この著者に聞け
2015年01月01日(木) 田村耕太郎

田村耕太郎【第1回】シンガポールから感じる、日本人の相対的な貧しさ

『シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』より

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シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』(PHP新書)第1章 パラダイスの終わりより抜粋

 本書での「アジア」の定義

本論に入る前に、本書における「アジア」が指すところについて断っておきたい。

アジアという言葉の定義は様々だ。2014年に開かれたサッカーの仁川アジア大会には、中近東や中央アジアからも選手が参加していた。2015年に開かれるアジアカップになると、これにオセアニアであるオーストラリアまで加わる。

日本人の実感としては、東アジアと東南アジアを加えた地域を「アジア」と想定しているのではないだろうか。一方、欧米人の感覚だと、トルコより東の地域をアジアと総称していて、アメリカ人の中にはトルコもアジアだと言う人もいる。

この本で私が「アジア」と呼ぶ地域は、具体的には中国、朝鮮半島、台湾等からなる東アジア。および、東南アジアと、インド等がある南アジアを含めた地域のことを指す。この地域の経済や人口の合計が、世界の人口や経済の過半を占めていくのだ。

ただ、東南アジアの中心に位置するシンガポールに滞在していることもあり、意識的にかつ無意識的に、この本においては東南アジアについて強調してある。それは、東南アジアにこそ日本の大きなチャンスを見出しているからである。東南アジアにおける日本のチャンスについてはこの後、詳しく取り上げていく。

ということで、この本ではアジアと言いながら、東南アジアが中心の記述になっていることをご理解いただきたい。同時に、東南アジアで経済や地政学状況を研究すればするほど、中国の影響を無視しえないとも確信させられる。中国の経済的・政治的な影響は、東南アジアで増すことはあっても減ることはないだろう。さらに今世紀中に人口でも経済でも中国を抜くことが予想されるインド経済の影響も、中国ほどではないが、東南アジアで感じ始めている。よって、中国やインドにも言及していることを断っておく。

 東京パラダイスの終焉

シンガポールに居を移して2ヵ月。久しぶりに東京に戻った。東京を2ヵ月近く離れた
のは久しぶりだったので、改めて客観的に東京を見ることができた。

第一印象は、「秋になっていた」ということ。当たり前だが、日本には四季があることを再認識した。毎朝同じような天気と気温のシンガポールでは、季節の感覚どころか曜日の感覚さえも失われてしまう。東京は、観光には最適の場所だと思った。町中が目にもきれいで衛生的で、どんなお店に入っても人々は親切で礼儀正しい。日本にいたら当たり前だと思っていたことに、感謝の気持ちが湧いてくる。

そして東京は、なんでも安い! 食べ物の安くて美味しいことといったら、世界一ではないか。英エコノミスト誌の最新の調査によると「世界一物価が高い」シンガポールから来ると、服もドラッグストアの商品も鮨もステーキも何もかも、クオリティの割に安い。

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