルーツ五種とイチジクがのっているだけの寂しいティラミスがあった。(よくもこんなに少なくフルーツを残せたもんだと感心する。)
ごぉくんは、らーくん以外のメンバー(つまりは計、リーダー、僕)にケーキをサーブして回るミカさんとあおいちゃんに気付かれないよう、その寂しいティラミスをなんと らーくんにサーブした。そして社長の時同様、これまた何もなかったかのように
「今日は来てくれてありがとう。余興、期待値MAXで見せてもらうからね!」
…と不必要なくらい にこやかに爽やかに、らーくんへプレッシャーをかけ次のテーブルへと向かった。
(企画スベリってダメダメなパフォーマンスより重罪なんだ…。)
賭けに勝ったにもかかわらず可哀そうな らーくんに同情していると、ごおくんとミカさんの後についていたあおいちゃんがささっと『寂しいティラミス』をフルーツ普通盛りのものと交換した。
いつもに増して綺麗なあおいちゃんは、新郎新婦(特に新郎)に気付かれぬよう、尋常ではない至近距離で(しかも、かがんだあおいちゃんの胸の谷間ががっつり見える近さで)らーくんに
「取り替えます。ピースを多めに準備してきたから大丈夫です。」
と耳打ちすると、何食わぬ顔でミカさんたちのもとへ戻っていった。
らーくんはすっかり素の、一般男子になってしまい、”ONアイドル”時より低めの声であおいちゃんに
「…ありがとう。」
とやっとこさ、お礼を言える、そんな有様だった。
(…もういいっかな。ダダ滑りの罰は十分だし、あおいちゃんバラしなんて俺が今更しなくったって周知だし。)
僕は頬を赤らめ借りてきた猫のようにすっかり大人しくなってしまった らーくんに声をかけた。
「らーくん、ケーキサービスも終わったし、ご学友軍団の余興の次は俺らのアカペラだかんね。歌詞は大丈夫?」
らーくんはあおいちゃんが置き換えたケーキから視線を僕に移すと、
「…そ(う)だね。もっかい(=もう一回)見とくね、俺。」
そのやりとりを聞いていた計は社長に怒られた事も忘れたようにいつもの調子でリーダーに、
「ほら、あんたも歌詞見といた方がいいんじゃないの?愛本さんに歌詞カード借りる?」
と声をかけ、僕らエニタイはまるでPV収録前の楽屋に詰めている時のような、いつもの調子になった。
らーくんは見終わった歌詞カードをリーダーに渡し、リーダーは本番直前にいつも見せる集中度で字面を見つめつつ小さな小さな声で鼻歌を唄った。
+++++
…そんなドタバタを繰り広げながらも僕ら4人はその後、自分達の出番直前だと言うのに御学友軍団の映像作品にすっかり観入ってしまった。
ライブの演出に幼少期の写真を使うことは僕らの業界ではまま有る事なので、ごぉくんの写真も結構な枚数を見てきたと思っていたけれど、御学友軍団の作品には僕らが初めて見る、ごぉくんの写真が沢山使われていた。
沢山の写真に彩られた映像はもちろん、ウィットに富んだナレーションで笑いを取る進行は招待客を釘付けにした。…さすがにごぉくん同様IQ高き御学友軍団だ。
笑いながら映像を観ていたごぉくんのご両親は、彼らのパフォーマンス後、可愛らしい小さなごぉくんと数十年分の思い出が詰まったDVDを贈られ、とても喜んだ。
「まあ!」
…と両手を口にあて感嘆の声を漏らした後、お父さんに寄り添ってリボンを懸けられたDVDを長い間見つめていたお母さんがとても可愛らしかった。
+++++
御学友たちは、余興のあとごぉくんにもリボンのついたDVDを渡すために花嫁・花婿席へ行き、いつの間にか人数分用意されていた小さなグラスにミカさんのお酌を受けビールで乾杯した。
…楽しそうに余興をやってのけたけれど、みな緊張していたのだ。総勢9人が一気にビールを飲み干すと、全員が声を揃えて
「ぷはー。」
…と息を漏らし、思いがけず招待客の笑いを誘った。
司会の局アナくんは仲間たちから、
「頑張れよ。」
とか
「このあとも頼んだぜ。」
とか激励されつつ、司会席に戻ると僕らエニタイをこう紹介した。
「次は新郎の職場の同僚4人組による『音の贈り物』です。
株式会社○○事務所 大月様・愛本様・仁藤様・松野様、よろしくお願い致します。」
…いかにも普通の結婚式らしい紹介に、僕らのボルテージは何故か上がった(笑)。
+++++
局アナ氏の紹介を受け祥吾を除くエニタイ4人は席を立ちパフォーマンスへ向かった。
前へ出るまでの短い間に4人は各々のタイミングでパンっ!と音を発て礼服を正すと、紗夢のG音ハミングに声を重ねて和音を響かせた。
4人を前へ誘ったきり司会者からは何の紹介もない。誰もが訝しく思い始めた中、慈朗がタップシューズで取ったカウントに続き、エニタイ4人のアカペラが始まった。
彼らを「芸能人」と呼ぶとしたら所謂「一般人」的な紹介で、余興の舞台へと誘われたエニタイの4人だったが、?一般人とは異なるキラキラぶりは隠せなかった。
黒いスーツに白ネクタイという、ごくごく普通のシンプルな礼服を着ていても、やはり彼らはそのグループ名のとおり「いつでもどこでも」エニタイなのだった。
司会である局アナくんは4人から言われていた通り、敢えて演目の紹介をしなかった。
歌い踊る彼らの生業から、音楽が流れてくるものと祥悟とミカを含む誰もが思っている中、紗夢は♪Always♪出だしの"B"(ハー)音を数秒間ハミングした。他の3人も紗夢の声に自分たちの声を重ねて、いつの間にか静まりかえった会場には、4人のユニゾンで優しく響いていた。
…タップシューズに履き替えていた慈朗の、4拍のカウント音に続きエニタイ初のアカペラ、♪Always♪が始まった。
聞き覚えのあるメロディー、祥悟とミカは顔を見合わせた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。