NY原油:60ドル割れ…5年5カ月ぶり 下落歯止めなし
毎日新聞 2014年12月12日 10時25分(最終更新 12月12日 13時26分)
【ワシントン清水憲司】11日の米ニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物市場は、需給のだぶつきが長引くとの見方が強まり、米国産標準油種(WTI)の1月渡しが1バレル=59ドル台に下落した。60ドルを割り込むのは、2009年7月以来5年5カ月ぶり。原油価格の下落に歯止めがかからない状態になっている。
終値は前日比0.99ドル安の1バレル=59.95ドル。国際指標の北海ブレントも同0.56ドル安の63.68ドルまで下落し、5年5カ月ぶりの安値となった。原油価格は、石油輸出国機構(OPEC)が11月下旬に減産を見送ってから下落傾向が強まり、わずか半月で10ドルを超える値下がり。1バレル=100ドル超だった7月末までと比べると、5カ月足らずで4割も下落した。
この日の市場は、ガソリン安で米経済の回復が強まり、原油需要を下支えするとして、いったん61ドル台後半まで値上がりした。しかし、米原油在庫の積み上がりのほか、日中欧などの景気に対する先行き懸念から、本格的な需要回復は見込みにくいとの見方が広がり、再び下落圧力が強まった。外国為替市場で新興国通貨に対してドル高が進み、ドル建てで取引される原油に割高感が出たことも原油安を後押しし、WTIは一時58ドル台に下落した。
市場では「原油価格はフリーフォール(自由落下)の状態」(アナリスト)として、中東や米国など主要産油国が減産するか、世界経済が回復して原油需要が戻るまで、軟調に推移するとの見方が出ている。
原油価格の下落は、日米欧や新興国の消費国にとって、ガソリンなど燃料費の軽減を通じて景気にプラスに働きそうだ。ただ、産油国は財政を原油収入に頼っているケースが多く、経済や政治の不安定化を引き起こす可能性がある。南米ベネズエラは原油安で外貨不足に陥り、思うように輸入ができなくなったため、物価急騰など経済の混乱を招いた。市場では対外債務の返済不履行(デフォルト)を心配する声が強まっている。