北九州市小倉港から定期船で約25分の「馬島」は、
住民は全13世帯、約40名ですから
猫さんの数のほうが圧倒的に多いと思います。
2014年12月13~14日にかけて
『公益財団法人どうぶつ基金』様によって
約80頭の不妊・去勢手術を一斉に行いましたので
ご報告いたします。

TNR は、地域猫活動に欠かせません。
T rap:トラップ/捕獲器で野良猫を捕獲すること
N euter:ニューター/不妊手術のこと
R eturn:リターン/もとの生活場所に戻してあげること

地域猫活動とは、
野良猫にエサを与えるだけではなく
その地域の猫に指定して、きちんと不妊・去勢手術を行うこと。
“一代かぎりの命” として大切に見守ることです。
無責任なエサやりだけでは猫が増え過ぎて
発情の鳴き声や糞尿の被害が “ご近所迷惑” となってしまい、
最悪の場合、猫が迫害されることもあります。

馬島の近くに「藍島」という猫で有名な島があります。
今回の馬島での一斉 TNR は、
藍島で出会った猫友・S さんの “想い” から始まりました。
S さんは藍島が有名になるずっと前から
島の猫さんたちを静かに見守り、給餌に通われている女性です。

昨年、「藍島で野良猫が迫害されている」という情報を聞いて
初めて島へ行き、 S さんとお会いしました。
静かな印象の優しい女性ですが、猫への想いはとても強く
その後わたしはボランティア間のゴタゴタが嫌になり・・・
藍島に通うのをやめてしまいましたが、
S さんは、その間もずっと静かに島の猫さんたちを見守り、
今も欠かさず給餌を続けていらっしゃいます。

藍島の TNR は8割くらい終わっていると聞きました。
しかし『どうぶつ基金』の佐上理事長先生いわく、
TNR の鉄則とは、
『すぐやる』『完全にやる』『最後まで継続してやる』
ことなのだそうです。
「とりあえずメス猫だけの不妊」では、
数少ない妊娠可能なメス猫を大勢の未去勢のオス猫が奪い合い
メス猫にとっては「集団レイプ」のような事態だそうです。
それに、オス猫のマーキング(オシッコ)臭や
発情期の鳴き声もなくならないため、
猫好きはともかく猫が嫌いな人にとっては
“TNR しても何も改善されない” といった結果にもなります。
お外で暮らす猫さんたちの生殖系の病気や
ケンカによる怪我を減らすためにも不妊・去勢手術は必要です。
“猫好き” はもちろん “猫が嫌いな人” にとっても
ベストな環境づくりのために TNR があるのだとしたら、
野良猫だろうが飼い猫だろうが
(もちろん飼い猫は完全室内飼いが鉄則ですが・・・)
お外で暮らす全部の猫さんに不妊・去勢手術が必要です。
そのためにも佐上理事長先生がおっしゃる
『すぐやる』『完全にやる』『最後まで継続してやる』は、
本当に大切なのだと思いました。

今年の3月頃でしょうか、
馬島でも猫が増え過ぎてフードが不足していることを
S さんからお聞きしました。
それ以降わたしなりにフードの支援を続けてきましたが
TNR と併行しなければゴールが見えません。

初めに相談したのは東日本大震災の被災動物シェルター、
『にゃんだーガード』の本多代表でした。
原発事故によって周辺に取り残された犬や猫を
救出・保護している民間のボランティア団体『にゃんだーガード』は、
年に数回 TNR を行っています。
原発周辺から全頭を救出・保護できればいいのですが・・・
シェルターに収容できる数は限られているからです。
本多代表が執刀医の山口獣医先生にお話をつないでくださり
なんだか想定外のトントン拍子で・・・
馬島 TNR の話は進んでいきました。
人員の面では『TNR博多ねこ』の K 会長が、
費用の面では猫友・O さんやお仕事上のクライアント様方々が、
そしてノウハウの面では『にゃんだーガード』が、
強力にバックアップしてくださることになったのです。

しかし、まずは住民の方のお気持ちをしっかりお聞きして
TNR について理解していただくことから・・・
10月11日、ほぼ1年ぶりに小倉の渡船場に行って
S さんと待ち合わせて馬島に向かいました。

S さんが足しげく島に通ってくださっていたおかげで
島民の方とのお話は驚くほどスムーズでした。
馬島で猫さんたちのお世話をしているお宅は2軒あり、
TNR を検討したこともあったそうですが、
多数の猫さんたちを島から運び出す労力や費用・・・
高齢のお年寄りが多い島ではとても難しく
断念された経緯もあったそうです。
TNR の意味や、そのメリットなどを一通りご説明すると
「ぜひに」というご要望で
自治会長さんにもご了承いただきました。
小倉〜馬島には1日3往復の定期船がありますが
それだけでは宿泊施設のない島での出張手術は難しいため
漁船をチャーターすることや
手術場所をご提供いただくことも決まりました。
手術をいつにするかなど具体的なことは漠然としていて
「本当にできるんだろうか」という不安も強くありましたが、
その後は少しずつでも前進するため、
S さんと手分けしての毎週の “馬島通い” が始まりました。

S さんは馬島に行く時は必ず藍島まで足を伸ばされます。
藍島には S さんの大切な猫さんがいるからです。
名前は「兄ちゃん♂」「白黒ちゃん♀」というカップル・・・
この2ニャンは S さんの心の支えのような存在です。
しかし、この10月の半ばくらいから兄ちゃんは姿を見せません。
終便ギリギリまで兄ちゃんの名を叫び、探しまわる S さん・・・
それでも会えなくて帰りの船内で肩を落とす S さんに、
かける言葉が見つかりませんでした。
その次の週も、そのまた次の週も・・・
そして今日まで S さんと兄ちゃんは会えていません。

↑ S さんと白黒ちゃん。
パートナーの兄ちゃんがいなくなって寂しそう・・・
S さんが帰ろうとすると白黒ちゃんは自分のテリトリーから離れ
100メートルくらい後を追ってきますが、
ある一定のラインで立ち止まり・・・
そこからは小さな点になるまで S さんをじっと見送っています。

残念なことですが・・・
藍島には相変わらず猫を嫌う住人がいて
虐待の話も聞こえてきます。
1年前この藍島から、わたしはピカリ(♂)を連れ帰りました。
エサ場から離れた渡船所の周辺に暮らしていたピカリは、
初めて会った時はゴミ箱をあさっていて
今でもまだ少し虐待のトラウマを抱えているようです。

↑ 初めて会った日のピカリ ↓ 保護直後

今でこそ体重6キロ近くありますが、
保護した直後は “顔の大きいオスの成猫” なのに2.9キロ・・・
ひどい風邪をひいてガリガリに痩せていました。
あの日あの時ピカリと再会・保護できたから良かったけれど
もしも、あのままピカリが行方不明になっていたら・・・?
どんなに後悔して自分を責めたか知れません。
頭をよぎる最悪の事態を振り払うように
兄ちゃんの名を呼び探し続ける S さんの気持ちは、
痛いほどよく分かり・・・
かける言葉が見つかりませんでした。

馬島には幸い猫をいじめる人はいません。
もちろん島民すべてが猫好きではありませんし、
糞尿や畑を荒らすなどの被害もあります。
猫さんがこれ以上増えて被害が大きくなる前に
TNR は必要であると強く感じました。
本当に短期間で、様々な手配お疲れ様でした。
ブランチさんがいたからこその、大きな成功だったと思います。
たくさんの猫たちの命を守ってくださってありがとう。
ほんの少しだけでも、お役にたてたなら望外の幸せです。
今度は、釣竿を持って暖かい時期に猫たちの様子を見に出かけられたらとも、思っています。
まにゃさん!
いーえっ!!!
まにゃさんいらっしゃらなかったら、
と思うとゾゾゾ〜っとします。
わたしは『にゃんだーガード』TNRは未経験ですし・・・
準備段階でも何が何だか分からないまま必死なだけで・・・
まにゃさんが的確に指示してくださらなかったら、
手術室の設置だってできなかったと思います。
それに、色々と泣き言も聞いていただいてりして・・・
今回まにゃさんなしでは大変なことになっていました。
・・・というか、途中で放り出してたかも。。^^;
ほんと、何から何までありがとうございます!
こんばんは、
今回はブランチさんの人柄のおかげで
たくさんの人にご協力頂いて
とんとん拍子に進んでいきました。
私はこれからも藍島、馬島に行きます。
せっかくたくさんの人たちのおかげで
助けて頂いた事を無にしたくありませんから~。(^o^)
okala さん
それぞれの皆様の、
猫さんたちを想う気持ちが素晴らしく、
それぞれが精一杯の力を尽くしたからこそ
最強の猫神様が味方してくれたのだと信じます。^^
でもこれで終わり、なんかじゃ絶対になくて
これからがほんとに大事なんだと思います。
これからもみんなで力を合わせて
馬島の猫さんたちのこと大切に見守っていかないと・・・
ですね ♪