英国:バーレーンに恒久的海軍基地 「スエズ以東」復帰へ

毎日新聞 2014年12月09日 20時10分(最終更新 12月09日 20時36分)

英国とスエズ運河
英国とスエズ運河

 【ロンドン小倉孝保】英政府はペルシャ湾岸の島国バーレーンに恒久的海軍基地を設置することで同国政府と合意した。湾岸地域の安定を望む両国政府の考えが一致した。英国は1971年以来、エジプトのスエズ運河より東方の地域で軍事力を縮小してきたが、今回の合意は安全保障政策を転換させたものとして注目されている。

 英国のハモンド、バーレーンのハリド両外相が5日、バーレーンの首都マナマで恒久基地設置の覚書に調印した。ハモンド外相はマナマで開かれた安全保障に関する会議で、湾岸地域の友好国へのメッセージとして「我々は互いに、安全保障上の懸念を共有する」と述べた。

 英BBCなどによると、基地はバーレーンのサルマン港に設置され、建設費約1500万ポンド(約28億円)のほとんどをバーレーン側が負担するという。駆逐艦や空母の展開も可能になる。

 英国は71年にバーレーンから撤退して以降、一部を除き「スエズ以東」で恒久軍事基地を持たず、湾岸君主国の安全保障は、主に米軍が担ってきた。

 しかし、オバマ米政権が安全保障の重点を東アジアに移す考えを示しているほか、米政府高官が今夏、バーレーン反体制組織幹部と会談したことにバーレーン政府が反発するなど、関係がぎくしゃくしていた。

 一方、英軍は今年、アフガニスタンから完全撤退して中東地域での影響力が縮小。また、湾岸の君主国にとっては、過激派組織「イスラム国」の影響力がイラクやシリアで拡大していることで安全保障上の懸念が強まっている。

 こうした中、地域への影響力を高めたい英国と「米国頼り」の状況を変え安全保障の幅を広げたいバーレーン側の考えが一致し、英軍の「スエズ以東」復帰が固まった。

 2011年の中東民主化運動「アラブの春」では、バーレーン政府がイスラム教シーア派住民の民主化要求デモを軍事力で弾圧し、国際社会から批判が出た。今回の恒久基地設置は、英軍によるバーレーン政府擁護の意味合いもあるため、バーレーン内の反体制派や国際人権団体から早くも批判が相次いでいる。

 【ことば】英軍のスエズ以東からの撤退

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