西アフリカでエボラ出血熱が未だに猛威を振るっている。
ギニア、リベリア、シエラレオネの3か国で感染が拡大しているエボラ出血熱について、WHOは2014年12月29日に、感染や感染の疑いがある人が2万人を超えたと発表した。このうち、すでに7842人が死亡している。
日本でも同日に、シエラレオネから帰国後に発熱した東京都内在住の30歳代の日本人男性がエボラ出血熱陰性のニュースが流れた。
エボラ出血熱を引き起こす原因となるエボラウィルスが、最初に発見されたのは1976年にザイールのエボラ川に近い村で出血熱が発生し、何人もの死者が発生した時だ。それ以降もエボラはアフリカの僻地で小規模のアウトブレークを何度も引き起こしている。
それなのに、最初の発見から38年も経た今日でも有効な治療法は確立されておらず、ワクチンすら存在しない。このことは、現在進行中の大規模なアウトブレークに関する報道でも明らかにされている。
現在、1週間に新たに感染する人の数は一時期に比べて減少しているそうだが、それとても患者を徹底的に隔離したり、感染を広げない方法で死者を埋葬したりするなどの取り組みを強化してきた成果に過ぎない。
これが、アフリカではなく先進諸国のどこかで発生したアウトブレークだったならば、もっと早く治療薬やワクチンの開発も進んだのかもしれない。
現に、アフリカから世界中に広がったエイズについては発見がエボラよりも遅かったにもかかわらず治療薬の開発には目覚しいものがある。
現在は事態の深刻さに気づいたWHOや、先進諸国にとっても対岸の火事ではなくなった事態のおかげで、積極的な取り組みが進んでいるものの、アウトブレーク当初のWHOや先進諸国の動きはやはり鈍かったことは否めない。
本書は、エボラウィルスの仲間であるマールブルグウィルスから始まり、先ほど取り上げた1976年のエボラ出血熱と人類との出会いの物語を経て、1989年のアメリカ本土でのエボラウィルスの封じ込め作戦に至るまでを描いたナラティヴ(物語)形式のノンフィクションである。
物語形式で書かれているため非常に読みやすいが、そのせいで常に自分がその渦中にいるかのような感覚に包まれる緊迫感はすごいものがある。
本書に登場する医師や研究者、軍人たちの自らを危険に晒してでもエボラウィルスに立ち向かう姿に胸を打たれる。そして、今この瞬間にも西アフリカの地で懸命にエボラと戦っている人々に想いを馳せる。
本書にはエボラ・ザイール、エボラ・スーダン、そしてエボラ・レストンなど3種類のエボラウィルスの名前が登場する。一口にエボラウィルスと言っても、種類があることを僕は初めて知った。
最も強力なのはエボラ・ザイールで、その致死率はなんと90%であるという(本書執筆当時)。そして現在のアウトブレークを引き起こしているのも、その最悪なエボラ・ザイールだということである。
すでにアフリカから遠く離れた日本でも、この世界中を人々が行き交う世の中ではエボラ出血熱を本気で対岸の火事だと思っている人は少ないのではないだろうか。
それでも、やはり圧倒的にエボラに関する情報は少ない。
空気感染しないと言われているエボラウィルスだが、本書では空気中の飛沫感染をしたとしか考えられない猿の実験も登場している。
誤った情報で混乱しないよう、本書でエボラ出血熱について概要を押さえておくことをお勧めする。
毎年恒例の、JTBによる年末年始(2014年12月23日~2015年1月3日)の旅行動向によれば、今年の海外旅行人数は67万9000人で、過去最高だった昨年には及ばないものの、一昨年の68万1000人とほぼ同水準で過去4番目の水準なんだそうだ。
日本国内におけるエボラの脅威はこんなところからも始まりつつあるのかもしれない。
このブログを気に入っていただけたら、ちょくちょくのぞきに来ていただけるとうれしいです。そして、とっても励みになります。
RSS登録していただける方はこちらのボタンをご利用ください。