香港:学生、効果的戦略打ち出せず…デモ全面排除

毎日新聞 2014年12月11日 21時44分(最終更新 12月12日 08時35分)

 香港の学生らによる次期行政長官選挙制度の民主化を求める大規模な占拠行動は、香港島の金鐘(アドミラリティ)で占拠エリアを失い、事実上の終えんを迎えた。行動の主体となってきた学生団体は、占拠行動が終わっても別の形で闘いを続けると表明している。【香港・鈴木玲子】

 ◇「別の形で闘い」継続の意思

 11日午後2時(日本時間同3時)ごろ、数千人の警官隊が投入され、金鐘の幹線道路一帯を進み始めた。次々とデモ隊が築いたテントやバリケードを撤去。涙ぐんで現場を去る学生らの姿も。道路西側には約150人の学生や民主派議員らデモ参加者が座り込んだ。午後4時、警察が現場から立ち去るように警告。座り込んだデモ隊が「真の普通選挙を」と書かれた黄色の横断幕を掲げた。「民主主義を今こそ」「我々は帰ってくる」と気勢を上げた。じわじわ迫る警官隊を前に、互いに腕を組んで「非暴力の原則」を貫きながら抵抗。1人ずつ引きはがされる中、拘束されたデモ参加者は手を振ったり、こぶしを突き上げたりして民主化要求への決意を示した。

 9月28日に金鐘の政府本部庁舎前に押し寄せたデモ隊に対し、警官隊が多数の催涙弾を使って学生らのデモ隊を強制排除したことに多くの市民が反発。デモが一気に拡大した。一時参加者は10万人を超す勢いを見せた。「1国2制度」に基づく「高度な自治」が保障されたはずの香港で、中国の巨大な影響力の前に押しつぶされそうになる現実が、多くの市民の共感を得た。

 しかし、民主派の予想をはるかに超えて占拠が長期化。交通網が大混乱し、連日の交通渋滞などで市民生活は大きな打撃を受け、次第に世論の支持が離れ始めた。10月には、政府と学生が初の対話にこぎつけたが、中国が決めた選挙制度改革の原則の撤回はないと突っぱねる政府と、民主的な選挙制度の導入のため中国が決めた原則の撤回を要求する学生側は平行線をたどり、学生側は占拠エリア拡大を呼びかけるなど態度を硬化させた。

 民主派内部は、行動の中心となった二つの学生団体側のほかにも穏健派や強硬派が入り乱れ、統制が取れず効果的な戦略が打ち出せずに迷走。学生らは政府庁舎包囲という強硬手段に打って出たが、失敗した。

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