天皇陛下は年頭にあたり、宮内庁を通じて感想を発表した。

 2015年は戦後70年の節目にあたると触れ、「この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」とつづった。

 また、東日本大震災から4度目の冬になるとして、「かつて住んだ土地に戻れずにいる人々や仮設住宅で厳しい冬を過ごす人々もいまだ多いことも案じられます」と思いやった。

 2日には皇居で一般参賀があり、天皇陛下は皇族方とともに5回、宮殿のベランダに立つ。成人を迎えた秋篠宮家の次女佳子さまも初めて出席する。(島康彦、中田絢子)

■両陛下の歌を発表

 宮内庁は、新年にあたり、天皇、皇后両陛下が昨年1年間で印象に残ったことを詠んだ歌を3首ずつ発表した。年頭に発表される天皇陛下の歌は例年5首だったが、今年は3首になった。宮内庁は高齢の天皇陛下の負担を考慮して「ご年齢に合った形にした」と説明した。

 天皇陛下は、10月に長崎市で原爆の惨禍を忘れてはならないとの気持ちを込めて原爆落下中心地碑に供花したことや、式年遷宮を終えた伊勢神宮への参拝、豪雨災害に見舞われた広島市を訪問したことを詠んだ。

 皇后さまは、6月に次男桂宮さまを亡くした三笠宮さま(99)の深い悲しみを思う歌などを詠んだ。

 ▽天皇陛下

 〈神宮参拝〉

 あまたなる人らの支へ思ひつつ白木の冴ゆる新宮(にひみや)に詣づ

 〈来たる年が原子爆弾による被災より七十年経つを思ひて〉

 爆心地の碑に白菊を供へたり忘れざらめや往(い)にし彼(か)の日を

 〈広島市の被災地を訪れて〉

 いかばかり水流は強くありしならむ木々なぎ倒されし一すぢの道

 ▽皇后さま

 〈ソチ五輪〉

 「己(おの)が日」を持ち得ざりしも数多(あまた)ありてソチ・オリンピック後半に入る

 〈宜仁親王薨去〉

 み歎きはいかありしならむ父宮は皇子(みこ)の御肩(おんかた)に触れまししとふ

 〈学童疎開船対馬(つしま)丸(まる)〉

 我もまた近き齢(よはひ)にありしかば沁(し)みて悲しく対馬丸思ふ