棒形ペンライト:「オタ芸」とか…駅で振らないで
毎日新聞 2014年12月31日 07時00分
◇鉄道関係者「緊急信号と誤解」
コンサートなどのイベント帰りの人が、応援グッズの棒形ペンライトを駅のホームで発光させることに、鉄道関係者が頭を悩ませている。列車の運行に支障が出かねないため、イベント当日に駅で注意を呼び掛けているが、周知は徹底されていない。年末年始は各地でコンサートも予定されており、専門家からは「鉄道事業者はもっと問題点を社会に知らせるべきだ」との指摘も出ている。
ライトは主に約10〜40センチの長さで、黄や青、赤などに発色する。棒の中に詰められた複数の薬品の化学反応で光る「ケミカルライト」のほかに電池式のものもある。元々、緊急時の非常灯などとしても使われてきたが、近年はコンサート会場でファンが振り回し、お気に入りのアイドルを応援するスタイルが定着。熱狂的ファンが振り付きで激しくライトを振り回す様子は「オタ芸」(オタクの芸)とも呼ばれる。
一方、鉄道各社では利用客が線路へ転落した場合などに、駅員がホームから「合図灯」と呼ばれるライトを使って電車の運転士に異常事態を知らせることがある。この合図灯の光が一部の棒形ペンライトの光と似ているため、コンサート帰りの客が会場の最寄り駅や乗換駅でライトを点灯させると、運転士が「緊急停止」のサインと誤認してブレーキをかけてしまう可能性がある。
アイドルなどのコンサートが頻繁に行われる「さいたまスーパーアリーナ」(さいたま市中央区)の最寄り駅のJRさいたま新都心駅では、コンサート後にライトを持ったファンがホームにあふれ、駅員がライトをしまうよう注意する事態がしばしば発生。駅を管轄するJR東日本大宮支社(さいたま市)の担当者は「本当に電車を緊急停止させなければいけないケースで、逆にライトと混同して止められないという事態も起きかねない」と懸念する。
東京都内の駅でも、駅員がライトを光らせたままホームを歩いている利用者にカバンなどにしまうよう呼びかけているといい、日本武道館(東京都千代田区)に近い駅の担当者は「年末年始はコンサートなども多いが、駅での使用は絶対に控えてほしい」と話す。