2015年はどうなる?
メーカー直撃インタビュー:シグマ編
SD1後継機の予定あり!
Reported by 田中希美男(2014/12/31 07:00)
トピックの多かった2014年のデジタルカメラ業界だが、早くも気になるのは翌2015年の動向。変化する市場の変化に、デジタルカメラメーカー各社はどう動くのか。
現在発売中のデジタルカメラマガジン2015年1月号では、「8メーカー直撃! 2015年はどうなる? 168の質問」と題した特集を掲載。各社のキーマンに、今後の展開をインタビューしている。その内容に誌面で未掲載の回答を加え、デジカメ Watchで再構成したのがこの連載だ。各社の回答から、メーカーそれぞれの考え方を読み取ってほしい。
シグマ編では、株式会社シグマ 代表取締役社長の山木和人氏に話を聞いた。(編集部)
聞き手:田中希美男氏
他のメーカーのインタビューはこちら↓
2015年はどうなる?メーカー直撃インタビュー バックナンバー
Q:「写真とカメラ」でもっとも大切なことは?
A:写真はフィルム時代の時もデジタルになっても基本的には変わっていないと思います。記録メディアもキャプチャーするデバイスなどは変わっていますが、時代の記録性という写真の価値そのものは変わっていないのではないでしょうか。カメラはまず、優れた画質で確実に記録していくことが大切だと考えています。
Q:カメラを企画、開発するときに大切にしていることは?
A:優れた画質で記録できるカメラでしょうか。カメラを企画するときにはやりたいことはいろいろありますが、シグマとしてはリソースのこともあり、できることが限られています。それにシグマが他社と同じことを行っても意味がありません。特長のある画質、その方向に絞っていくつもりです。
Q:レンズが交換できるカメラの魅力は?
A:システム性、拡張性ですね。レンズを変えることでまるっきり違うカメラとして使えます。時代を超えて古いレンズや古いカメラと組み合わせて使ったりするおもしろさもあります。
いっぽうで、レンズ交換式という視点とは逆の、ボディ交換式という時代になっていくのかもしれません。シグマがやり始めたマウント交換サービスがそうで、レンズそのものは長く使い続けていただくという考えです。
Q:一眼レフカメラ、ミラーレスカメラの、それぞれの魅力と優れた点とは?
A:一眼レフカメラの魅力は、光学ファインダーを覗いた時の美しさと反応の速さです。EVFが早く反応できるようになったとしても、スポーツや野生動物などぎりぎりの一瞬を捉えるようなシーンでは光学ファインダーのほうEVFよりも優れていると思います。
しかし、いずれは、一眼レフがマイナーになりミラーレスがメジャーになる時代がくるような気もします。一眼レフカメラがなくなることは決してないでしょうが。
ミラーレスカメラの魅力はAF、AEが正確なことです。とくに像面で測距するAFは高画素化をすればするほど有利です。ミラーショックもありません。一眼レフに比べると小型で軽量です。ミラーレスのこれからの方向としては高画質化とコンパクト化の2つの道に分かれていくような気もします。
Q:レンズ交換式カメラはこれからどのように変化し、進化していくでしょうか?
A:光学ファインダー式の一眼レフとしては、高速シャッターが切れる事や高速連写ができるなど機動性、高速性が求められてくるのではないでしょうか。光学ファインダーの良さを生かすためにも、高精細な画像と高速レスポンスいうことがより求められてくるでしょう。
たとえば高速性を謳ったキヤノンのEOS 7D Mark IIなどは将来の一眼レフカメラの1つのありかたを示しているのではないかと思っています。一眼レフに高速性が求められ、ミラーレスは高精細な画質に向かっていくように思います。
Q:将来、いままでとは異なるまったく新しいタイプのカメラが出現する可能性はあるでしょうか?
A:技術が進歩すれば様々なことができると思います。シグマも新しいことは考えておりますが、やはりFoveonセンサーをベースにして画質を極めていくことだと思っています。
たとえばフィルムカメラの中判や大判カメラの画質を目指していくような、そのような製品をデジタルカメラで追究していきたいです。
Q:モデルチェンジのサイクルは長くなっていくでしょうか? ファームウェアのアップデートや部品交換サービスが広まっていくでしょうか?
A:その可能性はあると思います。かつては技術革新がマーケットを広げてきました。技術革新が止まったからマーケットも成長が止まったのではないでしょうか。
マーケットが伸びているときはモノがあれば売れるといった状況もありました。似たような製品でも少し内容を変えただけで、出せば売れた時代があったことも確かです。
でもいまは落ち込んでいる状況ですので、買い換え需要を促進するような新しい付加価値のあるもの、従来と違うものを出さなければなりません。その様な状況にありますのでハードウェアで対応できないことをファームウェアで対応するということが今後はあると思います。
Q:イメージセンサーのサイズ大型化や、さらなる高画素化に向かうでしょうか?
A:何を求めるかによりますが、大型化と高画素化に向かう傾向はあると思います。そうですね、Foveonの35mmフルサイズのご要望は多くいただいております。
しかし、データ量も相当大きくなりますし、動作も非常に重くなってしまいます。シグマにはフルサイズ判用の高性能なレンズがあるのに、それが活かせるカメラがないというのも気にはなりますが、センサーを新しく開発となると膨大な費用がかかりますから、事業的判断をしなくてはなりませんので、そう簡単にはいきません。
Q:大型化、高画素化すればどんなメリットがあるでしょうか?
A:やはり画質が良くなります。誰でもきれいで立体感のある画質のほうを使いたい、そういった写真を撮りたいといった方は大型センサーや高画素カメラに向かうでしょう。
ただ高画素になると高感度のS/Nは苦しくなるので、その辺りはバランスをとっていくことになるでしょうね。輝度ノイズなどは高画素化になればなるほどノイズの粒子も小さくなって結果的に目立たなくなりますから。
Q:イメージセンサーにどのような「新しい機能」を望みますか?
A:ダイナミックレンジをもっと広げて欲しいですね。それと読み出しスピードになるでしょうか。
Q:画像処理技術がさらに進化していけば、どんな“夢”が可能となるでしょうか?
A:一般論としては様々な可能性があります。 具体的にですか、うーん難しいなあ。
Q:積極的に画像処理を利用していくことは良いことでしょうか?
A:良いと思います。ただしバランスを見ながら利用することになります。ディストーション補正などやり過ぎると必ず解像は落ちます。高画素になればなるほどそのアラは目立ってくるのではないでしょうか。やり過ぎてはいけないですね。
でもその前に、レンズできちんと解像するようにしておかないと。ディテールだけはレンズやセンサーではじめにしっかりと捉えていないといけませんので。
Q:将来、メカニカルシャッターから電子式シャッターに代わる可能性はあるでしょうか? 電子式シャッターがメカニカルシャッターよりも優れた点は?
A:グローバルシャッターが実現すればメカの必要はなくなるでしょう。ただ、完全に切り替わるのは、しばらくは難しいと思います。まずは組み合わせではないでしょうか。
Q:2014年から一眼レフの売れ行きが鈍化してきている。その理由はなんでしょうか?
A:技術革新が止まっているからではないでしょうか。技術革新が進めばまだ伸びていく可能性はあると思います。いままでが(売れる量が)多すぎだったのではないでしょうか。それが止まったという状況だと考えます。
また、売れ行きが止まったのはエントリー機種ではないでしょうか。そういったお客さまは上のクラスに行く人が少ないんです。買ったらそのままで買い換えないですね。シグマのレンズの売れ行きを見ても、いままでのボリュームゾーンが下がっています。
Q:ミラーレスカメラが徐々に売れ行きを増してきている。その理由は?
A:伸びている理由はサイズ感ではないでしょうか。その他、ピントが正確で良い写真が撮りやすいといったことが考えられます。一方、一眼レフはミラーショックもありますし、ピント合わせも難しいなどのデメリットもあります。
Q:今後コンパクトデジタルカメラはどうなっていくと予想しますか?
A:特徴のある製品が残っていくのではないかと思います。たとえばDPシリーズのような(笑)。あるいは一体型などでしょうか。
Q:デジタルカメラに動画撮影機能は必須でしょうか?
A:わたしたちシグマについていえば、マストハブではなくナイストゥーハブ、あればいいねというものです。お客さまからのご要望は少ないですね。
ですから優先順位は低いです。Foveonセンサーが動画の対応が難しいわけではないのですが、動画をやるとなればそれなりのリソースを割かなければならないですから。
Q:交換レンズを開発するとき大切にしている点は?
A:シグマには3つのシリーズ(アート、スポーツ、コンテンポラリー)のコンセプトをしっかり明確にして、それに沿った製品をシンプルに作っていくことです。コンセプト通りの製品を作りたい。もちろん画質を良くすることは当然の話です。
Q:レンズの描写性能や機能は、さらなる進化が期待できますか?
A:描写性能はもっと進歩するでしょうが、そのスピードは緩やかだと思います。性能の良いレンズを作るのは、これからは大変なんです。
当然、良くはなっていくでしょうが、優れたガラスが出てくるとか、光学設計が進化するとか、製造技術なども一緒によくならないと高画質で高品質のレンズを作ることは難しいです。おそらくカメラの高画素化のほうが早いでしょうね。
レンズ作りは制約条件との戦いです。使えるガラスの種類、サイズ、マウントサイズ、内蔵するモーター、AF、手ブレ補正ユニットなど、そういった制約がなくなればなくなるほど良いレンズができる可能性はあります。
Q:画像処理を大いに活用してレンズの収差補正や描写の改良をおこなったほうが良いでしょうか?
A:バランスだと思います。画像処理はやり過ぎると画質が劣化してしまいます。メリットがあれば採用した方がいいと思いますが、シグマとしては、あくまで良いレンズを作ることに徹します。
画像処理を前提にして設計されたレンズでは、コンパクトで低価格な、そこそこ良いレンズを作ることはできるでしょうが、画像処理がそうしたレンズに対応できなくなると短命なレンズになりかねません。
それに、画像処理で補正するようなレンズだと、いまは良いかもしれませんが、将来もっと高画質化すればアラが目立ってくることになる恐れもあります。
Q:メモリーカードは今後どのように変化していくと考えますか? 無線環境やクラウドなどのインフラが進化すればメモリーカードは不要になるでしょうか?
A:デジタル技術なので、これからもいろいろ発展すると思いますが、正直に言いますとどのようになるのかよくわからないですね。将来のどのあたりの時代を見るかにもよりますが、いずれはカードがなくなる可能性はあるのかもしれません。ただし内蔵メモリーに充分な容量が必要となるでしょうが。
クラウドですが、そのサービスがほんとうにずっと保証されるのか不安もあります。突然、サービスをやめます、なんてことになる心配もありますから(笑)。
Q:スマートフォンとカメラとの「関係」は将来どのようになるでしょうか?
A:現状では、スマートフォンはカメラとして見ています。そして、コミュニケーションのツールでもあります。言葉ではなくて画像でコミュニケーションする道具。スマートフォンは利便性が優先されたカメラで、従来のカメラのほうは大切にする写真や、残しておきたい写真を撮るための道具という方向になっていくのでしょうか。
Q:一眼レフカメラのSD1の後継機種の予定はあるのでしょうか?
A:ええ、あります。そう近くはないですが、それほど遠くでもないです。SDについてはシグマの開発リソースの制限もありますので、機種のバリエーションを広げず1機種に絞り込んで開発をしていくつもりです。
基本的にはFoveonをきちんとブラッシュアップしていきたいです。そもそも、いろいろやるほど余裕のあるリソースもありませんので、自分たちが良いと思う特徴のある画質を狙っていきたいです。
Q:シグマにとってミラーレスカメラを発売することに魅力があると考えますか?
A:ミラーレスをやる予定はありません。現在のシステムをきちんとメンテナンスしていくことを優先しています。
Q:DPシリーズのズームレンズ内蔵カメラの予定は考えていますか?
A:DPシリーズでのズームの予定はありません。画質を最優先ということで単焦点です。ズームではダメということではないのですが、DPのお客さまは要求がもの凄く高いので、それにお答えしようとすると単焦点を極めていくしかありません。
低倍率のズームなら受け入れられる余地もあるかもしれませんが…でも予定はないです。単焦点レンズが3本。28mm、45mm、75mm相当で、スイートスポットを押さえています。
Q:Foveonセンサーを使った35mm判フルサイズカメラをシグマとしてはどのように考えますか?
A:確かにご要望はいただいておりますが、実際に開発するかどうかとなると、システム全体のことや将来的な発展性のことも考慮しなければならないので簡単ではありません。
Q:アオリ機構を備えた交換レンズ開発にはどのような困難があるのでしょうか?
A:いまのところ予定はございませんが、一部のSD1のお客さまからはご要望いただいたりしておりますので、じつは迷っています。気にはなってはいるのですが、他にもリニューアルしていきたいものがヤマほどありますので……。
Q:F2.8よりも明るいF値を持ったフルサイズ用ズームレンズの可能性はあるのでしょうか?
A:大口径のズームレンズは物理的な制約が多いです。絞り開放から使えることがいま現在の普通の条件ですが、そこが難しいんです。最先端の技術を投入しないと望んだような製品はできません。
24-70mm F2はいつ出るんだ、なんてクレームを頂戴することもあって困っています。そんなことひとことも言ってませんからね(笑)。
(了)
URL
- デジタルカメラマガジン
- http://ganref.jp/dcm/mag/15_01/
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