IT関税:中韓対立で撤廃合意見送り 日本にもマイナス
毎日新聞 2014年12月14日 10時36分
デジタル製品の関税撤廃を進める世界貿易機関(WTO)の情報技術協定(ITA)改定交渉会合は12日、年内合意の見送りを決めた。年明け以降も交渉は続くが、合意の妨げとなった中国と韓国の対立が解消できるかは見通せない状況だ。日本企業にとって輸出拡大が見込める分野での関税撤廃が期待されていただけに、関係者からは交渉の長期化に懸念の声も上がっている。【松倉佑輔】
「合意の延期は日本にとってはマイナス」。経済産業省幹部は改定交渉の今回の結果に落胆を隠さなかった。米国と中国が今年11月、デジタル製品約200品目の関税撤廃で合意したことで、ITAの改定作業は米中合意に沿った形で一気に進むとみられていた。
しかし、4日からジュネーブで始まった今回の交渉会合では韓国が、自国の競争力が高い液晶パネルも関税撤廃の対象に追加するよう主張。国内産業の保護を優先する中国が受け入れを拒否して交渉は暗礁に乗り上げた。各国は交渉をまとめるため、期日を3日間延長して調整を続けたが「最後まで中韓の歩み寄りは一切なかった」(交渉筋)という。
新たに関税撤廃の対象となる予定だったデジタルビデオカメラなどは日本企業の競争力が高く、今後の成長も見込める分野だ。全世界の取引額1兆ドル(約118兆円)のIT製品の関税撤廃が見込まれ、「日本企業が強みとする分野の関税が撤廃されることは追い風」(電子情報技術産業協会)と関係業界の期待も大きかった。
早ければ来年1月にも交渉会合が再開される見通しだが、合意への道筋は描けていないのが現状だ。
ITAは1997年に発効し、78カ国・地域が加盟。すでに携帯電話など144品目のIT製品の関税を撤廃した。IT技術の進歩に伴い対象品目を広げようと2012年から改定交渉が始まった。