あまりにもこわばった政府の対応ではないか。

 11月の沖縄県知事選で当選した翁長(おなが)雄志(たけし)知事が先週、就任あいさつで東京に出かけた。ところが、沖縄関連の閣僚との面会はほとんど実現しなかった。

 新内閣発足直後の慌ただしい時期であることに配慮し、翁長知事は「名刺だけでも」と日程調整を試みたが、安倍首相、岸田外相、中谷防衛相だけでなく、沖縄基地負担軽減担当でもある菅官房長官にも会えずじまい。山口沖縄担当相だけが応じた。菅氏は記者会見で「年内はお会いするつもりはない」とまで言い切った。

 地元では「沖縄を冷遇」と大きく報じられ、県民の怒りを買っている。

 翁長知事は政府の方針に反対し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設阻止を訴えて当選した。保守系の翁長氏が移設反対に回った沖縄の現実を、政府は直視する必要がある。むしろ何を置いても政府側が新知事に理解を求めに出かけるのが筋だろう。政府の対応は大人げない。

 さらに政府は沖縄振興予算の減額まで検討し始めた。地元の反発は増幅するばかりだ。

 昨年のクリスマス、首相官邸で安倍首相と菅官房長官が当時の知事、仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)氏に概算要求を上回る3500億円の予算などを約束した。仲井真氏が移設に伴う埋め立てを承認したのは、その直後だった。

 あれから1年。政府の態度は冷たく一変したのである。

 政府は、基地問題と振興策はリンクしないと説明し続けてきたはずだ。移設容認の見返りに振興予算を使ったと、自ら示したようなものではないか。

 安倍首相は「沖縄に寄り添う」と言ってきた。ならば、振興予算を取引材料にするようなやり方はやめ、沖縄との対話の道を探るべきだ。「辺野古移設しかない」という政府の理屈には、沖縄県民の多くが強い疑念を抱いている。だからこそ、説明と対話が不可欠だ。

 知事選後の衆院選でも、沖縄の4小選挙区とも辺野古移設反対派が制した。こうした民意を背負った翁長知事に対する一連の政府の対応は、知事を容認に転向させる揺さぶりとみられるが、逆効果しかないだろう。

 26日深夜、沖縄に戻った翁長氏を励まそうと、80人近い県民や議員が那覇空港ロビーで出迎えた。そこにいた名護市民の男性が言った。「こんな仕打ちを受けると、ますます沖縄と政府の溝が深まる」。政府にぜひ、この声を受け止めてほしい。