秘密保護法:市民からチェック困難に

毎日新聞 2014年12月10日 00時50分(最終更新 12月10日 02時02分)

 10日に施行される特定秘密保護法。政府機関による情報収集に違法性が疑われる場合、市民からのチェックが困難になることが問題視されている。不適切な秘密指定の防止の鍵を握るのは内部通報制度だが、参考にした米国との間にさえ大きな違いがあり、実効性を問う指摘も出ている。

 特定秘密には「テロの防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報」が含まれる。

 2010年、警視庁公安部の国際テロ対策に関する文書114点が、インターネットに流出した。国内のイスラム教徒の住所、勤務先、家族、宗教施設への立ち入り状況などプライバシー情報が含まれていた。ある日本人男性(39)は、流出文書の中で、家族がテロリストと関わりがあるかのような記述をされていた。「家族が容疑者扱いされ、子供の情報まで集められた」

 男性らイスラム教徒17人は「違法な情報収集が行われた」などとして東京都などを相手取り訴訟を起こした。今年1月、東京地裁はプライバシーの侵害を認め、都に損害賠償を命じた。都側と原告の双方が控訴し、訴訟は継続している。

 秘密保護法の施行後、こうした情報収集は特定秘密として隠されてしまわないか。男性は「特定秘密の線引きがあいまい。違法捜査が行われても分からなくなるのではないか。恣意(しい)的にレッテルを貼られないか憂慮している」と話す。

 特定秘密の内部通報制度は米国の制度を参考にして作られた。ただ大きく違う点もある。米国の秘密法制を研究する横大道(よこだいどう)聡・鹿児島大准教授によると、米国では職員が秘密指定に疑義を抱いた場合、通報は「奨励され、期待されている」と規定されている。通報したことに対する報復も、禁じられている。

 一方、日本では、漏えい防止を理由に秘密の内容を通報窓口に知らせることが禁じられている。秘密の「番号」で通報したり、内容を「要約」して通報したりすることが求められる。誤って特定秘密の内容を伝えた場合、「過失漏えい」に問われる可能性がある。横大道准教授は「米国は注意深い秘密指定を行わせるために通報の奨励を明示している。これに対し、日本は通報を歓迎していないように読み取れる」と指摘する。【青島顕】

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