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運用には大きくわけてアクティブ運用とパッシブ運用という二つの世界があります。この二つは対立する価値観を体現しており、その関係でお互い仲が悪いです。

アクティブ運用とは、ファンドマネージャーの能力に頼ることで良い運用成績を出すことを目指すやり方を指します。

パッシブ運用の「パッシブ」とは「受動的」という意味で、自らの判断に基づき積極的に動くのではなく、あくまでも株価指数などをなぞることに徹するやり方を指します。このためインデックス(=株価指数)ファンドという呼び方をされる場合もあります。

いま株価指数との対比という文脈では、殆どのアクティブ運用が株価指数に勝てないことが知られています。さらにアクティブ運用はファンドの運営コストが割高である場合が多いので、パフォーマンスが劣るだけでなく、費用面でも割高という、ダブル・パンチになるケースが多いのです。

そういう格差を反映して、近年、米国ではパッシブ・ファンドの伸びが著しいです。

ETFはパッシブ運用の一形態です。ETFは取引所に上場されている上場型投資信託であり、その取引形態からくる様々なアドバンテージのおかげで、インデックス・ファンドより更に人気になっています。

パッシブ運用は相場観を必要としないので、ありていに言えばファンドマネージャーは必要ありません。だからパッシブ運用の目論見書でファンドマネージャーとして名前が出ている人の実際の仕事は、管理者のような受け身の仕事で、相場を考えたり銘柄を分析することなど、我々が普段、ファンドマネージャーという言葉を聞いて思い浮かべる仕事ではないのです。

実際、米国の機関投資家営業マンはパッシブ運用のマネージャーを相手にすることはないし、パッシブ運用のマネージャーがアクティブ運用のマネージャーのようにチヤホヤされることもありません。普通、パッシブ運用の担当者のお給料はアクティブ運用のファンドマネージャーより遥かに安いです。

投資銀行がバイサイドから稼ぐフィーの8割近くはアクティブ運用のマネージャーが落とします。

ただインデックス・ファンドやETFを使えば、個人投資家が実現しようとしている運用の効果(=例:株価指数についてゆくこと)の大部分が達成できてしまうことから、ある意味、ファンドマネージャーは「要らなくなっている」という風にも解釈できるわけです。

実際、ETFの場合、伝統的に運用会社の仕事と考えられてきた、株式注文の発注などの仕事すらありません。

よく「10年先に無くなっている仕事」とかが議論されるけれど、ボンヤリしていたらファンドマネージャーが絶滅品種になるリスクもあるのです。ついでに言えば、そのファンドマネージャーを飯のタネとしている、機関投資家向けセールスなんてのも、今後は要らなくなる業種かも知れません。

そんなわけで運用や証券の世界ではETFは「要注意人物」的な扱いを受けることが多いです。自分の存在を、否定しかねないからです。

でも個人投資家の目線で考えれば、効率化、低コスト化をアグレッシブに追及するETFのような商品の登場は朗報であり、活用の仕方を真剣に考えるべきです。

そんなわけで楽天証券のレポート&コラム欄で「海外ETFデビュー講座」の連載をはじめます。

第一章 ETFとは?

第二章 良いETF、悪いETF