今年は58冊の新書を読みました(例年そうですが、中古で買って読んでここにレビューを上げていないのを含めるともう少し読んでます)。ここ最近、休日にほとんど新書を読めていないために例年に比べてやや少ない冊数になりましたが、その中から面白かった本を5冊紹介したいと思います。
哲学入門 (ちくま新書)
戸田山 和久

筑摩書房 2014-03-05
売り上げランキング : 28327
Amazonで詳しく見る by G-Tools
今年は1位を何にするか迷いましたが、最終的にはこの本かなと。
「哲学入門」というと、ソクラテスやカントなどの大哲学者の思想を解説した本か、あるいは「私が死んだら世界は終わるのか?」、「なぜ人を殺してはいけな いのか?」といった、多くの人が一度は感じたであろう疑問から、読者を哲学的思考に誘う、といったスタイルが思い浮かびますが、この戸田山和久の「哲学入門」は それらとはまったく違います。
「意味」、「機能」、「情報」、「表象」、「目的」、「自由」、「道徳」という、物理的に存在しないけれども、よほどの唯物論者でない限りまったく存在しないとも言い切れない「存在もどき」分析し、それを科学と調和する形でこの世界に書き込むことがこの本のミッションになります。
先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)
大西 裕

中央公論新社 2014-04-24
売り上げランキング : 11791
Amazonで詳しく見る by G-Tools
日本と韓国が文化などの面で「似ている」かどうかは意見の分かれるところだと思いますが、少なくとも欧米諸国に比べて急速な経済成長で先進国(OECDの加盟国)になり、同じく欧米諸国よりも速いペースで少子高齢化が進んでいるという点は同じです。また、近年、韓国でも日本と同じように経済格差が問題になっています。
そんな韓国の「福祉」を分析したのがこの本。「なぜ福祉?」と思う人も多いでしょうが、少子化、高齢者の貧困化など問題のいくつかは韓国のほうが日本よりも先鋭化しています。
「それはなぜなのか?」、「金大中と盧武鉉のいわゆる「進歩派」大統領は、この問題に手を打つことができなかったのか?」、そうした謎を解き明かすことによって、近年の韓国の政治について教えてくれると同時に、日本の政治を考える上での比較対象を提示してくれている本です。
ルポ 医療犯罪 (朝日新書)
出河雅彦

朝日新聞出版 2014-09-12
売り上げランキング : 84989
Amazonで詳しく見る by G-Tools
ドラマの中での手術シーンや注射シーンが苦手な自分にとっては、読み進めるのが億劫になることもあった本なのですが、事件の闇に切り込んで、そこから制度の欠陥を抉り出してくるという非常によく出来たルポ。特に生活保護受給者に乱脈的な医療を行った奈良・山本病院事件を扱った第一章は圧巻ともいうべきもので、想像を絶する現実を突きつけられた感じでした。
ほぼ「人体実験」と言ってもいいようなひどい行為が多なわれた奈良・山本病院では、数々の看護婦や関係者が情報を寄せたにもかかわらず、奈良県は医師が必要と判断しているならば外部からは口は出せないというスタンスでその犯罪を見過ごし続けました。
そうした行政の問題、生活保護の問題、さらに専門職の「裁量」をめぐる問題など、さまざまな問題に光を当てた意義のあるルポです。
青木昌彦の経済学入門: 制度論の地平を拡げる (ちくま新書)
青木 昌彦

筑摩書房 2014-03-05
売り上げランキング : 9392
Amazonで詳しく見る by G-Tools
青木昌彦の仕事を追いかけていた人にとっては何も目新しいことはないかもしれませんが、彼の本をきちんと読んだことのなかった身としては非常に面白かったです。
「はしがき」に「青木昌彦の『経済学入門』ではなく、「『青木昌彦の経済学』の入門」という編集者の誘いでこの仕事を引き受けたと書いてある通り、「経済 学入門」といった本ではないのですが、青木昌彦のアイディアとその理論の射程、さらにはその応用としての中国経済の分析が楽しめます。
本自体は既出の論文や、講演の抄録、対談、新聞への寄稿などをまとめたもので、その出来にはばらつきがあるのですが、それでも個人的には得るものが多かったです。
個人的に、「一回限りの事象である歴史を学問的にどう考えていくべきなのか?」ということを最近ずっと考えてきただけに、この部分をはじめとする青木昌彦の歴史に対するスタンスも非常に参考になりました。
ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 (PHP新書)
松尾 匡

PHP研究所 2014-11-15
売り上げランキング : 1652
Amazonで詳しく見る by G-Tools
著者がSynodosで行っていた連載をまとめたもの。連載時から面白く読ませてもらっていたのですが、本としても改めて読んでも面白いです。
著者はマルクス経済学を学んだ左派の人物なので、人によっては左派の経済学者である著者が、ハイエク、フリードマン、ルーカスといった「新自由主義の教祖」を盛大に批判する内容を想像するかもしれませんが、そうではありません。
著者は、むしろこれらの経済学者たちが見出した知見を積極的に取り入れ、それまでの社会主義国家や「ケインズ主義的」な大きな政府を批判し、さらに、「新 自由主義」や「第三の道」といった「ケインズ主義的」な大きな政府を乗り越えるためにとられた政策も、これらの経済学者が見出した真のポイントを捉えそこねていると主張した本です。
近年の経済学の知見を活用しながら現代の経済問題を分析していく本書は、右派左派問わず役に立つ本だと思います。
上記に上げた本以外だと、一ノ瀬俊也『日本軍と日本兵』(講談社現代新書)、黒田基樹『戦国大名』(平凡社新書)、高田博行『ヒトラー演説』(中公新書)、松尾秀哉『物語 ベルギーの歴史』(中公新書)、そして全3冊予定で2冊が刊行された川田稔『昭和陸軍全史 』シリーズあたりでしょうか。
今年も昨年からの流れを受けて前半はちくま新書のラインナップが良かったと思いますが、後半は息切れしたのか、あまり興味をそそる本がありませんでした。中公新書は相変わらず安定したレベルの高さ。そして、PHP新書がここ最近良い本を出すようになってきた気がしています。
哲学入門 (ちくま新書)
戸田山 和久
筑摩書房 2014-03-05
売り上げランキング : 28327
Amazonで詳しく見る by G-Tools
今年は1位を何にするか迷いましたが、最終的にはこの本かなと。
「哲学入門」というと、ソクラテスやカントなどの大哲学者の思想を解説した本か、あるいは「私が死んだら世界は終わるのか?」、「なぜ人を殺してはいけな いのか?」といった、多くの人が一度は感じたであろう疑問から、読者を哲学的思考に誘う、といったスタイルが思い浮かびますが、この戸田山和久の「哲学入門」は それらとはまったく違います。
「意味」、「機能」、「情報」、「表象」、「目的」、「自由」、「道徳」という、物理的に存在しないけれども、よほどの唯物論者でない限りまったく存在しないとも言い切れない「存在もどき」分析し、それを科学と調和する形でこの世界に書き込むことがこの本のミッションになります。
先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)
大西 裕
中央公論新社 2014-04-24
売り上げランキング : 11791
Amazonで詳しく見る by G-Tools
日本と韓国が文化などの面で「似ている」かどうかは意見の分かれるところだと思いますが、少なくとも欧米諸国に比べて急速な経済成長で先進国(OECDの加盟国)になり、同じく欧米諸国よりも速いペースで少子高齢化が進んでいるという点は同じです。また、近年、韓国でも日本と同じように経済格差が問題になっています。
そんな韓国の「福祉」を分析したのがこの本。「なぜ福祉?」と思う人も多いでしょうが、少子化、高齢者の貧困化など問題のいくつかは韓国のほうが日本よりも先鋭化しています。
「それはなぜなのか?」、「金大中と盧武鉉のいわゆる「進歩派」大統領は、この問題に手を打つことができなかったのか?」、そうした謎を解き明かすことによって、近年の韓国の政治について教えてくれると同時に、日本の政治を考える上での比較対象を提示してくれている本です。
ルポ 医療犯罪 (朝日新書)
出河雅彦
朝日新聞出版 2014-09-12
売り上げランキング : 84989
Amazonで詳しく見る by G-Tools
ドラマの中での手術シーンや注射シーンが苦手な自分にとっては、読み進めるのが億劫になることもあった本なのですが、事件の闇に切り込んで、そこから制度の欠陥を抉り出してくるという非常によく出来たルポ。特に生活保護受給者に乱脈的な医療を行った奈良・山本病院事件を扱った第一章は圧巻ともいうべきもので、想像を絶する現実を突きつけられた感じでした。
ほぼ「人体実験」と言ってもいいようなひどい行為が多なわれた奈良・山本病院では、数々の看護婦や関係者が情報を寄せたにもかかわらず、奈良県は医師が必要と判断しているならば外部からは口は出せないというスタンスでその犯罪を見過ごし続けました。
そうした行政の問題、生活保護の問題、さらに専門職の「裁量」をめぐる問題など、さまざまな問題に光を当てた意義のあるルポです。
青木昌彦の経済学入門: 制度論の地平を拡げる (ちくま新書)
青木 昌彦
筑摩書房 2014-03-05
売り上げランキング : 9392
Amazonで詳しく見る by G-Tools
青木昌彦の仕事を追いかけていた人にとっては何も目新しいことはないかもしれませんが、彼の本をきちんと読んだことのなかった身としては非常に面白かったです。
「はしがき」に「青木昌彦の『経済学入門』ではなく、「『青木昌彦の経済学』の入門」という編集者の誘いでこの仕事を引き受けたと書いてある通り、「経済 学入門」といった本ではないのですが、青木昌彦のアイディアとその理論の射程、さらにはその応用としての中国経済の分析が楽しめます。
本自体は既出の論文や、講演の抄録、対談、新聞への寄稿などをまとめたもので、その出来にはばらつきがあるのですが、それでも個人的には得るものが多かったです。
個人的に、「一回限りの事象である歴史を学問的にどう考えていくべきなのか?」ということを最近ずっと考えてきただけに、この部分をはじめとする青木昌彦の歴史に対するスタンスも非常に参考になりました。
ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 (PHP新書)
松尾 匡
PHP研究所 2014-11-15
売り上げランキング : 1652
Amazonで詳しく見る by G-Tools
著者がSynodosで行っていた連載をまとめたもの。連載時から面白く読ませてもらっていたのですが、本としても改めて読んでも面白いです。
著者はマルクス経済学を学んだ左派の人物なので、人によっては左派の経済学者である著者が、ハイエク、フリードマン、ルーカスといった「新自由主義の教祖」を盛大に批判する内容を想像するかもしれませんが、そうではありません。
著者は、むしろこれらの経済学者たちが見出した知見を積極的に取り入れ、それまでの社会主義国家や「ケインズ主義的」な大きな政府を批判し、さらに、「新 自由主義」や「第三の道」といった「ケインズ主義的」な大きな政府を乗り越えるためにとられた政策も、これらの経済学者が見出した真のポイントを捉えそこねていると主張した本です。
近年の経済学の知見を活用しながら現代の経済問題を分析していく本書は、右派左派問わず役に立つ本だと思います。
上記に上げた本以外だと、一ノ瀬俊也『日本軍と日本兵』(講談社現代新書)、黒田基樹『戦国大名』(平凡社新書)、高田博行『ヒトラー演説』(中公新書)、松尾秀哉『物語 ベルギーの歴史』(中公新書)、そして全3冊予定で2冊が刊行された川田稔『昭和陸軍全史 』シリーズあたりでしょうか。
今年も昨年からの流れを受けて前半はちくま新書のラインナップが良かったと思いますが、後半は息切れしたのか、あまり興味をそそる本がありませんでした。中公新書は相変わらず安定したレベルの高さ。そして、PHP新書がここ最近良い本を出すようになってきた気がしています。