遊戯王GX-漆黒のパペットマスター- (スターリン)
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前回のあらすじ。
後の主人公は万丈目とのデュエルをこう語る。
『オーバーキルなど人としてしない』。
その下らない考えが命取りよ!
クックックックッ、この私にそれは無い……
あるのはシンプルな、
たったひとつの思想だけだ……
たったひとつ!
「勝利して支配する」!
それだけよ……
それだけが満足感よ!
過程や……!方法なぞ……!
どうでもよいのだァーーーッ!
明日香「先生、それは負けフラグです」
今回は前篇後篇に分かれています。なので2本同時に投稿しました。
それでは、本篇をお楽しみください。
後の主人公は万丈目とのデュエルをこう語る。
『オーバーキルなど人としてしない』。
その下らない考えが命取りよ!
クックックックッ、この私にそれは無い……
あるのはシンプルな、
たったひとつの思想だけだ……
たったひとつ!
「勝利して支配する」!
それだけよ……
それだけが満足感よ!
過程や……!方法なぞ……!
どうでもよいのだァーーーッ!
明日香「先生、それは負けフラグです」
今回は前篇後篇に分かれています。なので2本同時に投稿しました。
それでは、本篇をお楽しみください。
Turn.3 「新旧寮長対決! エルシャドールVS鮎川《前篇》」
女子寮特設デュエル場にて。
旧寮長鮎川恵美先生と新寮長エルシャドール・クロウリー先生が対峙していた。
そこに設置されている観戦用の席一面に私達女子生徒全員が座っていて、これから行われようとしている2人のデュエルに注目している。
「鮎川先生……一体どんなデッキを使うんでしょうか?」
「先生がデュエルする、なんて噂は聞いたことございませんのでわかりませんわ」
隣に座る私……天上院明日香の中等部からの親友、枕田ジュンコと浜口ももえがそんな会話をしながら問いかけてきた。
「明日香さまは聞いたことありますか?」
「鮎川先生のデッキ」
「さぁ……聞いたことないわ」
そもそも鮎川先生の情報も謎に包まれている節がある。デュエルの腕前がどんなものなのかも知らない。
多分、私達以外のみんなも同じことを思ってるはず。鮎川先生は何者なのか、と。
あのエルシャドール・クロウリーに「古い友人」と呼ばれるくらいだ。多分デュエルの腕前は私達が思っている以上に高い。
「さて、先攻後攻だが――」
そんな私達の疑問など余所に、クロウリー先生はポケットから1枚のコインを取り出した。
「このコインの裏表で決める。『500』が書かれた方が表の場合私の先攻、裏だった場合は恵美、おまえの先攻だ。それでいいか?」
「構わないわ」
鮎川の了承を取ったクロウリー先生がコインを右手親指で弾く。あのコイン、500円玉だったのね。
ピィンッと小気味の良い音と共にコインは宙を回転しながら舞い、バシッ。クロウリー先生はそのコインを綺麗に掴んで拳を開いた。その動作は美しく、凛々しく見えてしまうほど洗練された動きだった。
「裏だ。恵美、おまえの先攻だ」
「オッケー。じゃあ行くわよ」
「「
鮎川先生とクロウリー先生、2人の先生が互いにデュエルディスクを構えた。
「先攻、カードドロー」
鮎川
手札5→6
先攻をもらった鮎川先生。
さぁ、一体どんなデッキを使うのかしら。
「私は『堕天使ナース-レフィキュル』を攻撃表示で召喚」
静かで穏やかな声と共に、全身ボロボロの看護師のような服を着たモンスターが登場した。
『堕天使ナース-レフィキュル』
効果モンスター
☆4/闇属性/天使族/攻1400/守 600
(1):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手のライフポイントが回復する効果は、
相手のライフポイントにダメージを与える効果になる。
……? 攻撃力1400のモンスターを攻撃表示?
見たことないけど、そんな攻撃力の低いモンスターを攻撃表示?
「……握っていたか」
しかし、クロウリー先生はモンスターを見て表情が引きつらせた。……万丈目くんとのデュエルでは表情1つ変えなかったあのクロウリー先生が、あんなモンスターに苦しめられている。そんなに恐ろしい能力を持っているのかしら。
「カードを3枚伏せて、ターン終了よ」
鮎川
LP 4000
手札 2
場 モンスター
「堕天使ナース-レフィキュル」
魔法・罠
セット
セット
セット
エルシャドール
LP 4000
手札 5
場 モンスター 無し
魔法・罠 無し
「……私のターン、ドローだ」
エルシャドール
手札5→6
「スタンバイフェイズからメインフェイズに移行したいのだが、なにかあるか?」
「――じゃあここで発動しましょうか」
クロウリー先生がスタンバイフェイズを宣言した瞬間、鮎川先生が動き出した。え!? このタイミングで!?
「トラップカード発動、『ギフトカード』!」
リボンが巻き付いた3000の文字が書かれているカードが出現した。……あれって。
「……あのカードは」
「相手のライフポイントを3000回復させるカードですわ」
『ギフトカード』
通常罠
(1):相手は3000ライフポイント回復する。
そう、ももえの言う通り。
このデュエルモンスターズ界には、使い道が分からない意味不明のカードというのが存在する。あの『ギフトカード』もその中の1枚。自分ではなく相手の、しかも3000ポイントも回復させてしまうカード。本当に使いどころが分からないカードだ。なぜ、そんなカードを鮎川先生が使っているのか、さっぱりわからない。
「ねぇ……やっぱり鮎川先生って」
「ド素人……?」
「あんなカードを入れてるなんて、そうとしか考えられないわね」
観戦していた他の子達はそう言って失笑し、落胆していた。しかし……。
「…………」
ただひとり、クロウリー先生だけは違っていた。顔をしかめさせ苦い表情を浮かべさせている。
「うっふふ。エルなら理解できるわよね、この状況がいかにマズいかを」
「……チッ」
鮎川先生は不敵に笑い、クロウリー先生が舌打ちする。
「『ギフトカード』。単体では相手のライフポイントを大幅に回復させてしまうトラップカードだ。……しかし、そのエフェクトを恐ろしいエフェクトに変貌させるカードが存在する」
え……?
「その通りよ。相変わらずの豊富な知識は健在の様で助かるわ。『堕天使ナース-レフィキュル』の効果! 相手のライフポイントを回復させる能力を反転し、相手のライフポイントにダメージを与える能力に変更する!」
『え……?』
回復能力をダメージにする能力?……ていうことは!
「『ギフトカード』の効果でエルに3000ポイントのダメージを与える!」
『え、えぇえええええええええええええええええええッッッ!!!!!!』
その恐ろしい結果に、デュエル場に驚愕の叫び声が響く! さっき鮎川先生に失笑し、バカにしていた子達も目を見開いて驚いていた。
あ、あの意味不明のカードを、あんな効果に変貌させた鮎川先生。あれは素人の戦術なんかじゃない! 相当の腕前のデュエリストの戦術だ!
「さらにチェーン2でトラップカード発動、『運命の分かれ道』!」
『運命の分かれ道』
通常罠
(1):お互いのプレイヤーはそれぞれコイントスを1回行い、
表が出た場合は2000ライフポイント回復し、
裏が出た場合は2000ポイントダメージを受ける。
「このカードが発動された時お互いのプレイヤーはコイントスを行い、表なら2000のライフポイントを回復し、裏なら2000のダメージを受ける」
「……だが、おまえのフィールドには『堕天使ナース-レフィキュル』がいる」
つまり……。
「そうよ。あなたはコインが裏でも表でも2000ポイントのダメージを受けてもらうわ。さて、小学生の問題です。3000+2000、答えはいくつでしょう?」
『ギフトカード』から特大の赤い光線が発射された! 3000+2000の答えは5000! つまり、あのダメージと『運命の分かれ道』を通したら4000しかないクロウリー先生のライフポイントは……!
「ふふふ――なにもないならここでゲームオーバーよ」
――ワンターンキル!
普段私達が絶対に使わず、見向きもしないカードを使った鮮やかなワンターンキルが今行われようとしていた!
戦慄する私達とは打って変わり、そのダメージをこれから受けようとしているクロウリー先生は一瞬にやりと笑い、手札のカード1枚を引き抜いた。
「なにもないわけなかろう。――チェーン3で、私は手札から速攻マジック、『月の書』を発動」
『月の書』
速攻魔法
(1):フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。
「フィールド上モンスター1体を対象に選択し、表示形式を裏側守備表示に変更する。対象は『堕天使ナース-レフィキュル』だ」
「あ、あらら……」
冷静にクロウリー先生はレフィキュルを指差す。……? それでどうやってあのダメージを食い止めるのかしら? でも、鮎川先生が困った顔をしていた。
「恵美、チェーン4はあるか?」
「……いえ、ないわ」
「そうか。なら、チェーンの逆順処理を開始する」
えっと……チェーンは後から発動されたカード効果から解決されるから……。
「チェーン3処理。『月の書』のエフェクトで、『堕天使ナース-レフィキュル』を裏側守備表示に変更」
カードが裏側になり、フィールドからレフィキュルの姿が消滅した。
「……次にチェーン2の『運命の分かれ道』の効果を処理するわ。お互いにコイントスをする」
「わかった」
鮎川先生とクロウリー先生が同時にコイントスをした。……結果は。
「……私は表」
「私は裏だ」
「オーケー確認したわ。『運命の分かれ道』の効果により、私は2000のライフを回復し、エルは2000のダメージ受ける!」
鮎川
LP4000→6000
エルシャドール
LP4000→2000
「最後に、お待ちかねの『ギフトカード』のエフェクト解決だな」
「くっ……」
『ギフトカード』のカードから出た真っ赤な光線は、なぜか緑色の光線に変わってクロウリー先生に直撃した。
エルシャドール
LP2000→5000
しかし、その光はクロウリー先生の身体を優しく包み込み、ダメージを与えるどころか大量のライフポイントを与えた。
「なんで『ギフトカード』の効果が……?」
「元に戻ったんですの……?」
隣で呆けるジュンコとももえ。……あ、ああ! そうか!
「『ギフトカード』の効果解決時に、レフィキュルはいないわ。つまり、回復をダメージに変わる能力自体がなかったことにされたのよ」
「え……、ああ!」
「そ、そうですわ!」
詳しくは高等部でやるからと軽くしか教えられなかった、チェーン解決の処理。
それをこんな身近な実践の中で見られるなんて……さすがアカデミアの教員同士のデュエル。レベルが高すぎる……!
「さて、ありがとう恵美。おまえからの素敵なギフト、たしかに受け取ったぞ」
「もう! 意地悪なんだから」
黒い笑顔を浮かべるクロウリー先生は鮎川先生をからかう。さっきまでワンターンキルが迫っていた人間とは思えないほどの余裕だ。そこらへんもやはり、手馴れている。
「さて、今はスタンバイフェイズだ。やることないからメインフェイズに移行するが、もう何もないな?」
「ないわよ。続けなさい」
「そうか。――ならば、今度はこっちの番だ。手札からマジックカード『天使の施し』を発動」
『天使の施し』
通常魔法
(1):自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札を2枚選択して捨てる。
「カードを3枚ドローし、2枚をセメタリーへ送る」
クロウリー先生は3枚のカードを引いて手札交換をする。すると、墓地に送った2枚のカードが光り出した。
「セメタリーに送られた『エクリプス・ワイバーン』と『シャドール・ビースト』のエフェクト同時発動。
『エクリプス・ワイバーン』
効果モンスター
☆4/光属性/ドラゴン族/攻1600/守1000
(1):このカードが墓地へ送られた場合、デッキから光属性または闇属性の
ドラゴン族・レベル7以上のモンスター1体をゲームから除外する。
その後、墓地のこのカードがゲームから除外された場合、
このカードの効果で除外したモンスターを手札に加える事ができる。
『シャドール・ビースト』
リバース・効果モンスター
☆5/闇属性/魔法使い族/攻2200/守1700
『シャドール・ビースト』の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードがリバースした場合に発動できる。
自分はデッキから2枚ドローする。
その後、手札を1枚捨てる。
(2):このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
「『エクリプス・ワイバーン』はセメタリーに送られた場合、デッキから☆7以上の闇か光のドラゴン族モンスターを1枚選択しゲームから取り除く。そして『シャドール・ビースト』はカードエフェクトによってセメタリーに送られた場合、カードを1枚ドローする。チェーンの組み順を決めるが、この場合は強制エフェクトの『エクリプス・ワイバーン』が最初に発動し、任意エフェクトの『シャドール・ビースト』が2番目に発動される。よって、チェーン1で『エクリプス・ワイバーン』、チェーン2で『シャドール・ビースト』だ。なにかあるか?」
「ないわ。好きに動きなさい」
「了解した。ではチェーン処理に入る。『シャドール・ビースト』のエフェクトでカードを1枚ドロー。その後、『エクリプス・ワイバーン』のエフェクトでデッキの『ダーク・アームド・ドラゴン』をゲームから除外する」
エルシャドール
手札5→6
「セメタリーの『エクリプス・ワイバーン』を除外し、『暗黒竜 コラプサーペント』を攻撃表示で特殊召喚」
『暗黒竜 コラプサーペント』
効果モンスター
☆4/闇属性/ドラゴン族/攻1800/守1700
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地から光属性モンスター1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。
この方法による『暗黒竜 コラプサーペント』の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。
(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから『輝白竜 ワイバースター』1体を手札に加える。
なんの前触れもなく、小さな黒いドラゴンがフィールドに出現した。
「『暗黒竜 コラプサーペント』はセメタリーの光属性モンスター1体を除外することで特殊召喚できる。言っても、連発は出来んがな。っと、ここで『エクリプス・ワイバーン』のエフェクト発動。このカードがセメタリーから除外された場合、セメタリーに送られた際に除外したモンスターを手札に加える。私は除外した『ダーク・アームド・ドラゴン』を手札に加える」
クロウリー先生が先ほどゲームから除外し、腰に付けているデッキケースへしまった『ダーク・アームド・ドラゴン』のカードを手札に加えた。
エルシャドール
手札5→6
「まだまだ行くぞ。私はマジックカード『
『
通常魔法
『
(1):自分の手札・フィールドから『シャドール』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、
その融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚する。
融合デッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドに存在する場合、
自分のデッキのモンスターも融合素材とする事ができる。
「手札の『シャドール・ヘッジホッグ』と、フィールドの闇属性モンスター『暗黒竜 コラプサーペント』を融合。現れろ、『エルシャドール・ミドラーシュ』!」
フィールドのコラプサーペントと手札のカードが暗闇に吸い込まれ、その闇が大きくなると、その中から妙なドラゴンに乗った緑髪の魔法使いが現れた。
『エルシャドール・ミドラーシュ』
融合・効果モンスター
☆5/闇属性/魔法使い族/攻2200/守 800
『シャドール』モンスター+闇属性モンスター
このカードは融合召喚でのみ融合デッキから特殊召喚できる。
(1):このカードは相手の効果では破壊されない。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
その間はお互いに1ターンに1度しかモンスターを特殊召喚できない。
(3):このカードが墓地へ送られた場合、
自分の墓地の『シャドール』魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
……あれは入学試験の時、クロノス先生に止めを刺した、カード効果では一切破壊されない堅牢なモンスター。
「ここで、セメタリーの送った『暗黒竜 コラプサーペント』と『シャドール・ヘッジホッグ』のエフェクト同時発動」
『シャドール・ヘッジホッグ』
リバース・効果モンスター
☆3/闇属性/魔法使い族/攻 800/守 200
『シャドール・ヘッジホッグ』の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードがリバースした場合に発動できる。
デッキから『シャドール』魔法・罠カード1枚を手札に加える。
(2):このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから『シャドール・ヘッジホッグ』以外の『シャドール』モンスター1体を手札に加える。
「コラプサーペントがフィールドからセメタリーに送られた場合、デッキから『輝白竜 ワイバースター』を手札に加える。そして『シャドール・ヘッジホッグ』はデッキから『シャドール』と名の付いたモンスター1枚を手札にサーチする。チェーン1で『暗黒竜 コラプサーペント』、チェーン2で『シャドール・ヘッジホッグ』だ。チェーンは無いようだから解決するぞ。それぞれ、『シャドール・ドラゴン』と『輝白竜 ワイバースター』を手札に加える」
エルシャドール
手札4→6
おかしい。
さっきからあんなに派手に動き回っているのに、クロウリー先生の手札は6枚から動かない。
それどころか、着々と手札を整えて自分の有利に運んで行っている。
「私のセメタリーには『シャドール・ビースト』『シャドール・ヘッジホッグ』『暗黒竜 コラプサーペント』の3体のみ存在する。よって、『ダーク・アームド・ドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚!」
『ダーク・アームド・ドラゴン』
効果モンスター
☆7/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の闇属性モンスターが3体の場合のみ特殊召喚できる。
(1):自分のメインフェイズ時に自分の墓地の闇属性モンスター1体をゲームから除外する事で、
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
黒い火柱が発生し、そこから『ダーク・アームド・ドラゴン』が出現した。……まさか、今日だけで2回もご対面できるなんてね。
「だ、『ダーク・アームド・ドラゴン』!?」
「こ、これは凄いカードが出てきましたわ!」
マニアでなくても知っているレアカードの登場にジュンコとももえは口元に手を当てて驚いている。さっき、私はこれが3体並んでいる光景を見たんだけど、この2人に見せたらどうなるのかしらね。
「さっき手札に加えた、『シャドール・ドラゴン』を攻撃表示で召喚」
『シャドール・ドラゴン』
リバース・効果モンスター
☆4/闇属性/魔法使い族/攻1900/守 0
『シャドール・ドラゴン』の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードがリバースした場合、
相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主の手札に戻す。
(2):このカードが効果で墓地へ送られた場合、
フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
「『ダーク・アームド・ドラゴン』のエフェクト発動。セメタリーの闇属性モンスターを1体除外し、フィールド上のカード1枚指定して破壊する。『暗黒竜 コラプサーペント』を除外し、裏側表示になっているレフィキュルを破壊する。『ダーク・ジェノサイド・カッター』、第一打!」
宣言と共に、『ダーク・アームド・ドラゴン』の肩から真っ黒な刃が裏側守備表示になっているレフィキュルに向かって行く。直撃したレフィキュルはなんの術もなく呆気なく破壊されてしまった。
でも、この邪龍の破壊衝動はこの程度では収まらない。
「次は、そのリバースカードだ。『シャドール・ヘッジホッグ』を除外し、破壊する。『ダーク・ジェノサイド・カッター』、第二打!」
クロウリー先生が最後に残された鮎川先生のリバースカードに人差し指を向けた。
あのリバースカードが破壊されれば鮎川先生のフィールドはガラ空き。クロウリー先生のモンスターに総攻撃を仕掛けられたら、鮎川先生の6000のライフポイントは一瞬で消え去る。
ワンターンキル返し。
クロウリー先生がやろうとしていることはまさにそれだ。
ワンターンキルを仕掛けてきた相手の猛攻をかわし、今度は逆にワンターンキルを仕掛ける。大胆で鮮やかな、まさにプロデュエリストのような戦術を次々と披露しようとするクロウリー先生。そしてそれを完璧な物にするため、主人の命令に従って鮎川先生の最後の希望を破壊しようと唸る『ダーク・アームド・ドラゴン』。しかし……
「ここでっ! リバースカードオープン、『和睦の使者』!」
『和睦の使者』
通常罠
(1):このターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になり、
自分のモンスターは戦闘では破壊されない。
邪龍の破壊の一撃がまさに当たろうとしたところで鮎川先生のリバースカードがオープンされ、複数人の修道女が現れた。
「このカードが発動されたターン、私のモンスターは戦闘では破壊されず、私が受ける戦闘ダメージは全て無効化される!」
「チッ、凌がれたか」
間一髪。
さっきのクロウリー先生もそうだけど、鮎川先生もまた、たった1枚のカードでワンターンキルを阻止してしまった。
「カードを2枚伏せ、ターン終了だ」
鮎川
LP 6000
手札 2
場 モンスター 無し
魔法・罠 無し
エルシャドール
LP 5000
手札 2
場 モンスター
「エルシャドール・ミドラーシュ」
「シャドール・ドラゴン」
「ダーク・アームド・ドラゴン」
魔法・罠
セット
セット
「困ったわねぇ、私のターン、ドロー」
鮎川
手札2→3
「……お、いいカードを引いたわ」
思わず、鮎川先生から笑顔が零れ落ちた。
「カードを2枚伏せ、マジックカード、『天よりの宝札』を発動」
『天よりの宝札』(アニメ効果)
通常魔法
(1):お互いのプレイヤーはそれぞれ自分のデッキから手札が6枚になるようにカードをドローする。
「互いのプレイヤーはお互い手札が6枚になるようにカードを引く」
「ほう、それはいいカードだな。だがいいのか? 私の手札も増えるぞ?」
「そうでもしないと勝てないわよ。構わないわ、ドローしなさい」
「なら遠慮なく」
鮎川
手札0→6
エルシャドール
手札2→6
クロウリー先生の手札も増えたけど、鮎川先生の手札が0枚から一気に6枚になった。これならよほど運に見放されてなければ逆転することができる。
「恵美、私のフィールドの『エルシャドール・ミドラーシュ』のエフェクト、確認するか?」
「知っているわ。大丈夫よ」
「そうか、ならいいんだ。続けろ」
クロウリー先生の確認にやんわり答える鮎川先生。
ここでカードの効果確認ってことは、あのミドラーシュは相手の行動に制限を掛ける類の効果でも持っているかしら。
「リバースカードオープン、『死者蘇生』」
『死者蘇生』
通常魔法
(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
「私の墓地のレフィキュルを攻撃表示で特殊召喚」
先程『ダーク・アームド・ドラゴン』に倒されたレフィキュルが再びフィールドに登場した。
堕天使ナース-レフィキュル
攻撃力1400
「また出て来たか」
「しつこくて悪いわね。手札からマジックカード『成り金ゴブリン』発動」
『成金ゴブリン』
通常魔法
(1):自分のデッキからカードを1枚ドローする。
その後、相手は1000ライフポイント回復する。
『成り金ゴブリン』。
手札交換が魅力だけど回復の代償が少し高いから、やっぱり使われないカードね。
だけどレフィキュルが場に居るから、実質カードをドローした挙句1000のライフダメージを与えるカードに変化してしまっている。
「手札の『エフェクト・ヴェーラー』のエフェクト発動」
『エフェクト・ヴェーラー』
チューナー・効果モンスター
☆1/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0
(1):相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、
相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。
その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
「相手のメインフェイズ時に手札にあるこのカードをセメタリーに送り、相手モンスター1体を指定する。そのモンスターのエフェクトをこのターンの終わりまで無効にする。対象はレフィキュルだ」
水色の少年が現れ、レフィキュルに取り憑いて能力を封印してしまった。……あのカードは確か、攻撃力が0の低級モンスター。効果は便利だと思うけど採用している人は見たことがない。
『成り金ゴブリン』『ギフトカード』『エフェクト・ヴェーラー』……さっきから、使われないカードばかり2人とも使ってるわね。しかも実際、そのどれもが相手を困惑させ、追い込んでいる。
「あーん、またレフィキュルの効果が封じられちゃったわ。じゃあ、私はドローして、エルは回復ね」
鮎川
手札5→6
エルシャドール
LP5000→6000
手札6→5
「『お注射天使リリー』、通常召喚」
『お注射天使リリー』
効果モンスター
☆3/地属性/魔法使い族/攻 400/守1500
(1):このカードが戦闘を行うそのダメージ計算時に1度、
1000ライフポイントを払って発動できる。
このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ3000アップする。
注射器を持った白衣姿の天使がウィンクしながら登場した。……あ、あのモンスターって。
「くっ、そんなカードも入れてたのか」
「入れてるわよ。だって私、保健室の先生だもん」
「やかましい」
そういえばレフィキュルといいリリーといい、全部看護に関わるモンスターを入れてるわね鮎川先生。デッキとしての相性もあるんだろうけど、そういうお茶目なところはどこかプロデュエリストに似ている部分がある。
「カードを3枚セットして、手札から装備マジックカード『魔導師の力』をレフィキュルに装備」
『魔導師の力』
装備魔法
(1):装備モンスターの攻撃力・守備力は、
自分フィールドの魔法・罠カードの数×500ポイントアップする。
「私の場のマジック・トラップカードの枚数分、装備モンスターの攻撃力と守備力を500ポイントアップする。レフィキュルの攻撃力・守備力ともに2500ポイントアップ!」
堕天使ナース-レフィキュル
攻撃力1400→3900
守備力600→3100
こ、攻撃力3900……!
「行くわ、バトルフェイズ! 『お注射天使リリー』で『ダーク・アームド・ドラゴン』を攻撃! 『検診のお時間』よ!」
攻撃命令が下るとリリーは「お注射よー!」と言いながら『ダーク・アームド・ドラゴン』に注射器を向けながら突貫していく。
「リバースカードオープン、『皆既日蝕の書』! お互いの場のモンスターを全て裏側守備表示に変更する!」
「な!?」
『皆既日蝕の書』
速攻魔法
(1):フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にする。
このターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上に
裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示にし、
相手はその枚数分だけデッキからカードをドローする。
リリーの注射器が迫ろうとしていたまさにその時、全てのモンスターのソリッドヴィジョンが消え、全て裏側になってしまった。
……『皆既日蝕の書』。
これもストレージの中に眠っている使われないノーマルカード。
「ううーん、最悪のカードね。装備カードは剥がれちゃったし、ダーク・アームドは破壊できないし、『シャドール・ドラゴン』が裏になったのもいやだけど、何よりもミドラーシュが裏になったのは頂けないわ」
……え?
なんでミドラーシュが裏になったら困るのかしら? 流石に融合モンスターだからリバース効果は無いとは思うけど……。
首を傾げる私達に察したのか、クロウリー先生が解説を入れる。
「ミドラーシュはお互いに特殊召喚できる回数を1回のみに縛るエフェクトを持っている。便利で相手によってはこれだけで致命傷になるのだが生憎、恵美のデッキには通用しなくてな。逆に私の方が困ってしまっているのだよ」
な、なるほど……ミドラーシュにそんな能力が。そしてその能力が、今クロウリー先生だけを縛り付けてしまっている。
鮎川先生はそれを知っていたから、ミドラーシュが裏になったことに顔をしかめていたのね。
「なんにせよ、戦闘を防がれちゃったのが一番きついわ。バトルフェイズ終了。メインフェイズ2に入ってカードをもう1枚セットしてターン終了よ」
「ターン終了時、『皆既日蝕の書』のエフェクト。相手フィールド上のモンスターを全て表側守備表示に変更して、変更した枚数分だけ相手はカードをドローする」
「じゃあ、レフィキュルとリリーを表にして、2枚のカードをドロー」
堕天使ナース-レフィキュル
守備力600
お注射天使リリー
守備力1500
鮎川
LP 6000
手札 3
場 モンスター
「堕天使ナース-レフィキュル」
「お注射天使リリー」
魔法・罠
セット
セット
セット
セット
セット
エルシャドール
LP 6000
手札 5
場 モンスター
「エルシャドール・ミドラーシュ」(セット状態)
「シャドール・ドラゴン」(セット状態)
「ダーク・アームド・ドラゴン」(セット状態)
魔法・罠
セット
「さて、私のターンだな。カードドロー」
2人の長いデュエルも、いよいよ最終局面に差し掛かっていた。
――To be continued…
知ってます? これ、3ターン目なんですぜ?
いやー、デッキチョイスを少し間違えた感がビンビンします。チェーン処理が長い長い。
おまけに主人公のデュエルは丁寧さを重視していますから、なかなか手が抜けません。
墓地の様子とか、実際のカードを使ってパソコンに向かっています。そうでもしないと書けません。
てか、鮎川先生。ライフ4000でそのデッキは強すぎでしょう女子高生。
あと「天使の施し」。ダメですね、強すぎます。軽く頭痛くなってきました。
今回登場したオリカはみんな大好き「天よりの宝札」です。
効果は原作通り。OCGでそのままの効果で登場したら、おそらく子征竜・審判以上のスピード規制がかけられていたでしょう壊れカードです。まさに、撃たれたら負け。
そしてOCG化して、我々デュエリストが放った最初の一言は「どうしてこうなった」。
弱体化は仕方ないよなーと思っていた結果がアレです。全く似ても似つかない効果に変貌してました。
いったい何人の方が、あんな効果になって登場すると想像できたでしょうか?
それでは、次回行きましょうか。
ご愛読、ありがとうございました。
いやー、デッキチョイスを少し間違えた感がビンビンします。チェーン処理が長い長い。
おまけに主人公のデュエルは丁寧さを重視していますから、なかなか手が抜けません。
墓地の様子とか、実際のカードを使ってパソコンに向かっています。そうでもしないと書けません。
てか、鮎川先生。ライフ4000でそのデッキは強すぎでしょう女子高生。
あと「天使の施し」。ダメですね、強すぎます。軽く頭痛くなってきました。
今回登場したオリカはみんな大好き「天よりの宝札」です。
効果は原作通り。OCGでそのままの効果で登場したら、おそらく子征竜・審判以上のスピード規制がかけられていたでしょう壊れカードです。まさに、撃たれたら負け。
そしてOCG化して、我々デュエリストが放った最初の一言は「どうしてこうなった」。
弱体化は仕方ないよなーと思っていた結果がアレです。全く似ても似つかない効果に変貌してました。
いったい何人の方が、あんな効果になって登場すると想像できたでしょうか?
それでは、次回行きましょうか。
ご愛読、ありがとうございました。