遊戯王GX-漆黒のパペットマスター- (スターリン)
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ぎ、ぎりぎりセーフ!?
なんとか投稿です!……と思ったら前書きと後書き書いているうちに日付跨っちゃいました……すみません。

はい、今回はサティスト篇。
案の定、全篇後篇分けてお送りします。

それでは、本篇(外伝)をどうぞ。



Xmas special story 「家族との10日間《4日目『前篇』》」

今は12月27日の夜11時。場所は『トラファルガー広場』。
ここはイギリス・ロンドンの中でも有名な観光スポットであるが、もう少しで深夜を回るのと、さらに寒い冬の真っただ中なため、辺りに人の気配はない。
私は噴水があるところに腰を落として、ある人物を待っていた。

「……おまたせしました、母上」
「ん」

目の前の暗闇の中から私が待っていたやつの声が聞こえ、立ち上がし声がした方を見る。その先には、真っ黒なコートを着た私とは対照的な、真っ白なコートを着た私の長女、サティスト・クロウリーがいた。

「こんな時間に、しかもこんな寒い場所に呼び出してすまない」
「いえいえ、母上の言うことならこのサティスト・クロウリー、なんなりと従いますわ」

旦那譲りの細い垂れ目のまま、サティストはそう言って一礼する。サーストもサーストだったが、サティストもサティストで、私への対応がどこかずれているな。騎士みたいだぞ? 私はおまえを雇っている女王様ではない、母親だ。……まぁいい。

「1つだけ質問してもよろしいですか?」
「なんだ?」

人差し指を立てて「1」を強調するサティストはどこか、嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「今日1日サーちゃんを見て、母上と帰って来た時からなんと言いますか、気取らなくなっていました」
「…………」

気が付いていたか。

「とても自然な表情で笑うのです。いつもはどんなに喜んでいる時でも少し表情を和らげるだけでしたのに、目を細めて笑うようになっていたのです。……昨日、サーちゃんに一体なにをなさったのですか?」

なにをした、か……

「とあるデュエリストとデュエルをさせた。それだけさ」
「デュエルを……ですか。なるほど、解りやすいかぎりですわ」
「だろう? コミュニケーションツールとして、デュエルほど解りやすいものはないと私は考えている」
「感情が全面的に出ますからね、デュエルは。サーちゃんがデュエルを楽しんでいなかったこともお見通しで?」
「ああ。私は勿論、サーストの相手をしたやつも見破っていた」
「サーちゃんは解りやすい子ですからね。そこがまた可愛くて、大好きですわ」

私とサティストは向き合い、話をしながら互いに距離を取る。もう、私がなにをしようとしているのか、動きからしてサティストも理解しているのだろう。本当に頭の回転が速い娘だよ、サーストもサティストも。

「それで、今度は(わたくし)の番ということですわね。そして対戦相手は……」

辺りを軽く見渡して、やがて私の前で視線が止まる。

「……母上、ですわね?」
「ふっ、イエスだ。おまえに提示した『課題』がどこまで進んだのか、それを確かめるためだ」
「なるほど。確かに(わたくし)に課せられた『課題』を見るには、(わたくし)とデュエルをするのが1番に手っ取り早いでしょう」

ザッ……。
もうお互い、充分な距離を取ったところで私たちは立ち止まった。

「サティスト、思う存分に暴れてみせろ。英国アカデミアトップの力、私の前に全て曝け出せ」
「母上こそ――舐めてかかると大火傷するかもしれませんよ?」
「大火傷程度で済むならまだ生きている可能性があるな。――やるなら、骨の髄まで焼き尽くしてみせろ!」
「上等ですわ!」
「「決闘(デュエル)!!」」

冷たい風がトラファルガー広場にスゥっと吹き、積もっていた雪が少しだけ跳ねた。


――――・――――・――――・――――


「「決闘(デュエル)!!」」

夜遅くに始まった、(わたくし)……サティスト・クロウリーと母上とのデュエル。
母上と1対1で、しかもいつものお遊びではなく、私の全てを見たいと期待していただいている本気のデュエル。負けるわけにはいきませんわ。

「先攻はいただきます。(わたくし)のターン、ドロー」

サティスト
手札5→6

手札はそれなりによろしいですわ。あとはデッキが(わたくし)に答えてくれるかどうか。

「ライフを800払い、マジックカード『魔の試着部屋』発動。デッキの上から4枚めくってお互いに確認し、その中の☆3以下の通常モンスターを全て特殊召喚しますわ」

サティスト
LP4000→3200

4枚めくった(わたくし)がまずそのカード達を確認し、その後は母上にも確認していただく。

『弾圧される民』
『ジェムナイト・ルマリン』
『ジェムナイト・ラピス』
『悪魔への貢物』

「『弾圧される民』と『ジェムナイト・ラピス』を守備表示で特殊召喚し、あとは全てデッキに戻します」

弾圧される民
守備力2000
ジェムナイト・ラピス
守備力100

「マジックカード、『馬の骨の対価』。私のフィールドの効果モンスター以外のモンスター1体を墓地に送り、カードを2枚ドローします。『ジェムナイト・ラピス』を墓地に送ってカードドロー」

サティスト
手札4→6

……来てくれましたか。今回もお願いしますね。

「カードを2枚伏せて、『クリバンデット』を通常召喚」

クリバンデット
攻撃力1000

『クリバンデット』。
(わたくし)とサーちゃん、2人に共通して憑いているデュエルモンスターズの精霊です。出番は短いですが、もたらす恩恵は大きい心強いモンスターですわ。

「ターン終了時、『クリバンデット』の効果が発動されます。通常召喚に成功したターンのエンドフェイズ時に生贄に捧げることによって、デッキの上から5枚めくって確認し、その中のマジック・トラップカード1枚を手札に加えます」

『ジェムナイト・ガネット』
『ジェムナイト・フュージョン』
吸光融合(アブソーブ・フュージョン)
『逃げまどう民』
『ジェムナイト・サフィア』

「『吸光融合(アブソーブ・フュージョン)』を手札に加え、それ以外は全て墓地に送られます」

サティスト
手札3→4

「ターン終了」


サティスト
LP 3200
手札 4
場 モンスター
  「弾圧される民」
  魔法・罠
  セット
  セット

エルシャドール
LP 4000
手札 5
場 モンスター 無し
  魔法・罠  無し


『ジェムナイト・フュージョン』を墓地に落としただけでなく、『ジェムナイト』の融合が捗る『吸光融合(アブソーブ・フュージョン)』まで手札に加えることが出来ました。これはよいスタートでしょう。

「うむ、壁を出しつつ手札増強。セメタリーにもカードを溜めてリバースカードが2枚。いい斬り出しだ。私のターン、ドロー」

エルシャドール
手札5→6

(わたくし)の1ターン目の動きを褒めながら、母上のターンがスタートします。
母上のデッキは『シャドール』デッキ。問題なのはその型です。それによって今後の動き方を変えなければいけません。
あらゆるデッキを使いこなし、あらゆるデッキに対応してくる母上。はたして、今回お使いになるデッキの型はなんなのでしょうか?

「スタンバイフェイズからメインフェイズへ移行。『シャドール・リザード』を攻撃表示で召喚」

シャドール・リザード
攻撃力1800

通常召喚権をそんなモンスターに使った……ということは。

「装備マジック『魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)』を『シャドール・リザード』に装備。そしてこの際、私は属性を1つ選択し、装備モンスターの属性を選択した属性に変更する。私は『光属性』を選択する」

シャドール・リザード
『闇属性』→『光属性』

闇から光へ。
『シャドール・リザード』の全身から、まるで星の輝きのような光が放たれます。やはり『魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)』でしたか。

「『魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)』の第2のエフェクト発動。このカードが装備されたモンスター含む『シャドール』と名の付いた融合モンスターに必要な素材をセメタリーに送り、その融合モンスターを融合召喚する。私は手札の『シャドール・ファルコン』と、フィールドの光属性モンスターとなった『シャドール・リザード』をセメタリーに送る」

いきなり来ますか……母上のエースモンスターが。
『シャドール・ファルコン』が輝く『シャドール・リザード』と溶けて1つになって行き、そこから無数の糸と強大な光を纏う無表情な天使が降臨します。

「『エルシャドール・ネフィリム』、融合召喚」

エルシャドール・ネフィリム
攻撃力2800

『エルシャドール・ネフィリム』。
下級『シャドール』モンスター達を操っている元凶にして『シャドール』の最高神です。

「『エルシャドール・ネフィリム』『シャドール・ファルコン』『シャドール・リザード』のエフェクトを同時発動。なにかあるか?」
「いえ、特には」
「そうか。ならば順番に解決だ。『シャドール・リザード』のエフェクトで『シャドール・ビースト』をセメタリーに落とし、『シャドール・ファルコン』を裏側守備表示で特殊召喚。『エルシャドール・ネフィリム』のエフェクトで『シャドール・ヘッジホッグ』をセメタリーへ」

実は、この順番にチェーンを組んだのは意味があります。
『シャドール』モンスターは全て任意効果なので同一チェーン上では好きな順番でチェーンを組むことが出来ます。今の順番ですと、『エルシャドール・ネフィリム』がチェーン1、『シャドール・ファルコン』がチェーン2、『シャドール・リザード』がチェーン3ですね。この後に、相手が『天罰』を発動したとしますと、自動的に最後に効果が発動した『シャドール・リザード』が無効になります。もし、『エルシャドール・ネフィリム』の効果を最後に発動してしまいますと、『天罰』で無効にされて破壊されてしまうのは『エルシャドール・ネフィリム』となります。チェーンの組む順番が変わるだけで、こんなに違いが出ます。
つまりなにが言いたいのかといいますと、チェーンを組む順番によって自分の1番効果を発動させたいモンスターを護ることができるということです。
この場合は『エルシャドール・ネフィリム』を1番に、『シャドール・ファルコン』が2番に、そして『シャドール・リザード』が3番目に大切なカードでした。ですから母上は、最後に『シャドール・リザード』の効果を発動させたのです。これはルールをしっかりと理解しているデュエリストでなければ出来ない、簡単そうで難しい、しかし基本に則った戦術です。それを一瞬で判断できる母上は、やはり雲の上の存在と言えます。

「チェーン終了。と、さらにセメタリーに落ちた『シャドール・ヘッジホッグ』と『シャドール・ビースト』のエフェクト発動。カードを1枚ドローして、デッキから同名カード以外の『シャドール』モンスターをサーチする」

エルシャドール
手札3→4

このチェーンの組み方にも意味があります。
あえてデッキを圧縮する前にドローすることで、ドローしたカードを見た後に好きなカードをサーチすることが出来るのです。『アレを引く確率が上がるから先に』ではなく『コレを引いたのならアレを』と考える慎重なご判断です。

「『シャドール・ハウンド』を手札に加える」

エルシャドール
手札4→5

「メインフェイズ終了、バトルに入ろう。『エルシャドール・ネフィリム』で『弾圧される民』に攻撃。『エルシャドール・ネフィリム』のエフェクトにより、特殊召喚されたモンスターとはダメージステップ開始時に破壊する。『堕ち影神の禊祓(エルシャドール・ピューフィケーション)』」

特殊召喚されたモンスターとは戦闘も行ってくれずに無情に締め付ける『エルシャドール・ネフィリム』。大した腕もないのに、親のコネや金に物を言わせてなったプロデュエリストを批判する母上らしい、容赦のない効果ですわ。

「メインフェイズ2に入り、カードを2枚伏せる。ターン終了だ」


サティスト
LP 3200
手札 4
場 モンスター 無し
  魔法・罠
  セット
  セット

エルシャドール
LP 4000
手札 3
場 モンスター
  「エルシャドール・ネフィリム」
  セット(「シャドール・ファルコン」)
  魔法・罠
  セット
  セット


伏せカードの枚数と動きからして、『純シャドール』のようですわね。
母上にとっては様子見なのでしょうが、こっちにとっては厳しいですわ。『エルシャドール・ネフィリム』をどうにかして対処しなければ、攻撃が通りません。

(わたくし)のターン、ドロー」

サティスト
手札4→5

……いいカードを引けました、が。迷いますわね。どちらをするのが正解なのでしょうか。
まぁ、どちらにせよやることがありますので、それをしながら考えましょう。

「マジックカード『闇の量産工場』発動。墓地の通常モンスターを2体手札に加えます。『ジェムナイト・ラピス』と『ジェムナイト・ガネット』を手札に」

サティスト
手札4→6

「そして墓地の『ジェムナイト・フュージョン』の効果発動。『ジェムナイト・サフィラ』を除外して手札に加えます」

サティスト
手札6→7

……さて、ここからが大切です。
さっきドローしたカードは『レスキューラビット』。このカードを召喚して効果を使い、『団結するレジスタンス』を2体召喚すれば、『ジェムナイト・プリズムオーラ』を融合召喚してネフィリムを対処した上に『大革命』の準備も整えられます。しかし、それをすると『吸光融合(アブソーブ・フュージョン)』が撃てなくなってしまいます。
どちらを使うのが、この場では1番良いのでしょうか。なにもなければ『レスキューラビット』を選びますが……母上のあのリバースカード。…………。

「マジックカード『吸光融合(アブソーブ・フュージョン)』を発動します。このターン、『ジェムナイト』モンスター以外の特殊召喚を封じる代わりに、デッキから『ジェムナイト』と名の付いたカード1枚を手札に加えます。2枚目の『ジェムナイト・サフィア』を手札に加えます」

サティスト
手札6→7

「さらにその後、『吸光融合(アブソーブ・フュージョン)』の効果で、『ジェムナイト』の融合モンスターに指定された手札・フィールドのモンスターを除外し、その融合モンスターを融合召喚します。手札の『ジェムナイト』モンスター、『ジェムナイト・ガネット』と水族モンスター、『ジェムナイト・サフ ィア』を除外し、『水』の特性を持つナイトを召喚します」

『ジェムナイト・サフィア』の纏う『水』の盾が『ジェムナイト・ガネット』を優しく包み込み、そこから群青色の騎士が盾を構えます。

「『ジェムナイト・アメジス』、融合召喚ですわ」

ジェムナイト・アメジス
守備力2450

ここはまず、あの2枚のリバースカードを撤去しましょう。『レスキューラビット』の効果で呼びだすのは『団結するレジスタンス』で無くても大丈夫ですからね。

「さらにマジックカード『ジェムナイト・フュージョン』発動。手札の『ジェムナイト・ラピス』と『ジェムナイト』モンスター、『ジェムナイト・アメジス』を融合。『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』を融合召喚」

ジェムナイトレディ・ラピスラズリ
攻撃力2400

「この瞬間、『ジェムナイト・アメジス』の効果発動。フィールド上にセットされたマジック・トラップカードを手札に戻します」

フィールドに波が押し寄せ、(わたくし)と母上、両のセットカードの除去にかかります。しかし、母上はそれを黙って見ているはずがありません。

「チェーンしよう。トラップカード『ブレイクスルー・スキル』発動。相手モンスター1体を指定し、ターン終了時までそのエフェクトを無効にする。対象は『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』だ」

ラピスラズリの身体から神聖なオーラがパリンと音を立てて消えました。あらら、ラピスラズリの効果が無効にされちゃいました。ですが、先に『レスキューラビット』を召喚しないで正解でしたわ。

「さらに、チェーン。永続トラップ、『影依の原核(シャドールーツ)』。発動後、このカードはモンスターカードとなり、特殊召喚される。守備表示だ」

影依の原核(シャドールーツ)
守備力1950

さらに、ウィルスのような不気味な黒い塊も特殊召喚されました。あ、あらら、全部使われてしまいました。しかし、アメジスの効果は止まりません。波飛沫と同時に私のリバースカードだけが弾け飛び、手札に戻ります。
影依の原核(シャドールーツ)』はともかく、『ブレイクスルー・スキル』は少し痛かったですわ。ですが……仕方ないです。このまま行きましょう――ワンターンキルに。

「『レスキューラビット』を攻撃表示で通常召喚」

レスキューラビット
攻撃力300

「そして効果発動。デッキから『ジェムナイト・ルマリン』を2体特殊召喚ですわ」

ジェムナイト・ルマリン
攻撃力1600
ジェムナイト・ルマリン
攻撃力1600

「墓地の『ジェムナイト・フュージョン』の効果発動。墓地の『ジェムナイト・アメジス』をゲームから除外して手札に戻します」

サティスト
手札5→6

「そして『ジェムナイト・フュージョン』発動。フィールドの『ジェムナイト』モンスター、『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』と雷族モンスター『ジェムナイト・ルマリン』を融合。今度は『雷』の特性を持つナイトを召喚します」

『ジェムナイト・ルマリン』の強力な電撃がやがて鎧を形成し、ラピスラズリの身体に装備されていき、ついに牛のような兜を被った銀色の騎士が電撃を放ちながら雄叫びを上げます。

「『ジェムナイト・プリズムオーラ』、融合召喚です」

ジェムナイト・プリズムオーラ
攻撃力2450

「墓地の『ジェムナイト・ルマリン』をゲームから除外して、墓地の『ジェムナイト・フュージョン』を回収します」

サティスト
手札5→6

「『ジェムナイト・プリズムオーラ』の効果発動。1ターンに1度、手札の『ジェムナイト』と名の付いたカードを1枚墓地に送り、表側表示のカード1枚を破壊します。先程回収した『ジェムナイト・フュージョン』を墓地に送り、『エルシャドール・ネフィリム』を破壊します」

プリズムオーラの水晶から電流が迸り、それが右手に持つサーベルに充電され、限界まで言った後一気に発射。『エルシャドール・ネフィリム』を感電死させました。

「やるな。『エルシャドール・ネフィリム』のエフェクト発動。『魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)』を手札に戻す」

エルシャドール
手札3→4

手札が増えましたが仕方ないです。このまま続行ですわ。このターンで決めます。

「墓地の『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』を除外して、墓地の『ジェムナイト・フュージョン』を手札に加えますわ」

サティスト
手札5→6

「3回目の『ジェムナイト・フュージョン』を発動。フィールドの『ジェムナイト・ルマリン』と『ジェムナイト』モンスター、『ジェムナイト・プリズムオーラ』を融合。誠実なる高貴なナイトを召喚します」

ただでさえ強い電流が流れていたプリズムオーラに、更なる強い電流が流れ込み身体の水晶がひび割れる。全ての外甲を取り外し、現れたのは黄金に輝く騎士。

「『ジェムナイト・パーズ』、融合召喚ですわ」

ジェムナイト・パーズ
攻撃力1800

「墓地の『ジェムナイト・フュージョン』の効果で、墓地の『ジェムナイト・プリズムオーラ』をゲームから除外し、手札に戻します」

サティスト
手札5→6

「マジックカード『魔法石の採掘』発動。手札を2枚捨てて、墓地のマジックカードを1枚選択。それを手札に加えます。『ジェムナイト・フュージョン』と『ジェムナイト・クリスタ』を捨てて、『闇の量産工場』を手札に戻します」

サティスト
手札5→3→4

「そしてそのまま『闇の量産工場』を発動。墓地の『ジェムナイト・クリスタ』と『ジェムナイト・ラピス』を手札に戻します」

サティスト
手札3→5

「『ジェムナイト・フュージョン』の効果で、『ジェムナイト・ルマリン』を除外して手札に戻します」

サティスト
手札5→6

「ラスト、『ジェムナイト・フュージョン』発動。フィールドの『ジェムナイト・パーズ』、手札の『ジェムナイト・クリスタ』『ジェムナイト・ラピス』を融合。最高硬度、宝石最強のナイトを召喚しますわ」

3人の宝石の騎士たちが自らを形成している核を取り外して宙に投げる。投げられた宝石たちはそれぞれ光り出し、やがてそれは8つの光と共に巨大な剣へと変えていき、それに相応しいしっかりとした体格の透明な騎士が輝く。

「『ジェムナイトマスター・ダイヤ』、融合召喚ですわ」

ジェムナイトマスター・ダイヤ
攻撃力2900

「来たか……サティスト、おまえの最強の騎士、『ジェムナイトマスター・ダイヤ』。いつ見ても美しく、堂々とした姿だ」
「光栄ですわ」

ダイヤは(わたくし)の切り札。それを褒めるということは、この(わたくし)を褒めていただいていることと同義。
召喚条件は少々難しく見えますが、このデッキは通常モンスターで固めたダイヤを出すことに特化した専用デッキ。順を追っていけばすぐに呼び出せるように構築されていますわ。

「『ジェムナイトマスター・ダイヤ』の攻撃力は、(わたくし)の墓地の『ジェム』モンスターの枚数×100ポイントアップします。墓地にはパーズ・クリスタ・ラピスの3体のみ。攻撃力300ポイントアップですわ」

ジェムナイトマスター・ダイヤ
攻撃力2900→3200

「さらに『ジェムナイトマスター・ダイヤ』の効果発動。1ターンに1度、墓地の☆7以下の『ジェムナイト』融合モンスター1体を除外し、その名前と効果を得ます。『ジェムナイト・パーズ』をゲームから除外します」

『ジェムナイトマスター・ダイヤ』→『ジェムナイト・パーズ』
攻撃力3200→3100

「『ジェムナイト・パーズ』の効果を得た『ジェムナイトマスター・ダイヤ』は貫通能力と直火焼き能力を得ます」

さて、これで準備が整いましたわ。

「バトルフェイズに入ります」

母上にバトルフェイズ開始を宣言します。……。…………よし、メインフェイズ終了時に『エフェクト・ヴェーラー』が来ませんでした。これで効果は使えます。
母上の墓地には『超電磁タートル』も『ネクロ・ガードナー』もいませんので、攻撃は確実に通ります。
『シャドール・ファルコン』の効果で『シャドール・リザード』を出してリバース効果で破壊して直火焼き追加ダメージを防ごうとしても、『シャドール・ファルコン』の貫通ダメージで1700、直火焼きダメージで600、『シャドール・リザード』の貫通ダメージで2000の合計4300のダメージ。殺し切れます。
『シャドール・ファルコン』の効果で『シャドール・ビースト』を蘇生させて『ダメージ・イーター』を墓地に送れても、『ダメージ・イーター』はダメージステップには効果を発動することはできませんので、結局直火焼きダメージで(わたくし)の勝利。……いただきました!

「行きます! 『ジェムナイト・パーズ』となった『ジェムナイトマスター・ダイヤ』で『シャドール・ファルコン』に攻撃! 『金剛石の黄玉斬(ダイヤモンドパーズ・スラッシャー)』! 第一斬!」

黄金のオーラを纏ったダイヤの大剣がセットされている『シャドール・ファルコン』に向かいます……が、ピタッ。
攻撃が当たる直前に、ダイヤの動きが止まってしまいました。なっ……!

「どうして……ダイヤが攻撃を止めた……?」

(わたくし)は驚きのあまりぱっちりと目を開け、父上譲りのオッドアイを曝け出してしまいます。

「最後に油断したな、サティスト。それがおまえに足りない5点だ」

母上の台詞を受けて我に返っていつもの細目に戻り、ダイヤを見ます。するとどういうことでしょうか、ダイヤの胸のあたりが7色に輝いております。よく見ると、その光を発光している小さな影を捕えることが出来ました。……しまった!

「おまえは私のエースモンスター『エルシャドール・ネフィリム』と、前にやったデュエルで妨害を受けた『ダメージ・イーター』と『超電磁タートル』に気を取られて、私の切り札(・・・)を見落としてしまった」

あれは……母上の精霊にして、母上のデッキの真の『切り札』……!

「手札の『虹クリボー』のエフェクトを発動させてもらった。『ジェムナイトマスター・ダイヤ』に装備し、攻撃を封じさせてもらう」

『虹クリボー』……! すっかり忘れてしまっていましたわ! なんて失態!
母上のデッキにおいて、1番に警戒しなければならないモンスターの存在を忘れてしまうなんて……。

「バトルフェイズ……終了」

(わたくし)は残り3枚の手札を見ます。

『大革命』
『トライワイトゾーン』
『決闘融合-バトル・フュージョン』

こっ、これではどうしようもありません……! ブラフとして伏せるしか……っ。

「カードを3枚伏せて、ターン終了。『ジェムナイトマスター・ダイヤ』の名前と効果は元に戻りますわ」


サティスト
LP 3200
手札 0
場 モンスター
  「ジェムナイトマスター・ダイヤ」
  魔法・罠
  セット
  セット
  セット

エルシャドール
LP 4000
手札 3
場 モンスター
  セット(「シャドール・ファルコン」)
  「影依の原核(シャドールーツ)
  魔法・罠
  「虹クリボー」(「ジェムナイトマスター・ダイヤ」装備中)


「私のターン、ドロー」

エルシャドール
手札3→4

リバースカード3枚とはいえ、その実態は全てブラフ。ほぼノーガードで母上にターンを渡してしまいました。

「スタンバイフェイズからメインフェイズに移行。……サティスト、おまえのフィールドにセットされている3枚のリバースカード、それ全部ブラフだろう?」

ドキッ! なっ、なるべくいつもと変わらないポーカーフェイスでしたのに見抜かれました!? い、いえ。あの台詞こそブラフ。冷静に対応しなければ。

「さぁ、それは解りませんわ」

にこっと笑って見せるも、母上は首を横に振ります。

「いいや、解る。根拠も既に出来上がっている。その3枚のリバースカードは間違いなくブラフだ」

こ、根拠? この3枚のリバースカードがブラフだという根拠ですって……?

「まぁ、まだ推理の段階にすぎないがな。今から目一杯動いてなにもなければ的中ということだ。――覚悟はいいな、サティスト」
「……覚悟なんて、とっくの通りに出来ていますわ! 撃退して御覧に見せましょう!」

出来ませんが!

「ふっ、言ったな? ならば止めてみろ。『シャドール・ハウンド』召喚!」

シャドール・ハウンド
攻撃力1600

「そして、『影依の原核(シャドールーツ)』を攻撃表示に変更し、『シャドール・ファルコン』を反転召喚!」

影依の原核(シャドールーツ)
攻撃力1450
シャドール・ファルコン
攻撃力600

「『シャドール・ファルコン』、エフェクト発動! セメタリーの『シャドール』モンスターをセット状態で特殊召喚する! 『エルシャドール・ネフィリム』をセット! そして装備マジック『魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)』発動! 『シャドール・ハウンド』に装備し、属性を『地属性』に変更!」

シャドール・ハウンド
『闇属性』→『地属性』

「そして『魂写しの同化(ネフェシャドール・フュージョン)』の第2のエフェクト発動! 『シャドール・ファルコン』と地属性となった『シャドール・ハウンド』を融合させ、大地の神をここに降臨させる!」

『シャドール・ファルコン』と『シャドール・ハウンド』の2体が地中へ潜る。そして、それから間もたたずに地面がひび割れ、そこからなにか巨大な機械を背負った神の化身(ネフィリム)が出現しました。

「『エルシャドール・シェキナーガ』、融合召喚!」

エルシャドール・シェキナーガ
攻撃力2600

普段の母上なら、このバッグを前に『エルシャドール・シェキナーガ』なんて召喚しません! ほ、本当に確信しているようですわ。(わたくし)の3枚のリバースカードが、全てブラフだということに!

「『シャドール・ハウンド』のエフェクト発動。カードエフェクトでセメタリーに送られた場合、フィールドのモンスター1体の表示形式を変更する。セットされている『エルシャドール・ネフィリム』を攻撃表示に変更!」

エルシャドール・ネフィリム
攻撃力2800

神聖なオーラを流しながら再び(わたくし)の前に降り立つ、神の化身! くっ……やられましたわ……。

「メインフェイズ終了、バトルだ! 『エルシャドール・ネフィリム』で『ジェムナイトマスター・ダイヤ』に攻撃! 『エルシャドール・ネフィリム』のエフェクトにより、特殊召喚によって出されたモンスターと戦闘を行う場合、ダメージステップ開始時に破壊する!」

母上は右腕を伸ばし、

「『堕ち影神の禊祓(エルシャドール・ピューフィケーション)』!」

バチンっと聞き心地の良い、綺麗な指を鳴らしました。
命令を受けた神の化身は(わたくし)の最強のナイトを締めあげ、そのまま破壊します。

「『エルシャドール・シェキナーガ』と『影依の原核(シャドールーツ)』で、サティストにダイレクトアタック! これで終いだ!」

最強のナイトを失ったプリンセスは消えるのみ。
(わたくし)は母上のモンスターの総攻撃をもろに受け……

サティスト
LP3800→-250

全てのライフポイントを失いました。




     ――To be continued…



はい、いかがでしたでしょうか?

『ジェムナイト』デッキガン回りでしたね、本当に強いです。え? 『大革命』の要素を抜いたほうがいいですって? あーあー、聞こえませんね。

で、今回のデュエルで、サティストの悪いところが露見してしまいましたね。ちょっと安心してしまいますとすぐに油断してしまいます。まぁ、そこが天然っぽくて可愛いところでもあるのですが。

はい、今回はここまでです。
次回はサティストに与えられた『課題』内容が明かされます。果たしてサーストと共にではないとクリアできない『課題』とはなんなのでしょうか? 乞うご期待です。

ここまでのご愛読、ありがとうございました。


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