実家からカニが届く。有り難い。さっそく今晩、夫婦で毛ガニを頂こう。
恒例企画の、今年の本。私の10冊。対象となるのは「今年、出て、読んだ本」であり、どちらかというと趣味の読書で読んだ本。おかげ様で著者、編集者の方からたくさんの本を頂くのだけど、軽く読める本は、その瞬間、ためになっても残らない感じがするし。一方、「これは精読しなくちゃ」と思う本は、先送りにしてしまうので。例えば、ピケティは彼の本も、解説書も両方読めていない。
普段は、実は古い本、ちょっと昔の本を読んでいたりする。本にはターゲットと機能というものがあるわけで。面白さを期待しないで読む本もある。研究をする上で、読まざるを得ない本というものもある。
今年は、本の絶対数はこれまでよりも少なめだった。『リクルートという幻想』にかかりっきりだったので、資料ばっかり読んでいた感じ。あ、この本、ぜひ年末年始に読んでね。
物書きとしては、書き下ろし2冊、リニューアル版1冊だった。これでも多い方なのだけど、一時の月刊常見状態を脱出できてよかったな。
来年は、確定しているのが1月に修論をまとめなおした『「就活」と日本社会』(NHKブックス)が、3月に自己啓発本(!)が出るのだけど、それ以外はゆるやかにご依頼を頂いているものの、未定。まあ、「2015年から書き下ろす本」という意味では1冊、2冊だな。大学の先生の仕事も始まるし。
本当は、最後の方に書こうと思っていた話を最初にもってきてしまった。というわけで今年の10冊。
まず、これ。田中康夫先生の『なんクリ』から33年経ったのだな。実は、田中康夫先生とは先日、対談している。対談というよりは、終始先生に圧倒されたのだけど。その時に、この本を私は全然読み込めていないことに気づいた。
実は、とても深いと思う。
この33年間の日本社会の変化、政治・経済や雇用・労働や消費の変化が凝縮されているような。
「記憶の円盤」「微力だが無力ではない」という言葉が印象に残る。衆議院選挙の前にリリースされたのも意味深だ。対談原稿を仕上げる過程で、もっと読み込むことにしよう。
ライフスタイルの変化がわかる本という意味で、これも参考になった。率直に、前作『ユーミンの罪』の方が、取っ付き易く、面白かった。ただ、それは私がユーミンファンだったからだ。そうか、クラスのあの子はオリーブ少女だったのか、と思ったり。
なお、酒井順子さんと、西森路代さんと鼎談した。これも来月公開。お楽しみに。
趣味の読書としてはもちろん、仕事の参考にもなる吉田豪の最新作。いや、読み物として最高なのだけど、私は仕事の強化書として読んだ。そして、ジャーナリズムの劣化、営業力の低下ということを考えたり。聞き出す力の強化が必要だ。
これは、選抜度の高い大学の文系、学部1年生向けの本のはずなのだけど、十分難しかったし、歯ごたえのある本だった。哲学の話をしているのだけど、物を見る視点、読書するヒントになるような。
川村元気による日本を代表するクリエイターたちへのインタビュー集。うーん、こういう企画、やりたかった。ジェラシーを感じる1冊。天才と言われる人たちの苦労話、迷走期の話が面白い。
海老原さんの久々の新作。彼の最近の興味関心は、日本と欧米の雇用・労働、本当は何が違うのかという問いに向いているようだ。あとは、働き方というか、働かせ方というか。彼が本格的に論壇デビューしたのは5年くらい前だったと記憶しているが、当時、彼の論と対立していた人も、最近の論考を読むと考えが変わるのではないかな。とはいえ、本人に直接伝えたが、最後の方の選抜に関する話はやや端折っている感じかな。
日本の労働の現実を知る上で、いつも濱口桂一郎先生の本は時に物議や論争を呼びつつ、大変に参考になる。メディアでは若年層の問題ばかりが取り上げられるが、実は長年の論点は中高年。ここと向き合うと、諸々解決の処方箋が見えてくるような。
キャリア教育を担当する教員として、大変に有り難いのが、この本。営業の仕事の醍醐味がよく分かる。就活生は、就活を前にこれを読むとよいだろう。もっとも、最近、大手企業、有名ベンチャーの若手の営業、いや営業課長、部長クラスと会っていても「甘いなぁ」と、私なんかが感じるくらいだから、営業に関わる人は読んだ方がいいと思う。身近な話と深い話、わかりやすいエピソードと、理論がいい感じで並んでいて、キャッチーかつ深い。新書っぽい本だと思う。
楠木建の対談集。タイトルが象徴しているように、経営者とのぶっちゃけ話で、楽しく読める。「経営学
」と「経営」は、繋がっているのだとは思うけど、違う。その「経営」の、ある意味現実がここにある。もちろん、この手の経営者の「想い」に関する話というのは気をつけて付き合うべきではあるのだけど。
最後はこれ。大学の講義録。音楽に関する知識を整理できるだけでなく、大学での講義作りのヒントにもなった。
来年はもっと読むよ。書評もがっつりやるよ。