尚弥から刺激　強気になった田口

　田口は下馬評を覆す素晴らしいボクシングだった。身長で１３センチ、リーチで１３・７センチ上回る有利さを見事に生かし切った。テクニック面でもジャブを主体に終始リード。基本に忠実な戦略も功を奏した。

　序盤からジャブが途切れなかったのも良かった。スタミナに相当の自信があったのだろう。懐に飛び込もうとする相手を最後まで寄せ付けず、気持ちも終始前に出してプレッシャーをかけ続けた。それが８、９回に奪ったダウンにつながった。

　前夜はかつてのライバル、井上尚弥がＷＢＯ世界スーパーフライ級王座を奪取し、２階級制覇に成功した。田口はその井上尚と２０１３年８月、日本王座を懸けて戦い、判定で敗れた。今回の試合を見ていると、井上尚のボクシングに感化されたのではないかと思った。序盤からプレッシャーをかけ続けた強気の戦いぶりに進化が見て取れた。井上尚に続く見事な新旧交代劇。甘いマスクに人気も出そうだ。　（格闘技評論家）