ハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーが監督した映画『アンブロークン』をめぐり、日本社会と米国社会の180度違うムードを現す光景が米ウィスコンシン州にある人口1万4000人の小さな町、チペワフォールズで繰り広げられた。この映画は第二次世界大戦時に日本軍の捕虜になったものの、劇的に生還した米国陸上界の元スター選手ルイス・ザンペリーニ氏(1917-2014年)の実話を描いたものだ。
土曜日だった27日、チペワフォールズの映画館「ミコンシネマ」の3スクリーンは早朝から300人の観客でにぎわった。しわが深い顔に白髪頭で元所属部隊のバッジを付けた野球帽姿の退役軍人とその家族、一般市民らだった。映画館にとって一年で最大の稼ぎ時であるクリスマス・年末休暇のさなかだったが、映画館側が自主的に退役軍人のため特別無料上映スケジュールを組んだのだ。
上映1時間前の朝9時にはポップコーンや菓子類などを用意し、退役軍人に感謝のメッセージを伝えるつつましいレセプションも開かれた。退役軍人だけでなく現役軍人たちもこの日は無料で鑑賞した。一般市民の入場料は10ドル(約1200円)だった。米国の平均的な映画館入場料(8ドル前後=約970円)よりも少し高かったが、入場料の半分はレセプションなどのイベント費用で、残り半分は第二次世界大戦・韓国戦争(朝鮮戦争)の退役軍人がワシントンに行くのを支援する民間後援団体「フリーダム・オナー・フライト」にすべて寄付された。
今回のイベントは、『アンブロークン』を通じて第二次世界大戦の実情をより多くの人々に共有してほしいと願うチペワフォールズ市民のボブ・ビレンさんとシス・ビレンさん夫妻が映画館オーナーのマイク・オルセンさんとコニー・オルセンさん夫妻に提案して実現した。映画館オーナー夫妻も退役軍人を父に持つ。発案者のボブ・ビレンさんは地元メディア「リーダー・テレグラム」に「彼らは私たちのためにいてくれたのだから、私たちも彼らのためにいるべきではないだろうか」と語った。
上映中は終始、退役軍人たちからため息や感嘆の声が漏れた。韓国戦争に参戦した元海軍兵士のリチャード・リーさんは「(主人公)ザンペリーニ氏のように多くの兵士が戦場で簡単には屈服しなかった」と当時を振り返った。